中部大学教育研究2022
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簡潔に書いてください」という自由記述での問いに対するコメントには次のようなものが見られた。①意識変化「英語の歌の発音を意識するようになった。」「高校の英語の授業でも意識して発音をするようにした。」「英語の大切さと(学習したことを)実際に生かす難しさを感じた。」「英語の正しい発音を恥ずかしがらずにするようになった。」②学習意欲「英語を話せるようになりたいという気持ちが大きくなった。」「家で英語を学習する時間が増えた。」「大学と高校の英語は全然違って大学の英語の方が好きになった。」③自己効力感「語彙力が付いた。」「発音が良くなった。」「前よりリスニングが得意になった。」「高校の英語試験の成績が上がった。」5.2今後の課題受講者数が増加すればレベル差は拡大するし、学習意欲も多様化する。本授業は、様々な要素をブレンドすることで個別学習を1つのクラスとして束ねて指導していくことに挑戦している一例である。受講者は、どの領域へ進学・就職していくのか、まだ明確には分かっていないであろう。そのような状況で授業ができることは、将来の可能性を限定する事なく可能性を広げていく機会となることなのかもしれない。「こんな学習方法もある」というオプションを示したり、「これができるようになった」という自己肯定感や「これだけ頑張れた」という誇りを持たせたいものである。併設高校と本学がワンキャンパスにある利点は大きい。本学の場合、短時間で高校から大学の教室へ移動して来られることで、時間を効率的に使って、高校の内外での学習を経験することが容易だ。しかしながら、春学期末、特に部活動に励んでいる受講者にとっては、7月に入ると公欠で授業を受けられないという授業スケジュールの問題がある。高校の夏休みに大会へ出場する部活動の場合、練習と練習の合間に、大学のスケジュールでの授業を受講しに来なくてはならないことも見受けられる。落ち着いて勉学にも、高校最後の大会出場にも専念できるようなスケジューリングはできないものだろうか。物理的にはつながっているキャンパスが、果たして人と人との関係にそのまま反映されるかというと、それには人と人との努力が必要であろう。本授業の取り組みでは、計画段階から「高校側の教員から協力を得る」ことを前提としていた。見ず知らずの大学教員と受講者とを結ぶことができるのは、日頃彼らと接している高校側の教員であり、その協力は重要である。コロナ禍の遠隔授業の折から、本授業の教員同士は、メールやメッセージングアプリSlackを媒体として情報共有に努めている。また、2022年度の授業からは、4教室にWebカメラを用意し、Zoomを介して他の教室の映像を映して授業全体を「共有」しようともしている。このようなつながりだけでなく、大学へ入学する前後、そしてその後の「連携」力を強化・持続的にする方策が期待される。「連携」に携わる委員会などには、本授業の担当者は関わりがないため、果たして学園が求めている方向へ教育貢献できているのかどうかもわからない。本授業では高校側の教員に多大な協力をして頂いている。大学と併設校の英語担当者が、「連携」し交流を活性化することへの望みについても、故・山田理事から伺っていた。小さな交流を持続的に積み重ねていくことは、不可能ではないだろう。前倒しで大学の授業を受講することのメリットは、大学で自分がしたいことを模索するのにヒントになることもあるであろう。入学する学科と、本授業の教員の連携は残念ながらまだない。高大連携授業を担当する教員同士の情報・意見交換の機会もまだない。受講者には次に「つながる」力を得ていくことを、本授業をきっかけに始めてほしいと願う一方で、それを支える教員同士の「つながる」力が培われていくことが期待される。注1)本学のCALL教室(192D)には、2013年度から内田洋行のCALLシステムが導入されており、教卓コンソールと学習者席46席、バリアフリー席1席で構成されている。2)人間力創成教育院語学教育プログラム講師。3)LLとはLanguageLaboratoryの略である。本学には1976年からLL教室が設置され英語教育に活用されてきた。現在の192Aは、2013年度に更新されたシステムを備える41席の語学教室である。CALL教室との違いは、座席の前方を遮るパソコンがないことである。各座席のコンソールへ音声教材を配信しておくことができるため音声面の強化に活用しやすい。スピーキング等の面でも、ペア・グループを教員が設定できることから、移動する時間を省いて効率的にアウトプット練習をさせる際にも活用しやすいというメリットがある。4)「英語スキルⅠ」「英語スキルⅡ」を必修単位としていない学科へ入学した場合は、別途調整されることになっている。中部大学春日丘高校との高大連携協定にもとづく授業(英語)―71―

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