幸友26
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8学部と大学院6研究科を擁する総合大学として知的資産を集積する中部大学。さまざまな学問分野を網羅する数多くの研究室から、今回は2つの研究室を訪問しました。産官学連携あるいは事業化等にぜひご活用ください。 「運動をすると頭が良くなる」とよく言われます。ならばもっと運動しようとも思いたくなりますが、その最適を探ろうと研究しているのが水上准教授です。1990年代以降、運動と脳に関する研究が進展。身体を動かすと脳内でBDNF(脳由来神経栄養因子)が増えて認知機能が向上するという研究成果が多く報告されてきました。以来、有酸素性運動が効果的と言われる一方、筋トレのようなレジスタントトレーニングが、脳や認知機能に対してどのような影響を及ぼしているのか、また、どういう運動様式が効果的なのか、どれくらいの時間や強度で行えばよいのかなどは共通認識が得られていませんでした。そこで、水上准教授はマウスを使って、回し車に負荷をかけた状態で実験を実施。筋肥大と認知機能の向上が関連しそうだという実験成果を踏まえて、現在は人を対象に研究中です。CAAC(※)の講義を担当していることから、受講者である高齢者の方の筋力や認知機能を測定し、データを集めています。 近年、高齢者のフレイルが注目を集めています。そうした社会的な問題を解決すべく、水上准教授が検討しているのが、フレイル予防につながる包括的な運動プログラムの構築です。フレイルを構成している要因の一つであるサルコペニアや認知症に対して、運動でアプローチができないか研究を進めています。認知機能は、高齢者や学生に協力してもらいストループテストで検査。血中のタンパク質濃度も測定しています。「プログラムの実践によってある程度の機能向上を確認できますが、客観的な指標で裏付けが取れるとうれしい」と話します。また、水上准教授は、高齢者だけでなく子どもの調査も実施。ある自治体と一緒に、こども園の子どもたちの体力と生活習慣の関係を、保護者の生活習慣も含めて調べています。そこから日々感じることがあると語る水上准教授。「日本では、公園でボール遊びができなかったり、大人になるとお金を払わないと運動ができなかったりします」と運動を取り巻く環境を憂いています。身体を動かして健康でいられるよう日常的にどこでも運動に親しめる社会の実現が望まれます。運動が認知機能に与える影響を 筋機能とBDNFとの関係から探る。専門分野│研究テーマ│運動生理学、運動疫学、トレーニング科学身体活動および身体不活動が脳機能に及ぼす影響に関する実験・疫学研究 すいじょう けいち水上 健一准教授生命健康科学部スポーツ保健医療学科運動生理学02CAACの授業の様子。学生も運動指導スタッフとして参加。認知機能の向上をもたらす運動様式とは。あらゆる世代が気軽に運動に触れられる社会を。※CAAC(中部大学アクティブアゲインカレッジ)…生涯学習と社会貢献などを視野に入れたセカンドライフづくりを支援する教育プログラム。14

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