中部大学研究紹介2023
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56キーワード相談に応じられる内容野生動物管理に役立つ腸内細菌研究 TSUCHIDA Sayaka応用生物学部講師 土田 さやか腸内細菌研究、プロバイオティクス開発、微生物機能解析、環境保全研究 腸内細菌は動物種ごとに異なっており、食べ物の消化や免疫賦活による宿主の健康維持に役立っています。様々な野生動物にも、その動物に特徴的な「共生腸内細菌」が存在しており、我々人間であればお腹を壊してしまうような、野生下の食べ物に含まれる反栄養物質や毒素を分解し、消化することができます。例えば、野生草食動物の食べる植物は、一般に人間の食べる野菜とは異なり、アルカロイドや青酸配糖体などの毒素や、タンニンなどの反栄養物質を含んでいます。野生動物はこれらの物質を、彼らの腸内細菌が持つ酵素によって分解し、無毒化することによって栄養としていることがわかってきました。我々は、このような野生動物の腸内細菌の持つ有用な性質に着目しプロバイオティクスを開発し、希少動物の保全に役立つ腸内細菌研究を行なっています。類縁の家畜種やペットなどの保健にも役立つと期待されています。 【研究テーマ】●ゴリラに特徴的な乳酸菌の研究 野生個体、飼育個体問わず分離されるゴリラ特異的乳酸菌Lactobacillus gorillae の表現及び遺伝形質を、培養法や全ゲノム解析を用いて研究しています。  ●スローロリスおよびマーモセットの給餌改善が共生細菌にもたらす効果 飼育スローロリスおよびマーモセットの給餌改善に伴い、消化管内細菌や口腔 内細菌がどのように変化したかを菌の生理性状により評価しています。●ライチョウの保護増殖に関する腸内細菌研究 飼育ライチョウを野生復帰個体群として維持するために、野生型の腸内環境に 近づける試みを行っています。野生動物、腸内細菌、プロバイオ、保全、保健衛生キーワード相談に応じられる内容がんの微小環境を標的とした新たな漢方治療法の探索QIAO Shanlou生命健康科学部 生命医科学科教授 喬 善楼がん、糖尿病に関する漢方活性物質の探索、漢方による補助治療のエビデンスの提供 がん細胞は正常細胞と違って、酸素の有無に関係なくグルコースを乳酸の生成に向けているワールブルク効果がある。現在では、このがん細胞のエネルギー代謝の特徴を利用したがん治療法に注目が集まっている。 本研究は、がん代謝特徴を癌治療戦略の新たなターゲットにし、抗がん作用があると民間に言い伝えられている漢方薬からスクリーニングを行い、従来の化学療法剤のような副作用を有さない活性物質を見いだすことを目的とする。【研究テーマ】●がんの微小環境を標的とした新たな漢方治療法の探索がん、エネルギー代謝、ワールブルク効果、漢方、糖尿病、小胞体ストレス応用生物学部生命健康科学部

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