2025年8月20日

  • 教員

理工学部 AIロボティクス学科 イ ジェリョン 先生

イ先生メイン

困っている人たちを救うロボットを開発したい

プロフィール

イ ジェリョン先生。韓国・プサン(釜山)出身。名古屋大学大学院 工学研究科 機械理工学専攻博士後期課程修了。博士(工学)。2009年に留学生として来日。2014年に中部大学に着任。現在は理工学部 AIロボティクス学科 准教授。

来日するまでは、プサンのほか、チャンウォン(昌原)・ウルサン(蔚山)・ソウル・インチョン(仁川)といった都市を転々としてきた。そのため現在住んでいる名古屋市が人生で最も長く連続して住んでいる都市となった。

韓国の好きな食べ物はキムチで、いつも食べていたキムチがコロナ禍で取り寄せられなかった時は、夫婦で落胆していたという。

趣味は流行によってその都度増えていき、現在はランニングにはまっている。水泳や山登りも好き。

先生の研究内容

研究で扱うロボットたち
             先生の研究で扱うロボットたち

「発達障害のある子どもや認知症のお年寄りのように、周りの人とうまくコミュニケーションをとることが難しい人を助けるAIロボットの研究をしています。例えば、自閉症の子どもは、言葉や表情で気持ちを伝えるのが苦手なことがあります。そういった子どもたちには、遊びを通じてコミュニケーションの練習をする療法が有効です。子どもの遊び相手にロボットを使うことで、人が相手をする時よりも心を開きやすくなるだけでなく、体の動きや表情、話している内容などを読み取ることができます。さらに集めた情報には、心拍や皮膚の温度といった生体情報なども読み取ることができ、集中しているか、楽しんでいるかなどの感情の状態を知ることができます。つまり、相手の気持ちを読み取り、その人に合った方法で適切な支援をしてくれる賢いロボットを作ることが私の研究です」 

研究を始めたきっかけ

イ先生お話し中

「子どもの頃から、人を助ける仕事がしたいと思っていました。大学生の時には、子ども病院で子どもたちと遊ぶボランティアや、貧困で苦しむ人のために家を建てて提供する取り組み、子どもたちが国際交流するイベントでの通訳など、さまざまな活動に参加しました。そうした経験を通じて、『直接誰かを助ける仕事』だけでなく、『自分が学んだことを生かして社会に貢献すること』にもチャレンジしてみたいと思うようになりました。当時は軍用ロボットに関する研究をしていましたが、社会貢献につながるロボットに関する学びを深めたいと思い、日本の大学院に進学し、福祉ロボットについて学べる研究室に入りました。そこから自ずと、困っている人を支えるロボットの研究に取り組むようになりました 」

自閉症の子どもたちのためのサマーキャンプに参加しロボットを活用

「大学院生の頃からコロナ禍となるまでほぼ毎年、愛知県自閉症協会が主催する自閉症の子どもたちのためのサマーキャンプに参加していました。岐阜県中津川市の山中で数日間、子どもたちと一緒に過ごし、食事を作ったり、水遊びをしたり、花火を楽しんだりして交流を深めることを目的としたキャンプです。キャンプには、自分が開発したロボットも持って行って、子どもたちが触ったり遊んだりできるようにしていました。学生の頃は毎年一人で参加していましたが、中部大学に赴任してからは研究室の学生たちと一緒に参加するようになりました。毎年ロボットを持って参加しているうちに、私のことをロボットを持ってくる人だと認識してもらえるようになったのも良い思い出です。複数のロボットを使って、人の代わりにロボットが朝の体操をリードするようにプログラムして、子どもたちや保護者、スタッフ全員でロボットを見ながら朝の体操を行うというチャレンジもしてみました。山の中で、ロボット2台を囲んで大勢の人たちが一緒に体操をする光景は、ロボットを研究する立場としてとても興味深く、不思議で心に残る体験でした。子どもたちはロボットにほとんど抵抗を示す様子もなく、興味を持ってくれていたのがまたうれしく思いました 」

ロボット体操2
サマーキャンプの様子
ロボット体操1
ロボットが体操の手本に

先生の学生時代

「学部時代の私は、世の中のいろいろなことに興味を持っていました。当時、機械工学を専攻していましたが、他の分野の学問や、そこでどのような人たちが学んでいるのかにも関心があり、経済やメディアに関する授業を受けたこともありました。自分にとって馴染みのない学問は難しいと感じることもありましたが、全く異なる分野の視点から見る世界は、とても新鮮で面白かったです。大学院時代は、下宿先や大学内でさまざまな国から来た留学生たちと知り合うことができ、自分の視野が広くなりました。一緒に日本語の授業を受けたり、山登りやスノーボードに行ったり、それぞれ母国の料理を作って食べるなどして、国際交流を楽しみながら、さまざまな経験を積みました」

イ先生 学生時代
大学院生時代のイ先生

イ先生 学生時代
留学生仲間との一枚

メッセージ

イ先生プロフィール

「毎年、入学式で学生たちに必ず伝えていることがあります。それは、『大学生は、一般的に学生生活の最終段階を過ごすのだから、自分は何が好きなのか、どのように生きていきたいのかをたくさん考え、たくさん経験してほしい』ということです。もちろん、基本的には学業にしっかり取り組みながら、という前提での話です。学科が決まったからといって、自分の進む道がすべて決まってしまったと考える学生も多いですが、私はそうではないと思います。大学では、世の中のさまざまな分野を経験し、練習できる場です。自ら考え、積極的に経験してください。それが、社会に出てから充実し、幸せに生きるための大きな土台になるはずです」

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