中部大学

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東日本大震災(2):想定外のこと

【2011年3月31日】学長ブログ

第81号

 3月11日の大地震による被害の全貌はまだつかみ切れていない状況にあります。それは地震による被害、津波による被害、そして東電福島原発による被害の3つの被害が重なっているからでしょう。2つの天災と1つの人災による複合災害です。天災に対しては人類の非力さを反省し、その教訓を蓄積し、今後の再発防止に繋げるため知恵のつくりで報いることになるでしょう。
 一方、人間が創り出した人工物の不具合によって生じた人災に対しては、故障個所を見つけ出して修理すれば済むことだろうと予測されます。しかし、今回の原発事故に対する対処をみていると、全く逆の方向に進んでいるように見えます。処置をするごとに事態を悪化させ、2次、3次の災害を誘発しています。この原因としてはいろいろな要因が複雑に絡み合っているのでしょうが、多分、根本には原発の設計思想や施工規範に重大な過信と自惚れがあったとしか思えません。その過信とは未知に対する謙虚な知性の不足や、現場に対する調査と認識の不足、もっと言えば、生命や財産の尊厳に対する不遜な態度に由来しています。
 とはいっても、原発を構成している個々のパーツは万全を期して安全に作られており、ここには非の打ちようは無いでしょう。それだからといって、装置全体の安全性が確保されていることにはならないし、ましてや特定の自然環境の中に設置された巨大装置の安全性等は、次元の異なる思想、規範ならびに価値観をもって検証し、保障されるべき事項です。このシステム全体の安定性や特定の環境下での人工施設の安全性を合理的に解明し、設計するに足る科学と技術を私たちは持ち合わせていません。今日の科学は、時空を越えて繰り返し起こる現象を認識することに長けており、歴史上1回しか起こらないだろう現象を理解し予測することを最も苦手としています。だから、想定外のこととは、現代科学の及ばない領域のことであり、東北地方太平洋沖大地震のように、千年に一度は起こるだろうことを見誤ることではありません。

     

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