より「訴えかける」手段を求めて ーPCベース授業の功罪ー

お知らせ

    非常勤講師
    表 弘一郎


    「授業づくり」というテーマだが、正直なところ私はこのテーマで何かを語るほどの授業を行っていないように思っている。英語英米文化学科では『ヨーロッパ文化論』と『英米の思想』を担当しているが、毎回反省しきりである。とはいえ一応は行っている授業のちょっとした工夫を述べてみたい。

    授業は、ノートPC備え付けの教室を使用するPCベースのものである。B4両面のハンドアウト(空欄補充方式)を毎回配布して、パワーポイントで解答を提示する。内容の補充は板書で行い、関係する画像や動画を適宜見せている。音楽も聴かせる。映画も見せる。例えば『ヨーロッパ文化論A』では新救貧法施行(1834年)後の貧困対策をざっと説明した上で、救貧院の悲惨な状況を告発する当時のパンフレットを示して、映画『オリバー・ツイスト』を見せて感想文を書いてもらう、といった具合である。ところが毎回このように進行するわけではない。授業内容と画像がうまく連動しなかったり反応が芳しくなかったりと、成功する方が珍しい。

    もちろん、板書中心の授業にも大いにメリットはあると考えている。授業が動的になることによって教員の精神を生き生きと伝えられる点だ。デメリットもあるだろう。もっぱら教員の指導力と学生の想像力に依拠しているために、いずれかに難があると授業の魅力が減じてしまうことだ。同様に、PCベースの授業にもメリットとデメリットがある。画像や動画等によって授業内容をより具体的に伝えられることがメリットだとすれば、デメリットはしばしば学生が受け身になってしまう点だろう。この両方の授業スタイルを「合成」できないか模索しているところである。

    いずれにしても、心掛けているのは学生の顔を覚えることとクラスの雰囲気づくりである。毎回点呼を行って学生とコミュニケーションを図っている。この点ではコミュニケーション能力が高い英語英米文化学科の学生に救われているが、その反面厳格化には失敗している。先日、教育活動特別賞をいただいたが、ほとんど学生の皆さんのおかげと思っている。

    ANTENNA No.106 (2011年10月)掲載

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