中部大学教育研究25
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企画・実施された「野外授業」である。この授業は、当時中部大学が全新入生を対象に開講した「総合科目」の番外編として参加希望者を募り、「行く・見る・触る・そこで訊く」を合言葉に、「藤前干潟見学」や「スーパーカミオカンデ見学」(北村・堀川,2005)などが実施されてきた。これらを筆者が2006年度より引き継ぐ形でリニューアルした取り組みが、本稿で紹介する野外教室である(工藤,2006)。実施主体(主催)は、2009年度までは中部大学総合科目、2010,2011年度は文部科学省大学教育・学生支援推進事業(テーマA)大学教育推進プログラム「『持続学のすすめ』による実践型人材の育成-分離融合型教育による「あてになる人間」の育成-」(行本(編),2012)、2012~2017年度は中部大学工学部共通教育科、2018,2019年度は中部大学人間力創成総合教育センター特定課題教育プログラム、2020,2021年度のコロナ禍による中止を経て2022年度以降は中部大学人間力創成教育院特別課題教育プログラムへと受け継がれながら、現在に至る。近年では大学でも人気の高いイベントとして、学生から認知されるまでに成長した。特にコロナ禍後は、参加希望者が殺到し、数日で参加者募集を停止せざるを得ない状況が続いている。2.2福井県立恐竜博物館の協力この取り組みは、発足当初より福井県立恐竜博物館の協力によって実施されている。団体見学への配慮だけでなく、副館長の寺田和雄博士(古生物学)のレクチャーおよび博物館紹介が、毎年度のプログラムに組み込まれている。さらに、ディスカッションにも参加いただき、参加学生は博物館あるいは研究の最前線における生の声を直接聞くことができる。2.3化石発掘体験2016年度からの本野外教室では、福井県立恐竜博物館の見学に加えて、「化石発掘体験」を含めて実施した。学生は実際に恐竜が発掘された現場を見学(図1)するとともに、博物館付属の発掘体験施設にて、専用の道具を用いながら実際の地層を掘り、化石片を探し出す活動に取り組んだ。2.4木曽川河岸における地層見学展示見学や化石発掘体験に加えて、年によっては岐阜県各務原市の木曽川河岸における地層見学も行っている。この地層は中生代三畳紀前期のものであり、約2億5000万年前に起きた「地球史上最大の大量絶滅」に続く環境変化を記録している。特に、見学地に断片的に残された、通常赤褐色のチャートと呼ばれる岩石層に黒色の層が挟まれている部分は、当時の地球環境が酸欠状態にあったことを示唆するものとして世界的に注目されている。2.5養老断層の見学2016年度からは、中部大学西方に位置する養老断層の見学も行っている。養老-桑名-四日市断層帯は、政府の地震調査研究推進本部が重点的に調査を進める98主要活断層帯の一つであり、1400~1900年程度の間隔でマグニチュード8規模の地震を繰り返し発生させてきたとされる。最新の活動は1586年の天正地震であり、地域の地形や防災教育を考える上で重要な教材である。地震調査研究推進本部は、1995年に発生した阪神・淡路大震災をきっかけに、地震に関する調査や研究を政府として一元的に推進するとともに、その成果を社会に伝えるため設置された。筆者はその専門委員として活断層位置形状の特定に協力している。参加学生は、そこで得られた最新情報とともに、変動する大地やその歴史・メカニズム(例えば;KudoandYamaoka,2003)を意識しながら実際の地形の変化を眺めることができる。2.6事前準備・安全確保野外教室当日は観光バス1台をチャーターして実施する。非常にタイトなスケジュールとなるため、実際の見学スケジュールと時間を合わせてコースおよび博物館を下見するなどの準備を実施している。通常は観光バスが立ち入らない見学地なども存在するため、事前にバス会社と打ち合わせ、さらに必要に応じてバス停車場所の確保、現地での事前交渉なども行っている。並行して参加者の安全確保の観点からの活動場所の確認も実施している。当日の体験学習において使用が予想される器具に関しては、取り扱い注意事項の確認を、Eメールによる事前周知、および往路のバス内での解説において実施している。2.7『その日レポート』方式の導入当野外教室では、「その日レポート」方式(工藤,2005)を導入した。参加者には出発時に当日の資料中部大学教育研究No.25(2025)―58―図1恐竜化石発掘現場の見学
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