中部大学教育研究2022
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である。家庭では学習ができない場合や、キャンパスにいる時間を有効活用したい場合に応じられるよう、不言実行館内ラーニング・コモンズでノートパソコンとマイク付ヘッドセットを借りて学習できる環境を整えて頂き、受講者に実際に見学をさせて紹介した。(図2参照)2.3教材本授業では、高校生がそれまでの英語学習経験とこれからの学習目標を結びつけられるよう、その橋渡しをするための教材選びをした。2019年度当初の授業では、オンライン教材ATRCALLBRIX(以下Brix)をメイン教材として活用することにした。ATRCALLは、ATR(国際電気通信基礎技術研究所)での20年間に及ぶ音声言語学習機構に関する研究の成果から誕生した、コンピュータを利用した英語学習システムである。ATRは英語の「音」にフォーカスする学習メソッドを取り入れてe-Learning教材を用意しているのが特徴である。英語を「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を鍛えられるコースで構成されており、学習管理システム(LMS)には、英語力分析機能、多角的な学習解析機能、教員側がレッスンを組み換え新規コースを作成できる機能等も備わっている。この機能を活用すると、既成のコースを授業目的に即したレッスン構成にして独自のコースを設けていくことができる。本授業の受講者層は、英検ではおよそ3級から準1級まで、TOEICにおいては200点台から600点以上という差がある。Brixでは、構成するコース、順序、分量、学習期間などをカスタマイズできる柔軟性がある。LMS機能により、学習の進捗状況や問題点を把握し、授業での指導に反映することができるばかりではない。本授業でBrixコースの使用を決定づけたのは英語を聞くだけでなく、発音してみる機会を確保できる点である。単語単位や文単位で発音すると、システムが即座に100点満点のスコアをフィードバックしてくれる。また、モデル音声と学習者自身の発音上の特徴も確認し、比較することができる。3授業概要3.12019年度授業2019年度の高大連携英語科目「資格英語A」「資格英語B」は、37人を対象として始まった。「資格英語」は本学2年次以降の学生に開講されている選択科目で、「資格英語A」で英検、「資格英語B」でTOEICの試験対策を学ぶものである。英検は高校生にとってもすでに馴染みのある資格試験である。しかしTOEICは、ビジネス、貿易、流通といったトピックを扱うもので、職場でのコミュニケーションを対象としている資格試験である。高校生にとっては、ハードルが少し高い内容である。そこで本授業では「英検受験を視野に入れた英語基礎力の強化」「TOEIC受験を視野に入れた英語応用力の強化」とし、誰もが自分の英語レベルからスタートでき、自分のペースで進めていくようにした。パソコンの操作やe-Learning教材に不慣れな受講者でも、授業時間に実習することができれば、自信を持って自主学習することができる。そこで、授業では解説と実習を組み合わせて進行し、e-Learning教材の進捗状況に合わせて、語彙学習や発音レッスン、文法解説、口頭での文法ペアレッスン、リスニング力を高めるための段階的なレッスン等を補足した。これは、図3が示すような循環型のオンラインでの学習と対面授業での学習を組み合わせたブレンディッドラーニング授業である。英検やTOEICのリーディングなどでハードルが高そうなものについては、解説と実習の中で逐語訳しない読解方法や音読レッスンを取り入れただけでなく、資格試験一色の授業にしないよう、異文化への関心を広げるための取り組みなども適宜取り入れた。(図4、図5参照)中部大学春日丘高校との高大連携協定にもとづく授業(英語)―63―図2不言実行館ラーニング・コモンズを見学する受講者図3循環型授業のコンセプト

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