中部大学教育研究2022
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12019年度後半、コロナ前ときを遡ること2019年秋、中国嘉興学院および宜賓学院から計17名の学部学生と引率教員が、10月3日から9日までの滞在日程で応用生物学部にやって来た。元工学部長でかつての中国連携推進室室長の松尾直規先生が企画される毎年恒例の研修で、同済浙江学院からの学生を対象とした1週間の工学部研修も10月2日に終わったところであった。朝から夕方まで、本学教員による専門講義と各研究室訪問と地元企業訪問と、学内外での行事が丸一日ぎっしり詰まったスケジュールをこなしていた。中部大学が実践する研究・教育を学んでもらうことはもちろんのこと、教職員及び学生による交流イベントもいくつか計画されていた。中国茶パフォーマンス(宜賓学院の崔先生と学生達)と二胡演奏(学部事務室大竹さんによる)、稲刈り体験(森山昭彦先生からの招待)、名古屋港水族館の見学(六車香織先生主催)など、中部大学のホスピタリティ溢れるおもてなしにとても楽しく学ぶことができたはずである。彼らが母国へ帰り、中部大学での体験が口コミで広まり、研修に参加していなかった学生達からも本学大学院への留学希望者が出てくることになった。この年は応用生物学研究科への入学希望者が3名現れ、3名とも合格して2021年春の入学許可が下りた。食品栄養科学科吉村和也先生の植物バイオテクノロジーにすっかり魅了され、二人の女子学生が吉村研究室を希望していた。またもうひとりは研修に参加していなかったものの、口コミと大学HPを見て、病気の遺伝子診断の基礎研究に取り組まれている中川研究室を希望していた。世界24か国・地域に58もの大学・研究機関と協定・提携を結ぶ中部大学では、国際センターの提供する多様な海外研修プログラムに加え、各学部・研究科による独自企画プログラムも多く実施されていた。学生・教員の送り出しと受け入れの、双方向の研究・教育連携が世界中で活発に進められていたのであった。この頃の私個人の海外連携として、ウクライナ・スミィ州立大学のYelizavetaChernyshさんが4か月間の研修を終えて帰国するところであった。Yelizavetaさんは、元現代教育学部教授の宮川秀俊先生が主催していたJICA産業技術教育研修プログラム参加者からの口コミで中部大学のことを知り、そして応用生物学部にやってきた若き女性研究者であった。応用生物学部に滞在し、学部内外の研究者と積極的に交流してネットワークを構築して、2019年10月に帰国した。また、インド・バーラットヒアー大学のKalaiselviDuraisamyさんが無事学位を取得でき、ポスドク研究員として本研究室に招へいする計画を立てようとしていたところであった。さらに、アメリカ・フロリダ大学の旧友KeithChoe先生が翌年にサバティカルを取得できるようになったため、本学に来る計画を立て始めたところであった。キューバの盟友JansMorffeさんとの共同研究で、新種の線虫に「チュウブダイガク」という名前を単に付けただけでニュースになってしまったのもこの時期であった。Jansさんは2度目の本学訪問を熱望し続け、2年後くらいに日本に招へいする計画を立て始めたところであった。加えて、インドネシア・シャクアラ大学のRinaSriwatiさんが教授に就任され、盛大な就任式が開催されるので出席できないかとお誘いがあった。シャクアラ大学は本学部との部門間協定校であり、研究室間の研究・教育連携だけでなく、先方の学長訪問団が本学に来られたり、高等教育推進センターチームが本学教育システムの視察に来られたりと、かなり有意義な連携が進められていた。Rinaさんは高等教育推進センター副センター長、国際センター副センター長を歴任、その実績から今回SyiahKuala大学教授へと昇格されたそうで、中部大学のことを高く評価し、関係をとても大切にしたいという思いを持ってくれていた。一般に東南アジアの大学で教授になることは「おおごと」のようであり、とにかく就任式が盛大に執り行われるらしい。調査や交流を綿密に計画したうえでの訪問ならまだしも、就任セレモニー出席のためだけにバンダアチェに行くのも時間とお金が勿体ないと思い(失礼なことすみません)動画メッセージだけ送った。アジアの新興国がみるみる発展してゆき、また中国が名実共に世界の大国となりつつあるなか、日本の相対的地位が次第に下がっていくことに対する焦りと、―75―世界情勢が厳しくなるなかでの海外連携長谷川浩一*1*1応用生物学部環境生物科学科教授

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