研究ガイドブック2024
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参-1-4 4 第第11節節 研研究究活活動動のの不不正正行行為為にに関関すするる基基本本的的考考ええ方方 11 研研究究活活動動 研究活動とは、先人達が行った研究の諸業績を踏まえた上で、観察や実験等 によって知り得た事実やデータを素材としつつ、自分自身の省察・発想・アイディア等に基づく新たな知見を創造し、知の体系を構築していく行為である。その際、科学研究とは、そもそも仮説と検証の循環により発展していくものであり、仮説が後に否定されるものであったとしても、当該仮説そのものが科学的価値を持ち得るものであるということを忘れてはならない。 22 研研究究成成果果のの発発表表 研究成果の発表とは、研究活動によって得られた成果を、客観的で検証可能 なデータ・資料を提示しつつ、科学コミュニティに向かって公開し、その内容について吟味・批判を受けることである。科学研究による人類共通の知的資産の構築が健全に行われるには、研究活動に対する研究者の誠実さを前提とした、研究者間相互の吟味・批判によって成り立つチェックシステムが不可欠である。研究成果の発表は、このチェックシステムへの参入の意味を持つものであり、多くが論文発表という形で行われ、また、論文の書き方(データ・資料の開示、論理の展開、結論の提示等の仕方)に一定の作法が要求されるのはその表れである。 33 研研究究活活動動ににおおけけるる不不正正行行為為 研究活動における不正行為とは、研究者倫理に背馳はいちし、上記1及び2において、その本質ないし本来の趣旨を歪ゆがめ、科学コミュニティの正常な科学的コミュニケーションを妨げる行為にほかならない。具体的には、得られたデータや結果の捏造ねつぞう、改ざん、及び他者の研究成果等の盗用が、不正行為に該当する。このほか、他の学術誌等に既発表又は投稿中の論文と本質的に同じ論文を投稿する二重投稿、論文著作者が適正に公表されない不適切なオーサーシップなどが不正行為として認識されるようになってきている。こうした行為は、研究の立案・計画・実施・成果の取りまとめの各過程においてなされる可能性がある。 このうち、例えば「二重投稿」については、科学への信頼を致命的に傷つける「捏造ねつぞう、改ざん及び盗用」とは異なるものの、論文及び学術誌の原著性を損ない、論文の著作権の帰属に関する問題や研究実績の不当な水増しにもつながり得る研究者倫理に反する行為として、多くの学協会や学術誌の投稿規程等において禁止されている。このような状況を踏まえ、具体的にどのような行為が、二重投稿や不適切なオーサーシップなどの研究者倫理に反する行為に当たるのかについては、科学コミュニティにおいて、各研究分野において不正行為が疑われた事例や国際的な動向等を踏まえて、学協会の倫理規程や行動規範、学術誌の投稿規程等で明確にし、当該行為が発覚した場合の対応方針を示していくことが強く望まれる。 なお、新たな研究成果により従来の仮説や研究成果が否定されることは、研究活動の本質でもあって、科学的に適切な方法により正当に得られた研究成果が結果的に誤りであったとしても、それは不正行為には当たらない。

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