2025幸友 VOL.28
23/32
産業用のロボット開発が主だった時代から、昨今では多様なロボットが生活で使われるようになり、人とロボットとの交流をテーマにした研究が活発化しています。それが「HRI」です。なかでも、イ ジェリョン准教授が進めている研究は、ロボットとの遊びを通じて自閉症の子どもの感情を理解すること。始めたきっかけは2009年に来日し、名古屋大学の大日方五郎教授(2014年に中部大学へ赴任)の研究室在籍中に読んだ、自閉症児のためのロボット研究をしていたイギリスの論文でした。以来、その人に合った方法で適切な支援をしてくれる、個別性と社会性を持ったロボットをつくることを目指して研究を続けています。「カメラで顔の表情や会話などの音声、心拍や皮膚の温度などの生体信号を読み取り、それらの情報を定量化しています」。人と人とのコミュニケーションでさえ解明されていない点が多い中、社会性を数値化することが研究の難しいところ。表現することが苦手な自閉症の子どもたちの遊ぶ様子を通じて、言葉には表されない本音を知りたいと話すイ准教授は、さまざまなアプローチで挑戦を続けます。 コロナ禍以前、愛知県自閉症協会主催のサマーキャンプに参加していたイ准教授。そこでは、子どもたちがロボットと遊ぶ姿を見られることに喜びを感じる一方、世界で技術がこれだけ発達しているのに期待に応えられていないと落ち込むこともあったそうです。実用化と言っても完全なロボットをつくることだけがゴールではありません。例えば、学校の教材や遊び道具、あるいは会話アプリなど、研究の一部を生かすことで実用化への可能性は広がるとのこと。イ准教授は現在、「ヒト型ロボットはもちろん、ボール型やスポンジ素材、温かいロボットなど、安心感や親しみやすさなどに配慮しながらさまざまな形状や素材のロボットを用いて社会性の定量化に取り組んでいます」と語ります。技術の進化により、ロボットだからこそ自閉症児の社会性の発達を支援できる日が近づいています。企業が得意とするマーケットインの考え方とイ准教授の研究成果を組み合わせることで、新しい支援の形が生まれる、そんな期待が膨らみました。中部大学の研究シーズを紹介する研究室訪問。今号のテーマはロボット研究です。産官学連携あるいは事業化等にぜひご活用ください。ヒューマンロボットインタラクション(HRI)アフェクティブロボット、ソーシャルロボット、ヒューマンロボットインタラクション、ロボットセラピーイ ジェリョン准教授理工学部 AIロボティクス学科ヒューマンロボットインタラクション視覚情報と生体信号から感情の状態を知る。子どもたちに感謝しながら実用化に向けて一歩ずつ。ロボットとの遊びを通じて社会性の発達を支援する。専門分野研究テーマ研究室訪問おびなたロボットと遊ぶ様子から視覚情報と生体信号を収集。シーズ紹介22
元のページ
../index.html#23