幸友26
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 2020年4月に発令された緊急事態宣言以降の外出さえままならない期間に、大学に進学、在籍した学生たちは、コロナ禍さえなければ得られていたはずの学習機会や挑戦の場を奪われ、大きな失望感を抱いています。成長の機会が与えられなかったことを、自分の責任のように感じているのです。人が長い時間をかけて積み上げる知識やスキルなどのことを「人的資本」と言いますが、世界銀行の総裁は、このパンデミック期に25歳未満だった子どもや若者が、人的資本の「失われた世代」になりかねないと警鐘を鳴らしています(※)。 一方で、この世代はちょうど「Z世代」や「デジタルネイティブ」と呼ばれている層でもあります。デジタル機器を通した遠隔授業などの教育環境の変化に、たくましく適応してきました。情報リテラシーが高く、ダイバーシティを体感的に理解しており、社会貢献意識が強いという特徴があると言われています。彼らの能力がこれから社会でうまく開花するように、私たち先輩世代がサポートして、成長に寄与していくことが求められています。 組織やチームを率いるリーダーは、いつの時代も「若い世代が何を考えているのか、わからない」という悩みを抱えておられると思います。近年は、リモートワークの導入によって、社員同士のコミュニケーションが不足しがちです。たとえば、部下がメールで「もう仕事を続けられません」と送ってきた場合と、髪の毛はボサボサ、頬には涙の跡があって、よれよれの姿で悩んでいる姿を目の当たりにした時とでは、情報量が全然違いますよね。デジタルを介したコミュニケーションでは、より相手の気持ちを慮る想像力が求められます。そこで大切なのが、「共感」です。 相談を受けると、私たちは「何かしてあげなくてはいけない」と、解決に導きたくなります。でも、そこはぐっと自分を抑えて話を聞き、相手の気持ちに―コロナの渦中に大学進学した学生も、もうすぐ社会人です。―悩める若い世代に、企業はどのように接したらよいでしょうか。15今こそリーダーに求められる「聞く技術」今回のテーマ中部大学学生相談室長 さとう  えり佐藤 枝里カウンセラー・教授国際基督教大学、米国南部ウェズリアン・カレッジを経て国際基督教大学大学院博士課程前期修了。2008年のリーマンショック直後に中部大学の学生相談室専任カウンセラーに着任。1対1の個別面接を基軸としつつ予防的心理教育の出前授業や大学教職員対象の研修活動を通して若者の心理的成長支援を行っている。今回お話を伺った方新型コロナ危機による社会の変化は、若い世代の心理に大きな影響を与えました。悩みを抱える若手社員に、企業はどのように向き合えばよいのでしょうか。学生相談室の室長でありカウンセラーの佐藤枝里教授に、現代のリーダーに求められる対人スキルについてお聞きしました。※2023年2月16日付THE WORLD BANK プレスリリースより17

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