2024幸友 VOL.27
13/36

画展など、季節ごとに訪れればさまざまな視点から節子の生涯に触れることができそうだ。 もう一つの見どころが、レンガ造りの建物と隣接して建つ土蔵展示室。節子の生前から残る土蔵を改修した展示室で、風景画のモチーフとなった品々が展示されている。49歳で初めてフランスへ渡った節子は、パリや南フランスのカーニュに滞在。スペインやイタリアなどを旅しながら海外ならではの風景をスケッチした。この渡欧をきっかけに日本古来の美に目覚めた節子は、帰国後、日本の原始美術を収集し、力強くシンプルな線描で、絵画に思想性や民族性を模索するようになっていったという。土蔵には、そのモチーフとなった埴輪や土器が並ぶ。また、奥へ進むと、晩年を過ごした神奈川県大磯のアトリエが再現されている。生前着用していた紅型の着物、愛用の椅子やテーブルなどが展示され、節子の存在を身近に感じることができるスペースになっていた。 結婚後わずか10年で夫・好太郎を亡くし、3人の子どもを育てながら画家としての道を貫いた節子。戦前・戦後の画壇における女性画家の地位向上に尽力した節子。そうした苦難に立ち向かい生きた背景を知ると、絵が発するエネルギーが一層伝わってくる。太陽や花を描いた数々の作品の筆致からあふれる生命力に心を打たれずにはいられない。一人の女性の名を冠した美術館は、ひたむきに描くことに情熱を注ぎ続けた女性画家の生き様にも触れられる美術館だった。〒494-0007 愛知県一宮市小信中島字郷南3147-1TEL.0586-63-2892月曜日(祝祭日の場合は翌日)、祝日の翌日、12月28日~1月4日、展示替え等による整理期間https://s-migishi.com/一宮市三岸節子記念美術館2025年1月25日(土)~2025年3月16日(日)2024年11月30日(土)~2025年3月16日(日)広島県に生まれた中谷ミユキ(1900~1977)は、戦前から帝展や新文展・光風会展などで活躍し、女流美術家奉公隊に加わった後、1946年三岸節子らと女流画家協会を設立して会を牽引しました。二紀会等にも出品を重ね、途中病を得ながらも生涯静物画を追求した画家の、没後初の本格的な回顧展です。お気に入りの壺や花瓶など身近にあるモチーフを組み合わせ、洗練された造形感覚で多くの静物画を残した節子。独自の画面構成で高い評価を受けた1950年代の作品や、滞欧を経て帰国した晩年期に手掛けた静物画を中心にご紹介します。中谷ミユキ展―語り合う静物静物の時代「自画像」をモチーフに誕生したマスコットキャラクター「せっちゃん」。子どもたちにも親しみを持ってもらいたいという願いから作られた。▲愛用の道具を配置して大磯のアトリエを再現。▼土蔵展示室。周りには節子が好きだった 白い花の木が植えられている。休館日コレクション展(常設展)企画展提供:一宮市三岸節子記念美術館12

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る