幸友26
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 血液の病気は高脂血症、糖尿病、高血圧といった生活習慣病と比べて頻度が少ないことから、あまり一般的には良く知られていないと思います。今回は、血液専門医として25年以上の経験を踏まえながら、お話させていただきます。 血液の病気で最も頻度の高い症状はいわゆる『貧血』症状です。一般的には立ちくらみがするとか、階段などを登ると胸がやや苦しくなるなどの訴えです。このような場合、近所の内科クリニックでは、まず診察時に結膜の色を見られます。ここで明らかに血の気の少ない色調ですと重症貧血が疑われます。しかし、このような患者さんは稀なので、次に採血を指示されます。そこから出てくるデータは短時間に得られ、多くの情報を含みます。 ところで、立ちくらみはどのような時に起こるのでしょうか。私の場合、あまり飲めないのですが甘口ワインを飲みすぎてしまって、立ち上がった時に起こります。これはアルコールの代謝産物が血管を拡張するためだと言われます。また、迷走神経が過剰に働くと同様に血管を拡張して血圧が下がります。私が医学生だった時、実習として学生同士で動脈採血を取り合うというものがありました。動脈で一番取りやすいのは鼠径部ですが、採血が初めての学生がゆっくりと何度も何度も自分の鼠径部を刺すのですぐに気分が悪くなりました。飲み過ぎでの気分不良が一気に押し寄せてくるようなもので、迷走神経反射によるものと考えます。 血流や血圧の維持が意識の覚醒状態に重要であるのですが、血管内で運搬されている物質で最も重要なものが酸素と二酸化炭素です。これらは常温では気体として血漿中に溶け込んでいるわけですが、酸素の量はこれだけでは体に十分ではありません。そこでヘモグロビンが登場します。ヘモグロビンは1分子当たり4つの酸素分子を結合する能力があり、ヘモグロビン1gには酸素1.39が結合できます。平均的な成人の血液量を5リットルとすると約750gのヘモグロビンが存在していますので、約1リットルの酸素がヘモグロビンで運搬されることになります。1リットルの酸素供給を左右するわけですから、貧血の患者さんデータの中では、ヘモグロビンが最も重要視されるのです。  それではヘモグロビンとは何なのでしょうか。この分子はヘムとグロビンと言われる部分の複合体で、このヘムの中には鉄分子が含まれます。ヘモグロビンは主に赤血球内に多量に含まれています。通常、成熟赤血球は核を含まないために、ヘモグロビンの大『血液の病気』ってどうなんですか?生命健康科学部 生命医科学科 教授 山本 幸也14やまもと  ゆきや15

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