2024年2月20日

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『日本食品衛生学会ブロックイベント 第4回東海・北陸公開講演会』が開催されました

2024年2月10日(土曜日)13時30分から中部大学不言実行館1階アクティブホールにて、『日本食品衛生学会ブロックイベント第4回東海・北陸公開講演会』が開催されました。本講演会は中部大学との共催となっており、本学が進める『JST次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)』の事業の一環でもありました。
本講演では、最初に日本食品衛生学会東海・北陸ブロックの理事である名古屋市衛生研究所の大野浩之先生より開会の挨拶を頂き、講演1として一般財団法人食品分析開発センターSUNATECの菊川浩史先生にご登壇頂き、『食のグローバル化時代における食品分析の役割』と題してお話を頂きました。2006年に食品中の残留農薬等の基準としてポジティブリスト制度が導入され、わが国にも国際基準が導入されましたが、当時欧米の基準をそのまま適用していたものを最近は見直す取り組みがされており、それぞれの化合物の安全性に応じた基準値が設定されつつあるとの情報を紹介されました。また、変わりゆく世界情勢を受けて、食品流通も変動しており、輸入食品のカビ毒などにも注意が必要であること、さらには、食品中のペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)に関しても、最近は注目が集まっているとのことで、最近の食品安全に関する情報提供をわかりやすくご説明頂きました。

開会の挨拶をする大野理事
講演される菊川先生

講演2では国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所国立健康・栄養研究所の千葉剛先生に『健康食品に対する誤解 ~「食品だから安全」を信じて大丈夫?~』と題したご講演を頂きました。先生の独自の調査結果をもとに、年齢と性別による健康食品の摂取動機の傾向や、摂取量と生体への影響についての関係についてわかりやすくご説明頂きました。その上で、過剰摂取や悪質製品、不適切な利用などが健康被害に繋がるとして具体的な事例をご紹介頂きました。また、健康食品の謳い文句には注意が必要であることや、バランスの良い食生活をされている方に健康食品は必要ないこと、健康食品と医薬品との併用に関する注意など、実生活で注意しなければならない点が実に多いことに気付かされるご講演でした。

登壇される千葉先生と座長の増田先生(静岡県大)

最後に、石川県立大学生物資源環境学部食品科学科の中口義次先生が『グローバル時代にみるビブリオ感染症~腸炎ビブリオの流行史と変容する東南アジアでの生食のリスク』と題してご講演をして頂きました。「人類を最も葬ってきたのは感染症である」としてペスト、コレラ、スペイン風邪、COVID-19と約100年ごとに発生するパンデミックの歴史をご紹介頂いた後に、1950年に日本で最初に発見された腸炎ビブリオ感染症(食中毒)でも1996年にパンデミックがあったことをご説明頂いた。この病原菌はほとんどの魚介類が持っているものの、その感染メカニズムを理解し、適切に対処すれば被害に遭うことはなく、現に魚介類の低温管理が徹底している日本では、刺身や寿司などで魚介類を生で食べることができている現状をご紹介頂いた。一方、日本食が世界的なブームになる中、魚介類を生で提供する飲食店が世界中で増えている。東南アジアなど温暖な地域で先生が現地調査されたところ、温度管理がなされておらず腸炎ビブリオの病原菌が高い頻度で検出された調査結果をお話し頂いた。「愚者は経験に学び、賢人は歴史に学ぶ」というドイツのビスマルク宰相の言葉を紹介しながら、食品衛生指導の重要さとグローバリゼーションがますます進む現代における注意点をわかりやすくご教授頂きました。

講演される中口先生

講演会後、お茶とお菓子を用意して、会場を出た館内スペースで交流会の時間を30分ほど設けました。東京や大阪からも来場者があり、食品メーカー、分析会社、大学や衛生研究所の研究者などが交流する中、自作した名刺を持ったスーツ姿の学生たちが企業や衛生研究所の方々に挨拶をする姿も見られました。当日の参加者は119名と盛会となりました。年度末の忙しい中、ご講演頂いた講師の先生方、ご参加頂いた皆様、そして運営を手伝ってくれた学会活性化委員の先生方と研究室の学生達に心から感謝致します。
 堤内 要 (応用生物化学科)