中部大学教育研究23
83/137

健康な学生への発達支援、学生相談室から大学への発信、保護者面接など活動の幅を広げることも達成された。専任カウンセラーの配置は依然1人であったため、学内の志を同じくする教職員とチームを組むことで様々な学生支援を試み、恵那オリエンテーションガイドブックの作成、中部大学・教育を考える研究会の立ち上げ、レッツ・チャレンジの作成に加えて、『こんなときどうする?学生と向き合う25の提案(以下、『25の提案』と記す)』が制作された(桐山,2018)。「中部大学・教育を考える研究会」メンバーの、学生相談、スポーツ、数学、法律を専門とする4名の教員で冊子制作の構想が練られ、誰もがよく出会う事例として精選された25項目を学生相談室カウンセラーが執筆した。中部大学学長裁量研究費による研究「中部大学の教育を考える―知・情・意の融合的教育を目指して」の一環として作成された。専任カウンセラー1名体制で相談機関を運営しながら、学生の成長を願う志を同じくした教員で研究会チームを編成し、学生対応時の教員の困り感を明確にしたうえでの冊子制作は、本学学生相談室の在り方として組織開発の面からも意味深いものがあると考えられた。2.2理念2006年に出版された『25の提案』は、4章構成、B5判、全71頁で編集された(図1)。第1章「こんなとき、あなたはどうしますか?」、第2章「学生の話を聞く」、第3章「学生たちは話を聞いてくれる人を求めている―アンケート調査の結果から―」からなる(表1)。学生の気になる行動25項目に対する対応の選択肢がクイズ仕立てで提示され、読者自身に対応の振り返りを求めたのちに考察を加えていくという遊び心溢れる構成となっている。第1章「こんなとき、あなたはどうしますか?」で取り上げられた25項目を精査すると、「学生対応の基本姿勢」を基軸としながら、自身の学生観、人間観を再考、再確認、直面させるものがあることに気づかされる。「こんなとき、『あなたは』どうしますか?」という書名のとおり、読者である大学人の「あなた」に問題提起を迫り、学生対応の在り方を内省させ、対峙させる重さと厳しさが感じられる。だからこそ、遊び心を喚起させるクイズ仕立てを取り入れ、軽やかに明るく取り組んでもらう仕掛けが必要だったのではないだろうか。25項目を読み進めると、「(7)言いたいことがはっきり言えない学生と接するとき」「(21)友だちのいない学生が気になるとき」といった「緊急性は低いが今後の学生の心理的成長について考えさせられるもの」から、「(9)SOSに気づいたとき」「(10)自殺したい、死にたいという学生と向き合うとき」といった「緊急性が高く適切な判断を持った危機対応を要するもの」まで、発達支援的な内容のものから緊急対応までを網羅していることがわかる。第1章の最初の項目である「(1)学生の相談にすぐ答えを出せないとき」は、以下の問いかけから始まっている(図2)。「最近は相談内容も複雑になり、深刻な問題を抱え中部大学教育研究No.23(2023)―72―図1『25の提案』表紙表1『25の提案』目次

元のページ  ../index.html#83

このブックを見る