中部大学教育研究23
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1はじめに2011年度の全学共通教育のカリキュラム改訂以来、全学英語教育科(現人間力創成教育院・語学教育プログラム・英語)では全学共通教育科目のスキル教育科目として「英語スキルI/II」を実施し、その成果や課題について検討すると同時に、その成果を本誌や学会等で発表してきた(今村・大門,2020、大門他,2010;2011;2012;2014;2015;2016;2017;2018、和田他,2013a;2013b、Imamuraetal.,2019、Wadaetal.,2014)。2017年度には到達度確認テスト(全クラス共通テスト)の改訂を行い、翌2018年度からは改訂版を用いて授業を行っており、同年および2019年度の結果については大門他(2019;2020)で報告し、2017年度までに見られた問題点が概ね改善されたことを報告した。遠隔授業のため到達度確認テスト等が実施できなかった2020年度については、遠隔授業に関する報告となったが(大門他,2021)、対面授業が基本となった2021年度には従来と同様の報告を行い、2018年度、2019年度と同様の成果が見られたことを報告した(大門他,2022)。本報告では、2022年度と同様の報告に加え、授業担当者の次元では対処の難しい課題についても触れることにする。具体的には、学力差の問題と、それと関係するであろう成績不良、中でも出席不良の問題である。2授業の概略と実施したテスト「英語スキルI/II」の受講生は、入学時に行われるフレッシュマンテストの成績によって、多い時間帯で7段階、少ない時間帯で2段階の習熟度別クラスに分けられる。14の時間帯のうち、7つの時間帯においては最上位のクラスを「上級」とし、その他のクラスを「中級」としている。教科書および教材は全学英語教育科(現語学教育プログラム・英語)の教育方針に沿ったものである。2011年度と2012年度には既存の教科書を、2013年度からは独自に作成した教科書を使用している。当初から、学習の到達度を測るために、各学期の最後に、(i)読解方略(リーディング・ストラテジー)に関する問題、(ii)文法に関する問題、(iii)語彙に関する問題、の設問からなる到達度確認テストを実施してきたが、2017年度に改訂を行い、(iii)を秋学期に独立して行う語彙テストとして実施し、各学期の最後に行う到達度確認テストは(i)読解方略に関する問題と(ii)文法に関する問題に限定した。また、その内容についても、より応用力を測る問題に改訂した(大門他,2019;2020)。さらに、秋学期には授業内容とは独立した実力テストを実施し、フレッシュマンテストの成績と比較することで、英語力の変化の確認を行っている。以下、3節、4節、5節では、それぞれ、到達度確認テストの結果、語彙テストの結果、フレッシュマンテストと実力テストの結果について報告する。6節では、到達度確認テストおよび語彙テストがフレッシュマンテストおよび実力テストとどれくらい相関しているか―59―2022年度の全学英語教育に関する報告大門正幸*1・今村洋美*1・西村智*1・加藤由崇*2・関山健治*2・和田珠実*2要旨全学英語教育科(現人間力創成教育院・語学教育プログラム・英語)では、2010年度に教育理念・方針を策定して以来、それに沿って教育を行い、コロナ禍で遠隔授業となった2020年度を除き、その成果と課題について本誌で報告してきた。本稿では、授業内で実施した到達度確認テストと語彙テスト、実力テストの結果、および入学時に実施されるフレッシュマンテストの結果を中心に、2022年度の状況について報告する。なお、これまでも触れることのあった大学全体として取り組むべき2つの課題、すなわち学力差および出席率の問題についても、改めて焦点を当てて報告する。キーワード英語教育、到達度確認テスト、フレッシュマンテスト、実力テスト、語彙テスト*1人間力創成教育院語学教育プログラム(英語)教授*2人間力創成教育院語学教育プログラム(英語)准教授

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