中部大学教育研究25
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研修初日の午前は、オリエンテーション後にキャンパスツアーと医療英語レッスン、午後は保健医療福祉制度についての講義であった。日本の他大学の2校も日程変更のため、オリエンテーションとキャンパスツアーは一緒に行われ、教員にとっては研修プログラムや調整事項について情報交換することができ、よい機会となった。医療英語レッスンは、本学学生のみの特別クラスであり、キャシー先生に学生の語学力に合わせた英語で質問してもらえたことで会話が成立し、学生にとっては成功体験となっていた。休憩時間には、構内にある自販機へ向かい、ブレイクがてら使用方法のレクチャーを受けた。メインドリンクとトッピングで1000種類以上のカスタマイズが可能であり、キャシー先生のお気に入りはMacchaFlavorであった。学生もすかさず「Myprefecturealso…」と西尾の抹茶を紹介しており、後半のレッスンも和やかな雰囲気のなか実施できていた。教員は学生の状況把握のため、この初日の前半のみ医療英語レッスンを受講した。学生たちは2日目以降は「行ってきます」と教室に入っていき、受講することができていた。午後の保健医療福祉制度は、大阪のA大学と愛知県内のB大学の学生とともに受講した。医師である講師が、公的私的医療の違いなど、オーストラリアの医療制度を中心に講義された。オーストラリアには「Medicare(メディケア)」と呼ばれる国民皆保険制度があり、全ての国民と永住権所有者が基本的な医療サービスを無償または一部負担で受けられるものである。これは国が主導しているものであり、所得税に上乗せされるMedicareLevyと呼ばれる税金をもとに、国(連邦政府)-州または準州-市という3層で運営・支援されている。連邦政府はMedicare全体の財源も含めた制度運営やPBS(PharmaceuticalBenefitsScheme)と呼ばれる処方薬費用の助成制度を担っている。州または準州政府は公立病院の運営や救急サービスを担っており、医療者の雇用はこのレベルで行われている。最後に市(または町)では、その地域に在住する高齢者への支援や母子保健を含めた地域保健サービスを担当している。公的・私的な医療の違いについては、前述の通り公立病院の利用は原則無償で利用可能だが、私立病院の利用や自由診療を受ける場合は自費または民間保険へ加入して保険料を支払う。私的保険のメリットとしては、希望する私立病院を選べることや手術までの待機時間が短いこと、快適な個室など療養環境が高水準であること、Medicareの対象外である歯科や眼科への受診・治療費がカバーされることが挙げられる。日本は国民皆保険であり、オーストラリアの公的・私的医療とは大きな違いがあった。実際に、整形外科手術の場合、公立病院では3か月から1年の待機が必要だが、私立病院では2週間程度で可能と説明され、学生も教員も驚きの声をあげた。救急搬送以外ではすぐに大病院を受診することはできず、必ずGeneralPractitionerと呼ばれるかかりつけ医を受診し、必要に応じて紹介状をもらい大病院を受診することが可能になる。また救急搬送は原則有料であり、その費用は州によって異なるが数千円から数万円請求されることもあるそうである。日本では救急車の利用は無料であるが、学生たちはそれが世界では当たり前ではないことを知り、日本の平等な医療の素晴らしさを実感していた。また、オーストラリアの公立病院では医療の質を保つために中央政府と連携するコミッションが策定する全国的な品質基準を遵守し、その情報をネット上でも一般公開する義務がある。さらに看護師だけでなく、すべての医療従事者は資格取得後もAHPRA(AustralianHealthPractitionerRegulationAgency)に登録し、登録後も基準を満たして更新しなければ働くことはできない。学生たちは医療専門職者として、日々研鑽を積み、学習を継続することによって安全と質の高い医療を提供していくことの厳しさを実感したようであった。最後にオーストラリアの医療における課題について説明を受けた。オーストラリアの国土面積は日本の約20倍あり、都市部から離れた遠隔地やアボリジナル・ピープルの医療へのアクセス格差が指摘されており、オンライン会議システムを活用したテレヘルスなどを導入し、格差是正に取り組んでいることが紹介された。オーストラリアの広大な国土と多民族に由来する課題であり、学生たちは国や地域によって医療課題が異なることを知ることができたようだ。講義中は日本人通訳者による日本語への同時通訳があり、学生たちは日豪の医療制度を比較しながら聞くことができていたようである。また、質疑応答では講中部大学教育研究No.25(2025)―68―写真3講師(右)と聴講する学生たち

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