幸友26
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 本日は、北海道石狩市で行ってきた超電導の実験の成果と今後の見通しについてお話しします。現在進行中の10万kW級の送電能力を持つ液体窒素冷却による「超電導直流送電システム(SCDC)」は、経済産業省承認の「石狩超電導・直流送電システム技術研究組合(I-SPOT)」が実行組織です。組合メンバーは、JFEスチール㈱、日揮グローバル㈱、さくらインターネット㈱、そして中部大学です。従来の送電線と比べて送電ロスを10分の1以下に低減し、カーボンニュートラルへの実現にも大きく貢献するもので社会実装を目指しています。その実現には、企業の皆様の理解を得て投資をいただくことが必要です。 まずは、「超電導」の紹介を少しします。超電導とは、特定の金属や化合物が一定温度以下で電気抵抗がゼロになる現象で、1911年にオランダのカマリン・オンネスによって液体ヘリウム(マイナス269度)を使って発見されました。本日の話は、液体窒素(マイナス196度)を使っていますので、それに比べてはるかに高温で超電導になるということです。超電導を利用した技術は医療現場のMRI、リニアモーターカーや核融合にも使われています。この「核融合」については、私が2010~2015年まで機構長を務めた、「ITER(イーター)計画」と合わせてお話しします。 「ITER(イーター)」とは、新エネルギー開発の超大型国際プロジェクトで、国際協力によって核融合エネルギーの実現性を研究するための実験施設です。直径約30m、総重量2万3千トンの装置には、日本の技術も大きく貢献し、超電導体が多用されています。原子力発電とどう違うのか重要な点ですが、「ITER」とはラテン語で「道」という意味を持ち、「核融合実用化への道・地球のための国際協力への道」という願いが込められており、安全性を実証することを最大の目標として進められています。50万kWの熱出力を出す燃料のインベントリーは1グラムで、重水素と三重水素を使って1億度に加熱します。この1グラムの燃料が石油に換算すると8トン分のエネルギーになります。皆様が将来核融合に投資されるときの判断基準になると思中部大学発の革新技術未来を拓く高温超電導送電学校法人中部大学理事中部大学学事顧問石狩超電導・直流送電システム技術研究組合(I-SPOT)理事長 もとじま  おさむ本島 修氏Profile京都大学にて1971年に工学博士を取得後、京都大学ヘリオトロン核融合研究センター教授、名古屋大学プラズマ研究所教授、核融合科学研究所教授・所長、国際核融合エネルギー研究開発機構(ITER)機構長などを経て、帰国後の2015年より中部大学学事顧問、太平洋工業株式会社社外取締役に就任、2019年からは学校法人中部大学理事を務める。また2021年より石狩・超電導直流送電技術組合の理事長に就任。加えて、未来エネルギー研究協会会長、スウェーデン王立科学工学アカデミー会員などを兼務。太陽と恒星の中心で宇宙開闢から長期間安定して起こりつづけ、人類の究極のエネルギー源と言われる核融合(フュージョン)エネルギーの開発研究に一貫して携わっており、プラズマ物理学、超電導工学、エネルギーと環境学などを専門とする。超電導技術の社会実装を目指して日時:2023年4月26日(水)15時50分~ 会場:名古屋東急ホテル3階第35期総会講演ダイジェスト講師変電所太陽光発電所パーキングエリアSmart City火力発電所SCDC断面超電導線29

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