中部大学教育研究25
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といった声が寄せられた。5考察本実践の分析を通じて、以下の教育的意義が確認された。5.1科学的知識の更新性の理解学生は恐竜の進化や分類の変化を通じて、科学的知識が研究の進展に伴い常に更新されるものであることを理解した。これは、大学教育において求められる科学リテラシーの涵養と合致する。先行研究においても、科学的知識を「固定的な事実」ではなく「暫定的な理解」と捉えることの重要性が指摘されており(例えばDriveretal.,1996)、本実践はその具体例を提示している。5.2研究と社会をつなぐ博物館の役割博物館展示を通じて、研究活動と社会的発信の関係を具体的に学んだ。展示の背後には発掘・保存・分類といった研究プロセスがあることを学生が認識した点は、博物館が「知識の倉庫」ではなく「社会的学習の場」であることを強調したFalkandDierking(2000)の議論とも符合する。5.3主体的・探究的学びの促進アンケートでは自由見学や体験活動の拡充を求める声が多かった。これは、Kolb(1984)の経験学習理論が示す「能動的実験と省察の循環」が学習の深化を促すという枠組みに適合する。本実践は、学生に学習の主体性を発揮させる場を提供していた。5.4感情的体験を通じた学習意欲の喚起恐竜展示の迫力や化石発掘の喜びは、感情的体験を通じて学習意欲を高める効果を持っていた。教育心理学の先行研究においても、感情は記憶定着や学習意欲に大きな影響を及ぼすことが報告されている(Pekrun,2006)。本実践は、感情的体験を効果的に取り入れた事例といえる。5.5研究プロセス理解としての発掘体験化石発掘体験は、地道な作業を通じて研究の現実に触れる機会を学生に与えた。これにより「科学的知識は成果物だけでなくプロセスそのものに価値がある」という理解が育まれた。この点は、科学教育においてプロセス重視が有効であるとするOsborne(2014)の指摘を裏づけている。5.6地層・断層見学によるスケール感覚と地球ダイナミズムの理解地層や断層の観察は、地球史の長大なスケールと地球の動態を体感させる学習機会となった。木曽川河岸の地層見学は、地球科学の中でも特に「時間と空間のスケール感覚」を養う体験として意義が大きい。数億年にわたる地球環境の変動が、学生の目の前の岩石に記録されていることを実感することは、抽象的な知識を具体的に理解する強力な教育効果を持つ。また、「大量絶滅」と「新しい生命の誕生」の関係を知り、自身の存在への道のりに思いをはせることで、地球と生命の共進化の概念を自分事として捉える学習ができた。6まとめ本稿では、中部大学において実施した野外教室について報告した。本実践は、福井県立恐竜博物館での展示見学、化石発掘体験、木曽川河岸の地層観察、養老断層の見学を組み合わせ、全学からの学生参加による学際的な学びの場として実施された。アンケートおよび自由記述の分析から、学生は以下のような学びを得ていた。第一に、恐竜と鳥類のつながりや分類の変化を通じて科学的知識の更新性を理解した。第二に、化石発掘体験を通じて研究活動のプロセスを擬似的に踏襲した。第三に、木曽川河岸の地層観察からは数億年規模の地球史を具体的に理解し、養老断層の観察からは地震と地形形成の関わりを体感した。さらに、展示や発掘の迫力は学習意欲を高め、自由見学や体験活動への要望は主体的・探究的な学びの野外教室でひらく新しい学び―61―表3設問:「今日一番印象に残ったこと」(自由記述;複数回答可)に関するアンケート集計結果
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