2024幸友 VOL.27
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らかになってきています。家族にも集中治療後症候群の症状が出ることがあるのです。 患者さんに集中治療後症候群が生じる主な要因は、集中治療による身体的な侵襲や強い心理的なストレスなど、多くの要因が複雑に絡み合って生じるといわれています。多くの方は1年程度で症状は軽減しますが、3年以上経過しても良くならない方もおられます。私たちの研究では、過去5年以内に3日以上ICUで治療を受けた経験のある方のうち、半数近くの方が何らかの不調を自覚されていました。そして、症状を自覚されている方の中には、家族に負担をかけていると感じている方もいることが明らかになりました。 集中治療後症候群は、ICUを専門とする医師や看護師には知識がありますが、まだ多くの医療者に充分に認知されているとは言い難い状況です。一般の市民にとっては、さらになじみの薄いものだと思います。皆様ご自身やご家族・知人が集中治療後に「病気は良くなったのに、なんとなく調子が悪い。元気が出ない」「家族が集中治療後に亡くなった後、調子が悪い」など、不調を感じておられる場合は、是非お気軽にご相談ください。症状軽減に向けて無償で専門家がアドバイスなどを行い、継続的に皆様を支援します。 最後に、集中治療の1つである人工呼吸器での治療が数日間続くと、口の中の細菌が原因となって肺炎を引き起こし、命を落とすことがあります。日常の中でも、特に高齢者の方がむせた場合、口の中の細菌が原因で肺炎にかかることもあるのです。そのため、日頃からの歯磨きで口の中を衛生的に保つことは、虫歯や歯周病を防ぐだけではなく、思わぬ場合の肺炎を防ぐことにつながります。 口の「食べる」「話す」という機能は、社会生活を営む上で重要な役割を担います。しっかり噛めると食事から栄養が摂取でき、会話や表情に関連する筋肉をはじめ全身の筋力が保たれます。そのおかげで社会とつながることができ、認知機能の低下を防ぎます。虫歯や歯周病があると、噛みにくくなって食べる量が減り、栄養が不足して全身の筋力低下を来たし、虚弱(フレイル)の要因になります。フレイルによって日常生活の中で活動が減り、社会とのつながりが薄れて認知症になる危険があります。虫歯や歯周病で歯が抜けると、転びそうになったときに「食いしばる」ことができずに、転倒につながります。また、会話がしづらくなって周囲との会話が減り、認知症の危険につながります。歯周病は悪化するまで痛みを感じにくく、歯科への受診が遅くなることがあります。しかし、歯周病が悪化すると、歯周病菌が原因となってさまざまな病気を引き起こしたり、病状の悪化につながります。このように、口の中の状態は全身の健康や生活に大きく影響するので、歯科への定期的な受診と日頃のお手入れが重要です。口の中の衛生から、心身共に健康に過ごしましょう。著者への連絡先▶0568-51-9605 h-ejiri@isc.chubu.ac.jp16
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