幸友26
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 建築分野の中でも「温熱環境」が専門の横江准教授は、音や光、温度などの目に見えない環境情報を可視化し、省エネルギー性を考慮しながら、人を快適にするための環境や空間について研究しています。手法は、被験者に協力してもらって行う実験室での実験。計測装置を使って被験者の脳波や心拍などの生理反応を測定し、心理反応を収集します。さらに、その収集したデータを基にさまざまなシミュレーションを実施。VRを使ったり、空気の流れをコンピュータで計算する流体解析(CFD)も行ったりしてシミュレーションしています。「快適性を生み出す要因はさまざまで、人は生理・心理反応が複雑に組み合わさって快適と判定していると思いますが、その快適を作り出している法則を導き出したい」と話す横江准教授。現在は、室内環境だけに留まらず、車室内環境でもいかに快適に過ごせるかを研究中。今後はオフィス内の生産性や作業効率まで研究範囲を広げるなど、その快適性を現実の環境にフィードバックするところまでを目指しています。 中部大学着任前は、企業の研究所に勤めていたという横江准教授。企業と大学での研究の大きな違いは、学生と楽しさを共有できる点だと話します。「面白い実験結果が出たときの学生のキラキラした姿を見るとうれしくなります」。また、研究所勤務時と比べると時代や環境の変化も感じているとのこと。「当時は省エネに重きが置かれ、人の快適性は二の次になっていました。近年では、コロナ禍を経て〝WELL認証〟が一層注目され、働く人の健康や快適性も重要な要素になりました」。さらにここ数年で気候も大きく変動。高齢者の熱中症予防のための空調方法を現在研究しているように、高齢者も大きなテーマになっています。計測機器が進化し、高価なものは安価になり、ウェアラブル機器の発達により多くの生体情報を計測しやすくなりました。研究を進める上では追い風の今、「建築は技術の組み合わせ。人にとって良い環境を組み合わせることでより良い環境を開発したい」と語る横江准教授。快適性を重要視する時代の潮流に乗り、人がより過ごしやすくなる環境が生まれることが期待されます。生理・心理反応を測定して目指す 人が快適に過ごせる環境の実現。専門分野│研究テーマ│温熱環境温熱的・視覚的快適性に関する測定とその評価に基づいた快適な居住空間の構築 よこえ あや横江 彩准教授工学部建築学科温熱環境01学生と「楽しく」をモットーに行うゼミの様子。研究室訪問実験とシミュレーションで快適性の要因を探る。人が快適に過ごせる環境を世の中へ届けたい。シーズ紹介13

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