中部大学研究紹介2024
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62キーワード相談に応じられる内容腎保護作用を有する抗酸化物質の探索UEMURA Kazuhide生命健康科学部 理学療法学科      生命医科学科 兼任准教授 上村 和秀抗酸化作用を有する天然物あるいは天然物由来成分の慢性腎炎に対する効果の評価検証 近年透析治療を必要とする末期腎不全患者は増加の一途をたどっており、わが国の維持透析患者数は2011年に30万人を突破した。透析治療には一人当たり年間数百万円の費用を必要とし、国全体では約1.5兆円もの医療費が投じられている。また、患者の生活の質も著しく制限されることが問題となっている。この問題の解決のためには、末期腎不全の予防、すなわち、その主要な原因疾患である慢性糸球体腎炎の進行を抑えることが重要となる。糸球体腎炎の中でも患者数の多いメサンギウム増殖性腎炎の発症進展には酸化ストレスが関わっていることがよく知られている。      当研究室では、メサンギウム増殖性腎炎の実験動物モデルを用いて抗酸化作用を有する植物由来物質の腎保護作用を現在検討している。これまでの成果として、造影剤の副作用として発症する造影剤腎症に活性酸素の一種が関与すること1)、また、腹膜透析の重篤な副作用である被嚢性腹膜硬化症の進行に酸化ストレスが関与すること2)やカルバゾール関連化合物が抗酸化作用を有すること3)を明らかにしてきている。1) Clin Exp Nephrol. 13(1), 15-24 (2009)2) Nephron Exp. Nephrol. 117(3), e71-81(2011)3) HETEROCYCLES 92(1),120-132 (2016)【研究テーマ】●モデル動物を用いた腎保護作用を有する抗酸化物質の探索●培養細胞を用いた腎保護作用を有する抗酸化物質の探索 腎不全、糸球体腎炎、酸化ストレス、抗酸化物質キーワード相談に応じられる内容NPJ Parkinsons Dis 2023 Lewy小体病に関連する腸内細菌の機能遺伝子および代謝産物の解明MASAAKI Hirayama生命健康科学部 作業療法学科教授 平山 正昭腸内細菌の16sアンプリコン解析、ショットガン解析、腸内細菌の機能遺伝子の同定、細菌産生代謝物の測定、germ-freeマウスを用いた動物モデルLewy小体型認知症、パーキンソン病、腸内細菌社会実装分野神経難病の疾患修飾療法への応用 Lewy小体病(LB)は、レビー小体型認知症(DLB)、パーキンソン病(PD)、レム睡眠行動異常症(iRBD)に分類されます。LBは、神経細胞内のαシヌクレイン線維の異常凝集(レビー小体)を特徴とします。DLBは認知症の約20%を占め、アルツハイマー病についで多い認知症です。幻覚などの陽性症状が社会問題となっています。脳内にレビー小体が出現することで病気が発生するのですがその機序はわかっていません。臨床的にPDは運動症状発現の20年、10年、5年前に便秘、RBD、うつ病を発症することから、消化管から異常なタンパク質が上行することでパーキンソン病が起きる可能性が考えられています。Braakらにより病理学的に異常なαシヌクレイン線維が迷走神経の背側核から始まり、徐々に黒質へ上昇するという画期的な仮説が提唱されています。この観点から、我々は腸内環境がパーキンソン病の病態に関与するとして神経変性疾患と腸内細菌の研究を進めています。現在、我々の研究からこの疾患の共通因子として、腸管粘膜の形成に関わるSCFA産生菌の低下と腸管粘膜を消費するとAkkermanciaの増加は腸管のバリア機能を低下させることがわかっています。1)内分泌細胞からのαシヌクレインが腸管神経叢で異常凝集し迷走神経を上行する(αシヌクレイン上行仮説)2)LPSなどの炎症物質の侵入が慢性炎症を引き起こす(慢性神経炎症)など複数の障害が腸内細菌の変化で起こっていると考えています。【研究テーマ】●腸内細菌組成と疾患との関与●腸内細菌対スア物および機能遺伝子による病態との関わり●報告された腸内細菌遺伝子情報の再解析による疾患関連新規細菌、ウィルス の発見の試み生命健康科学部生命健康科学部

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