2023年度日本線虫学会第30回大会(法政大学小金井キャンパス)が2023年9月6日(水曜日)、7日(木曜日)の日程で開催され、応用生物学研究科博士前期課程1年生の杉山大騎さんが以下の演題で発表し「学生優秀発表賞」を受賞しました。
杉山大騎、長谷川浩一
昆虫病原性線虫Steinernema monticolum KHA701の共生細菌叢および殺線虫活性評価
Microbiota and insecticidal potential of symbiotic bacteria in the entomopathogenic nematode Steinernema monticolum KHA701
昆虫病原性線虫(Entomopathogenic Nematode, EPNと略す)は、自由生活性の祖先種が進化の過程で特定の毒素生産細菌と共生することにより、節足動物に感染・殺虫して餌として利用する能力を獲得したと考えられています。各種EPNに共生する細菌は主に1種であると言われてきましたが、岐阜県恵那市の森林土壌から採集したEPN、Steinernema monticolum KHA701株には平均34種類の細菌種が共生していることを発見しました。既知種と比較してもS. monticolum KHA701株自体の殺虫力が高く、殺虫スペクトラムがとても広いこと、共生する細菌種はそれぞれ殺虫活性が高いことが示され、本線虫株は多くの細菌と共生することで殺虫力を高め、そしてより幅広い昆虫を利用できるようになったと考察しました。
線虫と細菌の共生進化や殺虫メカニズムの解明といった基礎研究の新たな展開が示されたポイントと、線虫と細菌の組み合わせを変えながら目的の害虫を効果的に駆除する「Programmable Biopesticide:プログラム可能な生物農薬」の開発につながるポイントも評価され、今回の受賞対象となりました。
