中部大学研究紹介2025
77/94
76キーワード相談に応じられる内容キラルな形態形成の謎の解明と医療への応用 軟体動物でCRISPR/Cas9ゲノム編集に成功KURODA Reiko先端研究センター特定教授黒田 玲子有機・無機・生体物質のキラル分光測定、光学分割、結晶状態での変換、ゲノム編集左右性、結晶、分光、機能性物質、動物の形態形成 結晶や生物が多数の分子から構築されるプロセスをキラリティー(左右性)を介して明らかにするカイロモルフォロジー研究を展開している。研究対象は有機化合物や金属錯体の結晶、蛋白質・ペプチド・DNAが作る膜やゲル、さらには、左右巻型のいる巻貝である。 巻貝研究では、1個の遺伝子をCRISPR/Cas9ゲノム編集でノックアウトするだけで右巻貝が代々左巻になることを実証し、1世紀の間、謎であった巻型決定遺伝子を同定した。全ての真核生物にあるアクチン伸長遺伝子で、左右性だけではなく、癌細胞の転移等も含め細胞の運動・形態に幅広く関与している。メカニズムを分子レベルで追求している。 軟体動物のゲノム編集は難しく、今のところ成功したのは世界で我々だけである。この手法を、巻貝を中間宿主とする重篤なヒト住血吸虫症の制御に向けた研究(非脊椎動物の免疫機構の理解)、および巻貝の特徴を利用してヒトの認知症研究に展開している。 一方、結晶、膜などの凝集状態に内在する巨視的異方性による偽の信号を除き正しいCD(Circular Dichroism)スペクトルを与えるキラル分光装置(UCS)を開発した(特許保持)。UCS-2,3号機は試料を水平に置く設計で、ジェル、粉末結晶等重力の影響を受ける試料の構造変化をリアルタイムに追跡できる。このように、結晶学・分光学・分子生物学・発生生物学と幅広い分野をカバーする。【研究テーマ】●動物の体の左右性決定機構を、巻貝をモデルに解明●巻貝へのゲノム編集で、感染症、認知症を克服 ●結晶状態での多形変換、キラリティーの創製、識別、増幅、転写など●UCSを用いた凝集状態における構造変化の追跡特許独自HPP88参照キーワード相談に応じられる内容COOHNH2COOHNH2COOHH2N社会実装分野ペプチド創薬革新的ペプチド合成YAMAMOTO Hisashi卓越教授山本 尚ペプチドの合成、創薬設計、ハイブリッドマテリアルTwo by Two 法、基質支配反応、触媒、ペプチドの収束型合成 半世紀昔のメリフィールドのペプチド合成は、その独創性から世界を驚かせノーベル賞に輝いた。基本は、不溶性の高分子の活用とカルボン酸活性化剤の組み合わせである。その後半世紀、この技術は様々な持続的イノベーションによりゆっくりと発展してきた。しかし、この手法での合成ペプチドは高価格である。合成が収束的でなく直線的合成である事、ラセミ化異性体と欠落アミノ酸ペプチドの除去精製に時間と莫大な費用が必要なことが挙げられている。●アミド基からアミド基に変換できる反応を発見した。この反応を用いて、 ペプチドからペプチドに変換することに成功した。この新しいTwo by Two 手法で初めて本当のペプチド合成が実現した。●生成するペプチドの親油性(疎水性)を飛躍的に向上させなければなら ない。この目標に向けて、この問題の最終的な解決を目指しスーパー・ シリル基を採用した。● n+l+l+m の4成分合成(n-ペプチド、アミノ酸、アミノ酸、m-ペプチ ド)に成功した。30ペプチド以上の長鎖ペプチドはこの手法がなけれ ば成功は難しい。 ペプチドはアミノ酸だけから構成できるので、「レゴ」のようにできる化合物数は有限である。私どもは、世界で初めての「論理的ペプチド創薬設計戦略」を提供する。ペプチド研究センター研究所・センター等研究所・センター等
元のページ
../index.html#77