地上および宇宙におけるミュオンに関する基礎と応用に関する教育・研究の推進を目的として、中部大学に「ミュオン理工学研究センター」を設置いたしました。
電子と同じような性質を持ちながら、電子に比べて約200倍の質量を持つミュオンは、絶え間なく地上に降り注いでいます。
ミュオンは20世紀の中頃、宇宙線の中に発見されました。素粒子物理学の幕開けを告げ、物理学の華々しい発展に繋がっていきました。同時に、ミュオンの性質をよく知ることによって、効率よく核融合エネルギーを取り出す可能性も明らかになっています。ミュオンの強い透過力を使って火山の中身をトモグラフィーで観測するような可能性も拓かれました。宇宙に由来するミュオンを見ていれば、磁気嵐などを予測しIT社会を安定的に運用するための基礎にもなります。
20世紀には、電子や光を活用して、エレクトロニクス、フォトニクスというような科学技術が現代文明を大きく進歩させました。今後は、素粒子ミュオンを活用した科学技術「ミュオニクス」が展開する時代をもたらしたいと思います。
本センターが発足した2020年、新型コロナウイルス感染症の大流行が世界的におきて、人・資源・ものの流れが断絶されたり、大学の講義の形が変わったり、社会に大きな変化がもたらされてしまいました。世界は、新型コロナウイルス感染症問題の終息を願いつつ、「新しい生活」を模索しています。人智をもって、より明るい新しい社会を実現する努力を極める必要があります。そのために本センターを中心とした「ミュオニクス」の展開は、来るべき新しい時代で大きな役目を果たすことでしょう。
本センターに皆様の積極的なご支援をお願いいたします。
2020年4月
センター長 武藤 敬