2024幸友 VOL.27
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 「○○を食べると△△に効く」などの健康に関する情報は、今や世の中にあふれ、手軽にインターネットからも得られるようになりました。しかし、「本当は○○を食べると“□□が起こるから”、△△に効くという、その作用の部分のエビデンスや科学的根拠に基づいて述べることが大事です」と草野由理准教授は語ります。食材を摂取した際の生理現象を細胞レベルで解き明かしていくのが草野准教授のテーマ。現在は地元愛知県の農産物、中でも自然薯にスポットをあてて研究しています。「愛知県で品種改良された自然薯にジオスゲニンと呼ばれる機能性成分が比較的多く含まれています。その成分がさまざまな生理作用を示すことがわかり、その解明を骨格筋に着目してアプローチしています」。どのように作用して骨格筋が豊かになるのか、どのような仕組みを使って骨格筋細胞の筋繊維が増加するのか、そのメカニズムの解析を、実験を通して取り組んでいます。 草野准教授が研究の道に進むきっかけは、大学進学前に遡ります。食べたものは身体にどのように作用しているのか。その謎に興味を持ち農学部へ進学。しかし食材の研究が多く、受け手側の人体の謎は深まるばかり。そこから作用の解明を目指し始めて今に至ります。また、これまで研究を続けてこられたのは、研究に対する考え方や取り組む姿勢を教えてくださった先生や周囲で支えてくれた方々のおかげ。そして、自分が立てた仮説が証明されたときの感動にあるとのこと。そうした感謝の気持ちと感動が次の研究へ突き動かす原動力になるそうです。現在は、機能性の解析を進めている最中ですが、最終目標は、管理栄養士が食品やメニューとして活用できるところまで発展させること。「遺伝子レベルで機能性成分を増やすことよりも、食材の保存法や調理加工などの側面からその成分を上げられないか検討したい」と話します。中部大学が管理栄養士を養成し、卒業後の大学院教育も充実している大学であるからこその目標と言えそうです。これを食べたらこれに効く。そうした効果の裏付け一つひとつには、仕組みを解き明かしたいと望む研究者の情熱が背景にあることを知る訪問となりました。8学部と大学院6研究科を擁する総合大学として知的資産を集積する中部大学。さまざまな学問分野を網羅する数多くの研究室から、今回は2つの研究室を訪問しました。産官学連携あるいは事業化等にぜひご活用ください。食品機能、骨格筋機能、腸管機能、健康科学生活習慣病を予防する食品成分の機能解析位相差蛍光顕微鏡を用いて、食品成分に対する細胞応答性を解析する様子。食品成分により、多核の骨格筋細胞に誘導された細胞。くさの ゆり     草野 由理准教授応用生物学部食品栄養科学科食品機能骨格筋に作用するメカニズムを探る。管理栄養士が活用できるレベルまで解明したい。愛知の農産物が持つパワーに着目し、その機能性の解析と応用を目指して。専門分野研究テーマ14

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