幸友26
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いますが、核融合は原子炉と違い暴走することはありません。超電導送電を使う重要なカスタマーが核融合発電です。 超電導直流送電の準備研究は、中部大学で行われてきました。2006年に文部科学省の補助を受けて20mの実験装置を建設、その後200mの装置を建設し、石狩プロジェクトに発展していきました。超電導ケーブルの直径はたった4㎝で、絶縁層と保護層をつけて約30㎝径の金属製の鋼管の中に液体窒素を入れて超電導状態になります。石狩には500mの回線1と1㎞の回線2をつくりました。回線1は太陽光で発電した直流電気を地下に埋設した超電導線。回線2は長距離の試験用で、超電導線を地上設置し実用化に向けた各種試験を実施しました。2013年から4年間実施した実証試験の成果は、2017年に開催された「石狩超電導国際フォーラム」で報告。その後、現在まで社会実装を目指す活動と超電導の有用性を社会に発信する活動を展開してきました。中でも2021年に行った6年ぶりの再稼働では、電気試験や通電試験、断熱真空の管理や液体窒素循環の運転などを行い、超電導ケーブルの健全性を確認し、低コスト化の運転可能性も立証することができました。 私たちの周りには実にさまざまなリスクがあります。人口爆発、炭酸ガス増加による地球温暖化、経済危機、核戦争の勃発、原子力発電所の事故…。そうしたリスクから自らを守る手段を確保しておく必要があります。そのリスク管理の一つが地域・国境をまたいで相互のライアビリティーを担保できるSCDCです。SCDCを使うとどのような未来社会を描けるかを示しました(図)。超電導送電は、現在1㎞あたり約10億円の設置コストがかかりますが、1億円くらいにできれば理想的な社会実装が進むと思います。仮に1㎞あたり4億円として、1000㎞設置すると4千億円。そのコストをどう負担するのかが重要ですが、この図の考え方は、500mごとに約10 MWの風車を建てて発電します。つまり、長くすればするほど発電量が増えて採算が合うというビジネスモデルになります。もちろん財産価値で数兆円規模と言われる送電線を同時に取り換えることは得策ではありません。しかし、大型の変電所を起点として300~500mの鉄塔間の超高圧送電線を一つずつ取り換えていく方法であれば現実的と考えます。本学だけでなく、ぜひ電力会社も含めた企業の皆様とビジネスプランの可能性を探っていきたいと思っています。 最後に、石狩プロジェクトの今後について触れておきます。回線1は、石狩技術組合が経産省からの払い下げ手続きが進行中で、決定後は速やかにさくらインターネットへ移管し、太陽光発電や風力発電と接続して実地の使用に向けた動きを加速していきます。回線2では、安全スタンダートの構築のために落雷や事故を模擬した過酷試験などをスタートしています。中部大学は、払い下げ以降も全面的な技術支援協力を行い、今後も社会実装を目指して尽力していきますので、引き続き応援をよろしくお願いいたします。超電導送電の実験と成果超電導送電で拓く新たな社会インフラ(図)SCDCを基本インフラとする新しいスマートエネルギーシステム揚水発電所核融合発電所風力発電所国際港30

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