中部大学教育研究25
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1はじめに大学教育において、専門教育と並行してリベラルアーツ教育を充実させることは、学生に幅広い知識と柔軟な思考力を培う上で重要である。その中でも、学外の学習環境を活用した体験的学習は、教室内の講義だけでは得がたい実感や気づきをもたらす教育方法として注目されている。本稿では、中部大学において実施した「野外教室」の取り組みを報告する。本学では既に、全学からの学生参加による協働型授業がスタートしている(工藤ほか,2024)。これらの授業運営のノウハウを取り入れつつ、本取り組みでは「講義室」あるいは「授業科目」の制約から学びの場を解放することによる学習効果を追求した。本実践は地球科学を題材とし、①福井県立恐竜博物館での展示見学(科学知識の更新性の理解)、②化石発掘体験(研究プロセスの実感)、③岐阜県各務原市・木曽川河岸の地層観察(地球史のスケール感覚の体感)、④養老断層の見学(地球ダイナミズムの理解)の四つを柱として構成した。さらに、本野外教室は学部・学科を横断して参加学生を募集し、学際的な交流の場としても機能させた。以上の実践を通じて、大学教育における体験的学習の意義とリベラルアーツ教育に果たす役割を検討することを本稿の目的とする。2取り組みの概要本野外教室は、全学共通教育の一環として企画された。参加者は学部・学科を問わず、年度ごとに40~45名程度を募集して実施してきた。自然科学分野にとどまらず、多様な学問的背景をもつ学生が相互に刺激を受けながら学びを深めることを目指している。実施形態は1日完結型であり、朝に大学を出発し夕刻に帰着する日程で行った。活動プログラムは、展示見学と野外における体験活動の双方を組み合わせることを重要視してデザインされている。福井県立恐竜博物館での展示見学に、化石発掘体験、木曽川河岸の地層観察、養老断層の見学を組み合わせて構成(年度によって実施項目が異なる)され、それぞれの場で異なる学習機会を提供してきた。活動後にはアンケートと自由記述レポートを課し、学習成果や課題を把握する仕組みを設けた。本取り組みの歴史と活動内容を以下に概説する。2.1取り組みの歴史本野外教室の前身は、中部大学工学部理学教室(当時)北村市次郎助教授(当時)によって2005年度まで―57―*1人間力創成教育院特別課題教育プログラム教授野外教室でひらく新しい学び-地球科学を題材にした全学からの学生参加による実践-工藤健*1要旨中部大学において実施してきた「野外教室」の実践経過を報告する。この活動は、福井県立恐竜博物館での展示見学、化石発掘体験、岐阜県各務原市の木曽川河岸における地層観察、養老断層の見学から構成され、学部・学科を問わず全学から参加した学生を対象とした。アンケートや自由記述の分析を通じて、学生が科学的知識の更新性、研究のプロセス、地球史のスケール感覚、地震を含む地球ダイナミズムの理解を深めていることを明らかにした。また、展示の迫力や発掘の喜びといった感情的体験が学習意欲を喚起し、自由見学や体験型活動への要望が主体的・探究的な学びを促していたことも確認された。本報告は、大学における体験的学習がリベラルアーツ教育の中で果たしうる役割を示すとともに、自然科学と社会的課題をつなぐ教育の可能性を提示するものである。キーワード野外教室、体験的学習、リベラルアーツ教育、地球科学教育、博物館学習
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