中部大学研究紹介2023
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74キーワード相談に応じられる内容黒田清輝《読書》1890-91年、東京国立博物館芸術家村グレー=シュル=ロワン文化を発信した、19世紀フランス芸術家村の研究 ARAYASHIKI Toru 人文学部    民族資料博物館 兼任教授 荒屋鋪 透美術史、文化史、西洋近代美術史、日本近代美術史、フランス近代美術史、芸術交流史、芸術家村の歴史、スウェーデン近代美術史、英米近代絵画史芸術家村、異文化交流、滞在型留学施設 芸術の都パリは、19世紀に美術学校とルーヴル美術館など、都市の文化機能の整備と充実により発展するが、近郊の小村が果たした役割は従来、あまり知られていなかった。私の研究は、その芸術家村のひとつ、グレー=シュル=ロワンに注目し、フランス画家のみならず、英国、アイルランド、日本、アメリカ、スウェーデンなど諸外国からグレーに集った画家、文学者、音楽家の活動と村での異文化交流の様相を調査、研究しながら、自国の文化への影響力の強さを、長期にわたる現地調査から解明することにあった。【研究テーマ】芸術家村へのフィールドワーク芸術家村が形成される要因は、①絵画の主題、モチーフとなる自然環境が整っている。②制作がしやすく長期滞在可能なホテルがある。③英米、北欧、日本など芸術家コロニーを形成する主導的な芸術家の存在などである。●異文化交流の美術史的意義●小説家ロバート・ルイス・スティーヴンスンと英米のコロニー●劇作家ストリンドベリ、画家カール・ラーションと北欧のコロニー●グレーに滞在した画家の黒田清輝、浅井忠が日本近代洋画にもたらしたものキーワード相談に応じられる内容近代国家における文化的アイデンティティの形成と古代表象TAMADA Atsuko  人文学部教授 玉田 敦子 ヨーロッパに「近代国家」が生成する過程において、古典古代の表象は本質的な役割を果たしてきた。近代国家の成立のためには、まず17世紀以来、ギリシア・ラテンの古典をめぐって様々な分野で展開された「近代古代論争」において〈近代〉の優越を示す必要があった。また、近代国家のアイデンティティ形成においては、19世紀以降において各国の帝国主義政策として顕現する国家間の覇権争いが影を落としていた。このためフランスは、ラテン語に換わってフランス語を新たな共通言語とするために国家機関、アカデミー・フランセーズを設立し、イエズス会などの修道会にフランス語による修辞学教育を委ねた。 本研究の目的は、「近代とは何か?」という人文学における最大の課題を見据えた上で、近代国家の形成において古典古代の表象が果たした役割を明らかにすることである。具体的には17世紀終盤にギリシア・ラテンの古典と当代のフランス文学の優劣をめぐって発生した近代古代論争が19世紀に「古代表象と近代意識との間の緊張関係」に発展する過程を手がかりに、以下の4つの軸を据えて考察を進めている。① 近代フランスの形成における近代古代論争② 近代フランスの形成と人文学教育③ 近代父権的家族の形成と国家④ フランス王立アカデミーの研究【近著】『啓蒙思想の百科事典』(分担執筆:項目「修辞学」「書簡」「崇高」)丸善出版、2023年。『はじめて学ぶフランスの歴史と文化』(分担執筆:「修辞学と文学の伝統」)ミネルヴァ書房、2020年。近代フランス文学、思想史、18世紀、修辞学、崇高 1674年にフランス国王歴史編纂官のボワローが仏訳、刊行した『崇高論』。紀元1世紀に書かれたとされる。18世紀フランスにおいて近代的な人文学を構築する基盤となったため、多くの著作が引用していた。独自HP近代フランス思想史、ジェンダー、文学教育、修辞学人文学部人文学部

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