中部大学研究紹介2023
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79キーワード相談に応じられる内容危機状況における心理的支援体制の構築WATANABE Motoko学生相談室准教授 渡邉 素子組織内での心理的支援体制構築、危機状況の心理的支援 「心のケア」という言葉が流布し、突然の災害や事件・事故、重篤な疾病など、日常生活において予期せぬ出来事に遭遇して被った心理的な打撃に対して、その回復を被害者個人の自助努力に委ねるだけではなく、社会全体の問題と捉えて支援をしていく必要があるものと一般的認識が変化しつつある。 危機状況に置かれた人への心理的支援は、これまで個人を対象とした臨床での知見が集積されてきた。しかし、支援対象が膨大な数に上るような大規模自然災害や無差別テロ、国際紛争などは、支援も組織的で大がかりなものが必要とされる。 本研究では、従来の心理臨床活動からの知見と危機状況における心理支援実践からの知見の両方向から、危機状況において組織的で円滑な心理的支援を実践するための組織づくりについてのモデル構築を目指している。【研究テーマ】●心理危機状況の分類と支援のあり方について 危機状況における心理的支援の担い手の間で基本的な考え方を共有できる ようにするため、我が国における危機介入や心理支援活動の実践報告を 調査し、危機状況と対応する支援活動のあり方について分類を試みた。●危機状況における心理的支援●学生相談における危機介入時の情報共有モデルの検討支援体制の構築、危機介入 限局的災害型・生活支援・心理教育広域災害型・組織的計画的支援・一次支援者支援インシデント型・ネットワーク型支援・個人心理療法クライシス型・緊急対応・コミュニティ支援生存危機的な被害の範囲大小 狭広支援対象の規模心理危機が生じる状況と支援キーワード相談に応じられる内容量子情報科学による認知過程の研究 量子測定モデルによる意思決定論とAIへの展開OZAWA MasanaoAI数理データサイエンスセンター特任教授 小澤 正直量子情報科学、意思決定論、質問順序効果(QOE)、回答再現効果(RRE) 量子情報科学は、量子物理学と情報科学の境界に位置し、量子コンピュータや量子暗号の基礎理論として急速に進歩しつつある。この新しい分野の成果を人の心の解明に役立てないだろうか。人の心は微妙なもので、聞き方や聞く順序を変えただけで同じ質問に対する回答が変わったり、かと言えば、一度口に出したことは容易く変えないものだったりし、世論調査や広告の効果などに影響を及ぼしている。質問の順序で回答が変わる効果(QOE)は、量子力学の不確定性原理を連想させ、量子力学を応用してこの効果を説明する試みがなされてきた。ところが、QOEを説明する従来の量子モデルでは、同じ質問を後に繰り返した場合、同じ回答をするという効果(RRE)が説明できず、この二つの効果を矛盾なく説明する事は、未解決問題とされてきた。 当研究室では、この問題を量子情報科学における新しい量子測定理論である量子インストルメント理論によって解明し、意思決定に関する社会活動に応用する研究を進めている。【研究テーマ】●世論調査や広告の分野におけるQOEとRREなどの効果の実証●量子インストルメントモデルによるQOEとRREなどの効果の解明●意思決定におけるQOEなどの効果のAIによるシミュレーション●アンケート調査におけるQOEによるバイアスの除去●広告におけるQOEの活用量子情報科学、意思決定、量子インストルメント理論研究所・センター等研究所・センター等

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