中部大学教育研究23
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学生が考案し、教員を含む他のスタッフとソーシャルネットワークサービスを用いて共有している。必要があれば、教員がメニューに修正を加える。表1は、シニア教室とキッズ教室の運動メニューの一例である。シニア教室では、ウォーミングアップに引き続いて、ストレッチ体操、認知課題と運動を組み合わせたコグニサイズ、筋力トレーニング、エアロビクス体操を中心とする有酸素運動、クーリングダウンによる構成が主である。一方、ジュニア運動教室では、ウォーミングアップとしてのランニングや体操を行った後、走・跳・投の基本的な動作を中心に遊びやゲームの要素を取り入れ、子ども達が楽しく実施できることを意識した内容となっている。どちらの教室のメニューについても、運動方法や運動を行う目的、指導時の工夫、準備物についての詳細をメニュー表に記載させるようにした。教室での指導が終了した直後には、毎回、大学生と教員の一同で反省会を行い、大学生にその日の振る舞いに関する反省を述べさせた。運動教室の実施場所が大学外であり、運動器具を保管するスペースが制約されることから、使用可能な運動器具の種類および数も限られる。必要な器具の一部は、毎回、教員の自家用車で運搬している。大学生は、自家用車や自転車で現地集合および帰宅する場合と、教員の自家用車に同乗して現地集合および帰宅する場合がある。2.6運動教室の内容引退時期まで継続した大学生のうちの2名が、卒業後に運動教室を共同運営している社会福祉法人まちスウィングに就職した。1名は2020年度、もう1名が2023年度の就職である。2名ともに同法人の「まちづくり部会」に配属された。この部会は「0歳から100歳まで誰でも参加できる市民のプラットフォーム」をコンセプトにしている。「まちづくり部会」の活動の1つに「こどもとおとなの生涯学習」がある。2020年度卒業生は、「こどもとおとなの生涯学習」の活動として、就職初年度に中学生以上を対象として健康な身体作りを目的とする運動教室(Sスクール)と、小学生を対象として基礎的な動作の習得を目指す(Jスクール)を立ち上げ、今日まで継続して運動指導を担当している(2023年7月7日現在)。また、この卒業生は高蔵寺地域の賑わいをもたらすことを目的とした各種イベントにおいて、ボッチャやモルックなどのニュースポーツを取り入れて賑わいづくりを図っている。3.考察本稿では、大学生が主体となり運営する地域運動教室が、「大学等(中部大学)」「地方公共団体(春日井市)」「産業界等(高蔵寺まちづくり会社、社会福祉法人まちスウィング)」の提携により実現し、この運動教室を通して成長した大学生が、運動教室を共同運営した社会福祉法人まちスウィングに就職した後に、その地域のまちづくりに貢献している事例を紹介した。冒頭で参照した文部科学省のガイドラインには、「産業界等が大学等での人材育成に対する協力を積極的に行うことで、大学等の人材育成機能を高め、結果として優れた人材の定着といった好循環が期待される」と述べられている。この趣旨に沿った活動を行う団体の1つが、2019年3月に設立された「しまね産学官人材育成コンソーシアム(以下、コンソーシアム)」である7)。活動の目的は、地域を支え、地域で活躍する若者の人材育成および若者の県内定着・県内就職であり、県内の経済団体、県内の高等教育機関、島根県等の11機関・団体が参画した。事務局は島根大学に置かれているが、2020年には島根県教育委員会も加わり、初等中等教育から高等教育、就業までに取り組む体制が整備されている。また、2021年6月に岩手県で「いわて高等教育地域連携プラットフォーム(以下、いわてPF)」が発足した8)。岩手県内の経済・産業団体、高等教育機関、岩手県、岩手県教育委員会等の21団体で構成さ大学生が運営する地域運動教室の意義―55―図1シニア教室(左)とキッズ教室(右)の様子

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