中部大学教育研究2022
79/89

中部大学の地の利を活かしてもう少しの間は世界に打って出られる可能性があるはずだと、もう暫くこの調子で海外連携を続けていこうと考えていたところであった。2中国からの留学生、コロナの影響に翻弄される2019年度に応用生物学研究科で学んでいた中国嘉興学院からの留学生は、修士2年生1名と1年生4名の計5名であった。この年に修士2年生だったひとりの女子学生は、2年間を金政研究室にて応用微生物学を学んだ。国際センターからの手厚い語学指導と、研究室の先生および仲間たちによるサポートのもと無事修士課程を終え、さらに日本企業に就職することもできた。また修士1年生に在籍していた4名は、福田研究室、根岸研究室、金政研究室、そしてわが研究室にそれぞれ所属し、初年度は国際センターで語学の修得と専門講義の受講に奔走しながらも、研究も本格的に始めていた。本学工学部応用化学科の幅上先生のところに訪問・滞在されていた、嘉興学院のXiaojunShen先生の家族も年末に来日・合流され、「中国では新興感染症が蔓延し始めている、日本に暫くいられてラッキーだ」と呑気に話をしていたことが思い出される。その後2月頃だったと思われるが、Shen先生はご家族共に問題なく中国に帰国された。2020年4月、日本でもロックダウンが実施され、1か月間学生が大学に全く来られない時期があり、本格的なオンライン生活が始まった。厳しい行動制限の中で勉強を継続していかなければならないという状況は、世界中の学生達が経験したことであろう。実験室に来て、実験を実施してデータを収集することが重要である生物学研究の進捗に多大な影響を及ぼしたと思われる。修士2年時を迎えてコロナ禍が始まった4名の留学生達は、所属する各研究室によるオンライン指導が十分行き届いていたことと、苦労して感染症対策をしながら実験室運営をされていた先生方のご努力のお陰で、全員が修士論文を完成させた。但し、この4名はともに日本での就職を希望していたが、思うように就職活動を進めることができず、また中国の親御さんも遠い異国で生活する子供たちを心配し、ひとまず帰ってくるよう勧められていた。日本での就職をあきらめ、コロナ厳戒態勢が敷かれる国境を何とか越えて4名とも帰国した。2020年は当然、海外研修をリアルで実施することが何一つできず、またこの年に中国から応用生物学研究科へ入学予定であった1名も入国できぬまま、自国で待機しなければならない状況が続いていた。中国協定校との連携代替案として、12月にオンラインによる交流会を実施し、修士2年に在籍する留学生4名の研究紹介と、日本企業で頑張っている前年度修了生(金政研修了生)による講演が行われた。中国からは、2021年度に応用生物学研究科へ入学予定の3名+2020年に入学予定であった1名に加え、中部大学への留学に興味を持っている嘉興学院の学部生達が多く参加した。日本入国を待つ留学生達は、日本で学ぶ先輩達や受け入れ予定の教員とオンライン上で話をすることができ、中部大学への留学を心待ちにしていたはずである。そして受け入れる側の教職員達もとても楽しみにしていた。年が明けても、期待していたような感染症蔓延状況の改善が見られず、日本政府は引き続き厳しい入国制限を敷き、留学生にさえビザが全く下りない状況のまま2021年度春学期を迎えた。4名の学生達は自国に待機したまま応用生物学研究科へ入学し、研究科で用意したオンライン入学式とオリエンテーションに参加し、本学教職員と共に入学の喜びを共有した。日本政府の許可が下りればすぐに日本に入国できるよう、オンラインで受講できる日本語教育と研究室ゼミに参加して勉強しながら、入国タイミングを待つことにした。2021年夏は1年遅れで東京オリンピックが開催され、7月8月の2カ月間の入国者数はおよそ9万人、そのほとんどがオリンピック関係者であった。そして、8月25日に24,411名の国内新規感染者ピークを記録し、感染症第5波に見舞われる日本では引き続き厳しい国境封鎖が続いていた。入国できた場合のこと、入国できなかった場合のことを話し合うために、学期開始前後のタイミングで前応用生物学部事務長の高木さんが何度も面談をアレンジして下さった。9月下旬から始まる秋学期にも間に合いそうもなく、そしてこのままいつ入国できるかわからない状態の中いつまでも待っていられるわけにはいかず、4名のうち3名が退学を決意して中国国内で就職することにした。退学を決断した学生達からは「中部大学キャンパスで研究ができなかったのはとても残念です」という思いと「今までご指導ありがとうございました」といった感謝の言葉を伝えてくれた。感染症に翻弄された彼らの1年間を思いだすと、今でもとても辛い。その後入国制限が緩和され、辛抱づよく待っていた1名のビザ申請が急ピッチで進められ、2022年春に無事入国することができた。この1年間の遅れを取り戻そうと、現在必死で勉強を頑張っている。また、このような状況であっても、2022年秋学期入学を希望する女子学生が1名現れ、応用生物学研究科への入学許可が下りた。2022年9月7日以降、日本入国72時間以内の陰性証明も不要となり、一日あたりの入国者制限もずいぶん緩和され、日本も本格的な外国人受け入れ態中部大学教育研究No.22(2022)―76―

元のページ  ../index.html#79

このブックを見る