幸友26
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 ユニークなお山の形に見える建物。麓に向かって続く小路。芝生の中をくねくねと下っていくと、ポツンと可愛らしい木の扉が目に入る。「ここが入口?」と、ほんの少しの不安を覚えながらも湧いてくるのはわくわくする気持ち。初めてでもどこか懐かしささえ感じる素朴な雰囲気が、童話の主人公にでもなったような気にさせてくれる。デザイン・設計は、世界的に知られる建築史家・藤森照信氏によるもので、自然素材と人工物を一体化させた数ある建築作品の一つだ。 受付を済ませた後は、大きなトンネル状の階段を上って最上階の4階へ。自動扉が開くと、最初に目に飛び込んでくるのは、真っ白なタイルで覆われた空間。そして、ワイヤーに色とりどり、形もさまざまなタイルが取り付けられたタイルカーテン。晴れた日には青空とのコントラストが際立ち、曇り空ではタイルの色がより映えて見えるという。屋根にぽっかりと空いた丸い穴は、外と直接つながり、雨も雪も、ときには風で舞い上がった葉っぱも迎え入れる。しかし、そこは耐水性に優れたタイルの特性で、水に濡れても全く問題はない。展示されているのは、地元を中心に各地から収集されてきたモザイクタイル画や絵タイル、流し台や浴槽の数々。銭湯に通った経験のある中高年にとっては昭和レトロが懐かしく、タイルのある暮らしに馴染みのない若年層にとっては新鮮に映るはずだ。 階下へ降りると、そこはモザイクタイルの製造工程や歴史をたどることができる3階展示室。タイル産業の歩みを記した年表やタイルの見本帳、製造工程で使う道具などを見ることができる。その中でも、窯道具の一つ、サヤとも呼ばれる「匣鉢」に注目してみた。タイルの製造工程は、原料となる粘土や石を粉状にしたものを型の中に充填し、プレス機で圧力を加えて固めて成形する。その後、釉薬をかけて窯に入れて焼いていくが、その窯詰めの際に、成形したタイルを並べる皿のような耐火性の容器が「匣鉢」だ。かつては箱型が主流だったが、窯色彩豊かで見た目も美しいモザイクタイル。昨今ではDIYに使用するアイテムとしても人気を博しています。施釉磁器モザイクタイル発祥の地にして、全国一の生産量を誇る多治見市笠原町。この地で培われてきたタイルの情報・知識・技術の発信を続けるミュージアムを訪れました。こうばち14多治見市多治見市モザイクタイルモザイクタイルミュージアムミュージアム11

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