中部大学教育研究25
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1はじめに在宅看護論は、第3次指定規則改正(1996年)で看護基礎教育に位置付けられた比較的新しい科目である。在宅看護とは、疾病や障害、加齢に伴う変化などを有するすべての人が自宅やそれに準じた環境で生活できるように看護実践を行うことである。療養者を患者ではなく、「生活者」と捉え直し、さらに病院か施設か、自宅かそれ以外かで分けて捉えるのではなく、本当の意味での療養者中心の看護を目指す目的がある。高齢化の進展を受けて2000年に介護保険制度が創設され、支援を必要としながら地域で暮らす高齢者が増加したことから、国は地域包括ケアシステムの考えを打ち出し、在宅看護の役割は大きくなってきた。看護基礎教育においても、2022年4月1日から適応された第5次カリキュラム改正では、「在宅看護論」は「地域・在宅看護論」と名称を変え、人々が暮らしている日常を知り、暮らしを見つめてほしいという意図が込められている(厚生労働省,2019)。加えて、学修内容も6単位から8単位に増加し、より充実した学びが求められている。こうした背景からも、地域で暮らす療養者を広く捉え、従来の第1次予防の視点に加えて、第2次予防、第3次予防の視点を追加して、公衆衛生学的視点と臨床看護学的視点とが連携した学問として地域・在宅看護論の重要性が一層高まっていると考えられる。2024年の厚生労働省の将来推計によれば、2025年の認知症高齢者数は約471.6万人に達すると見込まれている。また、65歳以上の一人暮らしの高齢者は増加傾向にある。特に85歳以上の単独世帯の増加が顕著である(粟田,2022)。訪問看護ステーションの利用者における認知症の割合は平均3.1人(全体の約9.9%)、介護保険の利用者の場合、1事業所あたり平均18.2人(全体の約33.4%)である(一般社団法人全国訪問看護事業所,2020)。さらに、日本における要介護の主な原因は認知症が最も多く、要介護者の23.6%を占める(厚生労働省,2022)。これらのデータから、訪問看護ステーションの利用者の中で、認知症を有する方の割合が高いことがわかる。そのため、在宅看護論の臨地実習においても、学生が認知症独居高齢者と関わる機会が増えることが予測される。柄澤ら(2008)は、独居高齢者が在宅生活を続けられなくなる要因の一つとして認知症による生活機能の低下を挙げている。これを踏まえると、認知症の独居―1―*1看護実習センター助手*2生命健康科学部保健看護学科教授*3生命健康科学部保健看護学科准教授*4看護実習センター助教在宅看護論臨地実習での学生の学び-認知症独居高齢者のケースレポートの分析から-下村彩璃菜*1・堀井直子*2・小塩泰代*3・大谷かがり*4要旨本研究の目的は、在宅看護論臨地実習において認知症独居高齢者を受持った学生の学びを明らかにすることである。実習を行い、評価が修了した10名のケースレポートの内容から、認知症独居高齢者への訪問を通して実感した学びを質的に検討した。その結果、【認知症独居高齢者の今の暮らし方】、【認知症独居高齢者が今の生活を継続できるための訪問看護師の支援】、【認知症独居高齢者が今の生活を継続できるためのチームでの支援】の3カテゴリーが生成された。学生は、認知症独居高齢者の自宅に看護師と同行訪問し、実際の生活の中へはいる体験から、その日常や暮らし方を目の当たりにして、今の暮らし方を理解することが、一人暮らしの継続を支援する要因だと学んでいた。また、独居生活の限界についても、あらゆる生活の様子から判断する重要性を学んでいた。教育上の課題として教員が臨地の指導者やケアマネジャー等の在宅チームと連携をすることで、学生が広い視野で地域での生活支援の在り方を学べる機会を提供する重要性が示唆された。キーワード独居高齢者、認知症、在宅看護、臨地実習、看護学生
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