中部大学研究紹介2025
53/94

52キーワード相談に応じられる内容抗癌剤フルオロウラシルの効果を高める薬剤の研究MATSUMOTO Yoshihiro応用生物学部教授松本 博フルオロウラシル系抗癌剤の作用機序、薬剤のDNA複製・修復への影響の評価、組み換え蛋白質の発現と精製フルオロウラシル(5-uorouracil, FU) は、1957年に開発されて以来いまだに様々な癌に対する化学療法に広く使われているが、奏功率の低さ、副作用、耐性細胞の出現など改善の余地は多い。私たちは近年、FU をデオキシウリジン類似物である5-hydroxymethyl-2’-deoxyuridine (hmUdR) あるいは 5-formyl-2’deoxyuridine(foUdR) と組み合わせることにより、相乗的で劇的な致死効果が癌細胞(大腸癌細胞、HT-29, HCT 116; 膵臓癌細胞PANC-1; 肺癌細胞EXVX)に対して顕れることを見出した。それに対し、正常細胞(肺由来正常細胞、WI-38; 臍帯静脈細胞、HUVEC)では弱い効果しか見られなかった。この薬剤組み合わせの効果は、増殖が活発なS期の癌細胞のゲノムDNA中に単鎖切断を惹き起こすことに拠っており、その結果S期の途中でDNA複製が止まること、NADが枯渇することが解った。また PARP 阻害薬を加えると、DNA合成は完了するが、G2/Mチェックポイントで死に至ることも明らかになった。現在、単鎖切断を惹き起こすメカニズムの詳細解明を進めるとともに、hmUdR、foUdR 同様あるいはより以上の相乗効果を惹き起こす他のデオキシウリジン類似物を捜索している。【研究テーマ】●フルオロウラシルの作用機序、塩基除去DNA修復●ヌクレオシド類似物がDNA複製・修復に及ぼす影響の研究●組み換え蛋白質による 再構成系を用いたDNA複製・修復のメカニズムの解明抗癌剤、フルオロウラシル、DNA複製、DNA修復、組み換え蛋白質キーワード相談に応じられる内容がんの微小環境を標的とした新たな漢方治療法の探索QIAO Shanlou生命健康科学部 生命医科学科教授喬 善楼がん、糖尿病に関する漢方活性物質の探索、漢方による補助治療のエビデンスの提供 がん細胞は正常細胞と違って、酸素の有無に関係なくグルコースを乳酸の生成に向けているワールブルク効果がある。現在では、このがん細胞のエネルギー代謝の特徴を利用したがん治療法に注目が集まっている。 本研究は、がん代謝特徴を癌治療戦略の新たなターゲットにし、抗がん作用があると民間に言い伝えられている漢方薬からスクリーニングを行い、従来の化学療法剤のような副作用を有さない活性物質を見いだすことを目的とする。【研究テーマ】●がんの微小環境を標的とした新たな漢方治療法の探索がん、エネルギー代謝、ワールブルク効果、漢方、糖尿病、小胞体ストレス応用生物学部生命健康科学部

元のページ  ../index.html#53

このブックを見る