中部大学研究紹介2025
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59キーワード相談に応じられる内容NPJ Parkinsons Dis 2023 Lewy小体病に関連する腸内細菌の機能遺伝子および代謝産物の解明MASAAKI Hirayama生命健康科学部 作業療法学科教授平山 正昭腸内細菌の16sアンプリコン解析、ショットガン解析、腸内細菌の機能遺伝子の同定、細菌産生代謝物の測定、germ-freeマウスを用いた動物モデルLewy小体型認知症、パーキンソン病、腸内細菌社会実装分野神経難病の疾患修飾療法への応用 Lewy小体病(LB)は、レビー小体型認知症(DLB)、パーキンソン病(PD)、レム睡眠行動異常症(iRBD)に分類されます。LBは、神経細胞内のαシヌクレイン線維の異常凝集(レビー小体)を特徴とします。DLBは認知症の約20%を占め、アルツハイマー病についで多い認知症です。幻覚などの陽性症状が社会問題となっています。脳内にレビー小体が出現することで病気が発生するのですがその機序はわかっていません。臨床的にPDは運動症状発現の20年、10年、5年前に便秘、RBD、うつ病を発症することから、消化管から異常なタンパク質が上行することでパーキンソン病が起きる可能性が考えられています。Braakらにより病理学的に異常なαシヌクレイン線維が迷走神経の背側核から始まり、徐々に黒質へ上昇するという画期的な仮説が提唱されています。この観点から、我々は腸内環境がパーキンソン病の病態に関与するとして神経変性疾患と腸内細菌の研究を進めています。現在、我々の研究からこの疾患の共通因子として、腸管粘膜の形成に関わるSCFA産生菌の低下と腸管粘膜を消費するとAkkermanciaの増加は腸管のバリア機能を低下させることがわかっています。1)内分泌細胞からのαシヌクレインが腸管神経叢で異常凝集し迷走神経を上行する(αシヌクレイン上行仮説)2)LPSなどの炎症物質の侵入が慢性炎症を引き起こす(慢性神経炎症)など複数の障害が腸内細菌の変化で起こっていると考えています。【研究テーマ】●腸内細菌組成と疾患との関与●腸内細菌対スア物および機能遺伝子による病態との関わり●報告された腸内細菌遺伝子情報の再解析による疾患関連新規細菌、ウィルス の発見の試みキーワード相談に応じられる内容システインを介したチロシンキナーゼ阻害法の検討TAKEDA Kozue 生命健康科学部 理学療法学科准教授武田 湖州恵チロシンキナーゼ活性、細胞がん化の評価上記以外にアレルギー(接触皮膚炎)の研究も行っていますチロシンキナーゼ、RET、がん、システイン、ペプチド がんの主な分子標的療薬であるチロシンキナーゼ阻害剤のほとんどが、活性に必須なATP結合を阻害し作用する。ATP結合部位は多くのキナーゼで構造が似ており、ATP結合阻害剤は本来の標的キナーゼ以外のキナーゼに対しても効果を有する場合がある。また、遺伝子変異などによる薬剤耐性化が問題となっている。こうした問題を解決するため、新規チロシンキナーゼ阻害剤は引き続き求められているが、ATP結合阻害以外の全く作用機序の異なる阻害剤はほとんど報告されていない。受容体型チロシンキナーゼRETの活性型変異は甲状腺がんや肺がんなどに関与しており、治療標的分子として注目されている。これまでに私たちは、RETキナーゼの活性調節にはキナーゼドメインにある特定のシステインが重要であることを示してきた。酸化ストレス等の細胞外ストレスは、システインのSH基に作用し、RETをリガンドが結合したときと同じように二量体化して活性化する。この二量体化に必要なシステインを他のアミノ酸に置換すると基本的なキナーゼ活性が著明に減少する。つまり、キナーゼ活性化において、私たちが見出したシステインは、基本的に重要な役割を持つと考えられる。さらに、この特定のシステイン周辺の配列を持つペプチドが、RETキナーゼ活性を抑制し、細胞のがん化を抑える事を見出した。 これらの結果を踏まえ、RETキナーゼの活性を、これまでの阻害剤にはない新しい機序により制御し、がんの新規分子標的療法を提案することを目指している。【研究テーマ】●ペプチドを用いたRETチロシンキナーゼの阻害●膜透過性ペプチドを用いた分子標的療法の検討生命健康科学部生命健康科学部
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