多くの人が知らない食材の魅力を発見する
プロフィール
田中守(タナカマモル)先生。和歌山県出身。川崎医療福祉大学大学院 医療技術学研究科修了(博士)。高知県立大学 健康栄養学部助教を経て、2018年に中部大学に着任。現在は応用生物学部 食品栄養科学科 管理栄養科学専攻 准教授。
今年(2025年)単身赴任3年目で愛知県と岡山県での二拠点生活を送る。好きな食べ物はカレー・唐揚げ・高知県で食べるカツオの塩たたき。休日は岡山に帰り、家族との時間を過ごしている。
先生の研究内容
「食事に関して、“おいしさ”と“健康”の両方を追求する研究をしています。食事は生きるために必要不可欠であるとともに、健康を維持する上で欠かすことができません。日常的に摂取でき、かつ地域に根付いた食材の食品機能性(肥満予防、生活習慣病予防、アレルギー予防、免疫力向上など)という新たな付加価値を発見することを目指しています。
例えば東南アジアの一部の地域で食されている食用カンナ(カンナ科の植物)、高知県のハマアザミ(キク科の植物)、春日井市のサボテンなど、多くの人が知らないような食材を見つけ、ゼミ生と共に研究を進める中でその食材の魅力を明らかにできたときの喜びはひとしおで、さらにそれらを学会発表や論文という形で世に発信できたときには、大きなやりがいと達成感があります。
中でも春日井市の名物としても知られるサボテンは、腸内環境を改善させ、免疫機能を向上させる効果があると研究で明らかになりました。そのため、サボテンはいま最も食品機能性に優れていると期待できる植物の一つとして力を入れて研究に取り組んでいます」
食用サボテンの腸内環境改善と免疫機能向上を確認 ─ サボテンの健康食品への需要拡大に期待 ─


研究を始めたきっかけ

「勉強は苦手で体を動かすことが好きな幼少期を過ごしていました。また物心が付いた時から、食べることが好きでした。両親が共働きだったこともあり、小学4年生から料理をし始め、双子の兄と協力して家族に料理を振る舞ったこともあります。
高校生になり、将来の進路を考えた際には、当時、だしを使った料理を好んでいたので、和食の料理人になりたいと考えました。しかし両親の説得もあり、同じ食を扱うプロフェッショナルである管理栄養士を目指すことにしました。その後大学に進学し、3年時に独学で調理師免許を取得し、卒業後に管理栄養士免許を取得しました。
卒業研究のテーマは、食物アレルギーで、卵のアレルゲン性を調理加工によって低下させることでした。納得がいくまで突き詰める性格も相まって、この頃から、私の興味は料理から研究へと変わっていきました。限られた材料から一つのものを作り上げるという点において、研究は料理をする感覚に似ていますが、それに加えて、まだ誰も知らないことを明らかにできることが料理とは違う魅力の一つだと考えています」
岐阜県瑞浪市日吉町で開かれた「ふりかけレシピコンテスト」を企画
「2023年から岐阜県瑞浪市と中部大学が連携活動をしており、その第2弾として、瑞浪市日吉町から『新たな特産品を開発したい』と依頼を受け、ふりかけレシピコンテストを企画しました。これには、学生の斬新なアイデアを期待しつつ、地域活動を通して座学では学ぶことができない経験をしてもらいたい、またコンテスト形式にすることでより楽しく企画に取り組んでほしいと考えたことが背景にあります。レシピ考案にあたり、瑞浪市の補助金をいただき、ふりかけについて学ぶため学生たちと40種類を超えるさまざまなタイプの市販のふりかけを味見するなどして調べました。瑞浪市らしさを取り入れたふりかけは、特産品のシイタケやマコモの葉といったブランド食材を使ったり、市内で多く出土される化石をかたどった食材を盛り込んだりすることで、味はもちろん見た目でも楽しめる出来栄えとなりました。最終的に集まったふりかけレシピを『アイデアレシピBOOK』として完成させることができました。
“特産品のふりかけを作る”から始まった企画でしたが、結果的に学生たちにとって良い経験になったと感じています。地域のことを知るための調査から始まり、レシピ完成まで試行錯誤する大変さ、『アイデアレシピBOOK』という一つの完成品を作り上げる達成感など学生にとってプラスに働いた要素が盛りだくさんだったのではないでしょうか」



先生の学生時代
「学部生の頃は連日、居酒屋でのアルバイトに励んでいました。もしかしたら勉強よりもアルバイトの方が主になっていたかもしれません(笑)。ただそのおかげで、色々な食材の知識や調理技術が身に付いたほか、老若男女問わずどのような人とも話せるコミュニケーション能力を養うことができました。また、よくバイクに乗って中国・四国・近畿地方を旅していました。
打って変わって大学院の5年間は、朝から夜中まで研究漬けの毎日でした。良いこともあれば、苦労することも多々ありましたが、研究者としての土台を作る貴重な時間だったと思っています」


メッセージ

「大学時代は、将来を見据えて自分を成長させる貴重な時間です。目の前のことだけにとらわれず、失敗を恐れずにさまざまなことに挑戦してください。そのすべてが、きっと自分の糧になり、未来の選択肢を広げてくれるはずです。また、夢を持ってください。そして、その夢を実現するために、できるだけ具体的なステップを設定していきましょう。小さな一歩の積み重ねが、やがて大きな成果に繋がります」