人を幸せにできる管理栄養士
食品栄養科学科・管理栄養科学専攻
佐久間 直緒美
毎日何気なく食べている食事。あまりにも当たり前すぎて、知らない間に終わっていませんか。例えば、夕方に「今朝、食べた物は〇〇と〇〇と飲み物は〇〇です」とすぐに思い出せるでしょうか。1日3回、1年で1095回、20年で21900回、50年で54750回、80年で87600回の食事をどのようにするかで、人生は大きく変わります。
「丈夫な体、豊かな心、忍耐強い精神力を培って夢に向かって頑張ってください!」
これは、私が小学校で勤務していた30年の間、卒業する子供達に送っていたメッセージです。何をするにも、健康第一の上に成り立つものだと考えているからです。また、「丈夫な身体は自分自身で作るもの、あなた次第で、丈夫な身体を作ることができます。」と人を頼らず、その人個人の様々な環境の中でどうやったら行動変容できるかを念頭において教育し、その効果をまとめてきました。
24時間営業の店舗が少なかった昭和時代は、正月も空いている店舗はありませんでした。平安時代から続く日本の食文化の1つである「おせち料理」は、正月の休みの間も食べることができるように腐りにくい調理法の工夫、新年を家族で喜び祝う料理が沢山あります。また日頃休みなく食事の準備をしている家族に、お正月くらいはゆっくり休んで欲しいという意味も含まれています。私も子供の頃は大家族の中で、スーパーがオープンするまでの間、同じおせち料理を文句も言わず食べていました。1月7日に食べる「七草がゆ」が、正月に食べすぎてしまった胃腸を労わる「おかゆ」であることからもその背景が見えてくると思います。
現代は食べ物がいつでも手に入り、好きな時に好きな物を食べられる便利な世の中になりました。一方で、食べる物は少なかった時代は、命を繋ぐために出された物を何でも感謝して食べ、好き嫌いを言うこともできませんでした。現代では食べ物が溢れているため、食品や料理を「選択する」と行動が伴う食生活になっていますが、嗜好や食べやすさ、価格などが優先になり、おろそかになりがちです。これは、生体恒常性が働き、1食分抜いても、1食をお菓子だけにしても、体は大きな変調を起こさないことが理由の1つだと思っています。しかし、ダメージに耐えている人間の体も、長期にわたると取り返しのつかないことになってしまうのです。
このように、便利でおろそかな食の時代が到来するスピードに比較し、健康を維持する食品や料理を選択する教育のスピードが遅く、「生活習慣病」になってしまう方が多くいます。風邪をひいたら薬で治りますが、長期に渡りじんわり罹患した病気は治癒にも長期の時間とお金がかかります。
80年間で87600回食べる食事の基本を健康的な食事にする指導ができるのは管理栄養士です。毎回の食事100%を栄養のことだけ考えて食べる必要はありません。食べたいものを思いっきり食べる日も設定できます。大学の栄養教育では、その人にあった教育方法を学修できます。
イメージ通りの管理栄養士の活躍に加え、新しい発想の管理栄養士誕生に期待
高校生の皆さんへ
管理栄養士のイメージはどのようなものでしょうか。
病院、クリニック、学校、保育園、幼稚園、食堂、研究所、スポーツ事業団などに就業する方が多いかもしれません。このような管理栄養士をイメージする代表的な業界で就業できることは幸せですね。
もう少し広く観てみると生活に密接な「食」はその他の業界にも多く繋がっています。食べ物に携わる仕事であれば、管理栄養士として採用を募集していない企業でも頼りにされる存在になると思います。例えば、食品の営業の業務に就いた場合、ダイレクトに大学の学びが役に立つでしょう。「営業マンの〇〇さんの栄養の話は分かりやすい!○〇さんに聞けばきっとよいアドバイスをしてくれる!」営業マンとして活躍しながら営業スキル講座の講師になれるチャンスもあるでしょうし、新しい栄養営業部を作ってもいいですね。企業にとって大きな利益となることでしょう。
また、一見食べ物や栄養に無関係と思われるような企業でも活躍できることは可能だと思います。例えば、美容に興味がある方は、美容の世界でお肌を作るたんぱく質について専門性を生かすことができますね。「〇〇さんのワンポイントの食事アドバイスでお肌の調子が良くなってきました!〇〇さんの話をまた聞きたい!」とお客様からお声をいただけたら、その企業の宣伝効果大ですね。サプリメントを扱う業界で食事とコラボレーションしたサプリメントの効果的な利用の仕方、食器メーカーで料理を美味しく見せるお皿の色や形、盛り付け方の提案、飲食店で食事中にかけるBGMの種類によって食事の時間が変わっていくことの提案、家具店で睡眠(ベッド)と食事の関係、IT業界で視力を維持する間食を提案し、生産性をあげる・・・自身の身体を管理できるアスリートがいるように、マルチに活躍できる管理栄養士がもっといて良いと思っています。栄養に詳しい芸能人(エンターテーナー)になってもいいですよね。そして、身近な同僚や友人、家族そして自分自身を健康にできることも忘れないで欲しいと思います。
私はこれまでのイメージに加え、もう少し広く観た管理栄養士もこれから世の中に送りだしたいと思っています。人から指令を送られその通りにできるロボットは、これから益々増えていくでしょう。ロボットにはできない人の心を感じ、人を幸せにできる管理栄養士のスキルを中部大学で獲得しませんか。文理医教融合の中部大学では、様々な物の見方が習得できます。新しいあなたの発想(method)を作る、そして提案(suggestion)する楽しさを大学生活の中にとりいれ、充実した時間を一緒に過ごしませんか。