中部大学研究紹介2025
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55特許P88参照キーワード相談に応じられる内容メラニンの医療応用と健康長寿に関する研究KAWAMOTO Yoshiyuki 生命健康科学部 生命医科学科准教授川本 善之合成またはイカ墨抽出メラニンを用いた抗アレルギー剤、がん抑制剤等の開発メラニンは皮膚においては紫外線による障害を防ぐ機能を持つことは良く知られている。自然界に広く分布し、イカ墨にも多量に含まれ、食しても安全な天然生体合成物質である。メラニンはアミノ酸のチロシンを初期物質として酸化重合によって生合成されるポリマーで、分子量が一定でなく、あらゆる溶媒に難溶性である。我々は、メラニンを生化学的緩衝液に容易に溶解する条件を初めて発見し、さらに水溶液に可溶なメラニンを独自に合成した。こうして調整した可溶化・可溶性メラニンは、アレルギー応答に重要な役割を担うマスト細胞の活性化を効果的に抑制することを初めて見出した。さらに、あらゆるがん細胞の増殖を抑制した我々が作製した可溶性メラニンは、安全性の高い新規抗アレルギー剤や、副作用の少ない制(静)がん剤の開発シーズとなり得ると考える。【研究テーマ】●メラニンの分子構造解析●可溶化・可溶性メラニンによるがん細胞増殖抑制メカニズムの解明●イカ墨メラニンによる抗アレルギー、細胞増殖抑制の解析●可溶化・可溶性メラニンの医療応用への検討●健康長寿に寄与する食品因子の探索と分子メカニズムの解析メラニン、イカ墨、アレルギー、老化制御、がん、炎症/可溶性メラニンの化学合成不溶メラニンの完全可溶化特許P88参照キーワード相談に応じられる内容収縮リズム恒常性に着目した病気前診断の開発SHINTANI A. Seine 生命健康科学部 生命医科学科准教授新谷 正嶺心臓・筋肉・生体リズムについて、溶液に浸かった無固定試料の電子顕微鏡計測、信号解析・画像処理・人工知能技術による解析手法の開発、病気の予兆検出の検討 心臓は、確率的にしか振舞えないタンパク質ナノ分子モーターの化学力学反応を一生涯休まず続く頑強な心拍リズムに変換し、我々の生命活動を支える重要な臓器である。心拍リズムの破綻は速やかな死につながるため、その仕組みには試行錯誤と淘汰の果ての叡智が詰まっていることが示唆されるが、その仕組みはまだ十分に分かっていない。 近年私は、温めた心筋細胞は心拍に近い周期の収縮リズム(HSOs; Hyperthermal Sarcomeric Oscillations)を生み出すこと、その収縮リズムには、他の周期で細胞内カルシウム濃度が変化しても、周期を一定に保つリズム恒常性(CRH; Contraction Rhythm Homeostasis)が備わっていることを発見した。 現在、生体組織から分離せずに、生体分子の挙動を計測するために、溶液に浸かったままの生体試料の微細な構造と動きを計測できる電子顕微鏡ライブイメージング法の開発を進めている。この計測手法によって、心臓が体温で安定かつ効率的な心拍リズムを刻む仕組みのさらなる解明と、その破綻としての心不全等の心疾患の予兆の早期発見や治療に効果的な方法の提案を目指している。【研究テーマ】●心臓が体温で安定かつ効率的な心拍を刻む仕組みの解明●溶液中で動く試料の電子顕微鏡ライブイメージング法の開発●心疾患の病気前診断と治療に効果的な方法の提案生物物理学、生理学、医用工学、人工知能技術生命健康科学部生命健康科学部
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