中部大学で研究に従事する皆様へ
生成AI(Chat GPTなど)は日々改良が重ねられ、社会に幅広い影響を与えており研究も例外ではありません。研究において適切に生成AIを活用することが求められますが、一方で生成AIの利用には課題も含まれており、本学で研究に従事する皆様が心得ておくべきことを「研究活動における生成AIの利用とリスク回避に関する基本方針」として以下のとおりまとめました。
研究活動における生成AIの利用について以下をご理解いただくよう、よろしくお願いいたします。
研究活動における生成AIの利用とリスク回避に関する基本方針
2023年9月20日
中部大学学長 竹内芳美
中部大学は、教育と研究、社会貢献を柱として、大きく変動する現代社会に不断に対応しつつ、「不言実行、あてになる人間」を育成するとともに、学術文化の進展に寄与することを目的としている。
ChatGPTに代表される文章や画像、音声を自動的に作り出す生成人工知能(生成AI)*は、教育や研究、行政、産業等のさまざまな場において社会に大きな変革をもたらしつつある。研究活動においては、学術論文や学術書等の素案作成をはじめ広く利用される可能性も高く、大きなポテンシャルを秘めている。しかし、利用に当たっては、生成AIがもたらすリスクに最大限の注意を払い、リスクを回避することが不可欠となる。一方、生成AIそのものの開発や次世代システムの構築等を研究対象とする場合にも同様の注意が必要である。なお、この基本方針は、生成AIの技術的進展と社会的影響に注意を払いつつ、必要に応じて見直しを行うものとする。
(1)生成AIの利用に伴うリスクについて特に注意を要する研究活動
■ 以下の作成・制作
・ 学術論文(原著論文、解説・総説)
・ 学術書(専門書、教科書)
・ 学位論文
・ 一般向けの著作
・ 研究成果を用いた特許出願関連書類
・ その他、研究費獲得の申請書、学術論文審査書等を含む学術研究に関わる著作物
(2)生成AIを利用することに伴うリスクとそれへの対応について
■ 著作権と責任
生成AIは、オリジナルな文章、画像、音声を利用して、新たな文章、画像、音声などを作り出す能力をもっている。これら生成AIによる生成物について、生成AIを利用した人が、自らが独自に作成したものとして公表し、著作権を主張することは認められない。実際の実験や調査に基づくオリジナルな結果やデータではなく、生成AIが生成した文章、図表、画像、音声を論文や著作物等に用いることは、研究倫理の観点から許されず、科学の基盤を崩壊させることにもつながりかねない。また、特許出願関連書類の作成にあたって生成AIを用いた場合は、機密情報が外部に漏出したと判断され新規性を喪失するおそれがある。
生成AIを論文、著書等の素案作成に利用する場合が想定されるが、生成AIが生成した文章、画像等が最終的に論文等に含まれることは認められない。意図せずに生成AI生成物が含まれたとしても、著作者がその責任を負うことを認識する必要がある。したがって、論文等の素案作成段階で生成AIを利用する場合は、最終的にその削除を確認しなければならない。実験記録等のオリジナルデータを保管することはいうまでもない。
■ 生成AIの開発等に関わる研究
生成AIの開発に関する研究において、生成AIの生成物を引用・記載する必要がある場合には、その旨を明記することが必須である。生成AIの開発と技術的応用に携わる場合には、生成AIのメリットとリスクを熟知し、それらをシステム連結する場合でも、研究者が明確かつ確実にシステムを制御できるようにすることが不可欠である。
用語説明
生成人工知能(生成AI):人やセンサーがコンピューターに入力した文字や映像、音声をもとに文章や画像、動画を自動的に生成して出力する人工知能(AI)の総称。米オープンAIが開発した文章生成AIの「ChatGPT」や英スタビリティーAIが開発した画像生成AIの「Stable Diffusion」がよく知られる。