2022年3月7日

  • 学術・研究

エキスパートの知識を組み込んだ“AIから学ぶ”教育—医学生や新入社員など多方面での教育に期待—(藤吉弘亘教授、平川翼講師、山下隆義教授ら)

研究成果のポイント

  • AIが獲得した判断根拠から人が学ぶことができる仕組みを実現
  • エキスパートの知識を組み込んだAIから学ぶことで、効果的な人の学習が可能
  • 様々な教育用途に展開可能

発表内容

中部大学工学部ロボット理工学科の藤吉弘亘教授、AI数理データサイエンスセンターの平川翼講師、工学部情報工学科の山下隆義教授らは、医師や熟練技術者などエキスパートの専門知識で性能を高めた教育用の人工知能(AI)から、その判断根拠を学習する教育アプリを開発した。例えば医療画像の疾患判定では、AIがどこを見て疾患と判断したのか分かる技術はこれまでに開発されている。開発した教育アプリ(図1参照)では、学習者がどこに注目して判断するかを指定し、教育アプリのAIが推論したスコアである判定結果を確認する。このスコアが高くなるように判断領域を追加修正してインタラクティブに繰り返すことで学習する(図2参照)。さらに、エキスパートの知識を組み込んだAIから学ぶことで、AIに埋め込まれたエキスパートの判断根拠を学習者が効果的に学習することが可能となる。
実験では眼底疾患の画像データを用意し、エキスパートの知識を組み込んだAIを用いて学習する場合の教育効果を比較した。36人の学生を12人ずつ次の3グループに分けた。

  • グループ1 教育アプリを使わない
  • グループ2 エキスパートの知見を含めないAIの教育アプリを使用
  • グループ3 エキスパートの知見を含めたAIの教育アプリを使用

それぞれのグループの学習前後の疾患場所を見つける点数を比較したところ、グループ3が学習後に高得点(80点以上)を獲得する人数が大幅に増加し、教育アプリを使用しないグループ1や2より2倍増となった。

今回開発したアプリケーションは、極端に計算処理能力の高いパソコンは不要で、学習者が使用する一般的なパソコンにインストールすることで簡単に活用できる。また、実験では、開発したアプリケーションを眼底画像からの疾患判定に適用したが、これに限らず、あらゆる医療分野において医学部生や研修医が患者の画像から疾患を見つけることへの教育に適用が可能である。更に、新人の技術者が欠陥部品を見分ける、農業従事者が作物の育成状況や病害を判断するなど、その他の産業領域での教育への展開も期待される。本成果は、3月10日に電子情報通信学会のパターン認識・メディア理解研究会(PRMU)でオンライン発表する。

この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務の結果得られたものです。

図1 AIが獲得した判断根拠から人が学ぶことができる教育アプリの例

【図1】AIが獲得した判断根拠から人が学ぶことができる教育アプリの例
学習者がどこに注目して判断するかを指定し、教育アプリのAIが推論したスコアである判定結果を確認する。このスコアが高くなるように判断領域を追加修正してインタラクティブに繰り返す。

図2 インタラクティブに学習を進める手順

【図2】インタラクティブに学習を進める手順
適切な領域を追加するとスコアが上昇し、不適切な領域を追加するとスコアが低下する。学習者は、スコアが高くなるようにアテンションマップの追加と削除を繰り返しインタラクティブに学習するため、効率良く教育効果が得られる。

本学の問い合わせ先

研究に関すること
藤吉弘亘 (中部大学 工学部 教授)
E-mail:fujiyoshi[at]isc.chubu.ac.jp ※アドレスの[at]は@に変更してください。
電話:0568-51-9096(研究室直通)

平川翼(中部大学 AI数理データサイエンスセンター 講師)
E-mail:hirakawa[at]isc.chubu.ac.jp ※アドレスの[at]は@に変更してください。

山下隆義 (中部大学 工学部 教授)
E-mail:takayoshi[at]isc.chubu.ac.jp ※アドレスの[at]は@に変更してください。
電話 0568-51-9670(研究室直通)

報道に関すること
中部大学 学園広報部 広報課
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