2024幸友 VOL.27
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 私の専門分野は主に経営組織論・組織行動論です。会社の組織や、組織の中の人間行動を研究する分野になります。組織とは本当に面白い存在だと常々思っています。私はまだ女性の経営学者が少ない時代に中部大学に教員として着任し、今年で27年目です。その間、研究のために多くの企業でヒアリングさせていただく機会に恵まれました。組織のリーダーである社長や管理職の方々とじっくり対話を重ねることで構築した長年にわたる信頼関係は、人生の宝物です。いつしか、私の研究テーマに関連する事業や「ぜひ女性に任せたい」というプロジェクトにお声を掛けていただくことも増えました。特に、尊敬できるリーダーの方々とのおつきあいは、大きな力となっています。悩みごとの相談やアドバイスが欲しい時には「あの社長さんに相談してみよう」と連絡。思いもよらぬ解決策にたどり着き、つらい時を乗り越えたということが何度もありました。組織の特徴や効果的なマネジメントスキルなどを肌で感じ、経営学の研究にフィードバックしています。それは中部大学という組織内でも同じで、入学センター長などのマネジメント職を務める私にとって、教職員の方々との人的ネットワークは欠かせないものです。これまで築いてきた人との信頼関係が今の私をつくっているとも言えるでしょう。 私がこれまでにお会いした魅力的なリーダーには共通するポイントが二つありました。一つ目は、「常に現場の声を拾おうとしていること」です。たとえば製造業の場合、組織が大きくなるとリーダーとものづくりの現場との間には距離ができてしまいます。ところが、従業員が何百人、何千人規模になっても、製造現場の様子をしっかりと把握されている社長さんもいらっしゃいます。忙しい仕事の合間をぬって工場に出掛けては、「これは今どうなっているの?」と、従業員に声を掛けているのです。気さくな態度で話し掛けてくる社長さんには、従業員も肩の力を抜いて気兼ねなく状況を伝えることができる―経営学の中でも先生のご専門は「組織」だと伺いました。―先生が尊敬するリーダーとはどのような方ですか?16良質な組織とネットワークの関係今回のテーマ中部大学 学長補佐経営情報学部 経営総合学科大学院経営情報学研究科 経営情報学専攻 てらざわ あさこ寺澤 朝子教授名古屋大学大学院経済学研究科博士後期課程満期退学 博士(経済学)。専門分野は経営組織論、組織行動論。1998年4月より中部大学。経営総合学科、大学院経営情報学研究科にて教鞭をとる傍ら学長補佐として、入学センター長や女性活躍推進室副室長を務める。学外のホテル運営企業で社外取締役として経営にも携わる。今回お話を伺った方変化のスピードが速く将来の見通しが困難な現代社会。組織を成長に導く確かな処方箋がない時代に求められるリーダーシップとはどのようなものでしょうか。経営組織や組織行動について研究する寺澤朝子教授に、組織と人的ネットワークの観点からお話しいただきました。17

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