
こんにちは!リマ・ハルメシです。
私は、北アフリカにあるチュニジアのESSTT(Ecole Supérieure des Sciences et Techniques de Tunis)を2012年に卒業してから日本に来ました。当時のチュニジアの他の子どもたちと同様、幼少時からアラビア語イスラム社会向けにローカライズされたアニメを見て育ちました(他に子ども向け番組はなかった!)。子どもの頃のあだ名は「まる子」。敬虔なイスラム教徒にして、筋金入りの「アニヲタ」でもあります。アニメを通して接した日本文化に憧れて、2013年1月、ついに来日の夢を叶えました。学部時代の専攻は電気・電子工学だったのですが、大学院では、趣味と実益を兼ねて(?)アラビア語イスラム文化と日本文化の相互理解を目指して、アニメのアラビア語版へのローカリゼーションを研究しました。
具体的には、アラビア語TV放送版の日本製アニメーション(=アニメ)と日本国内放送向けのオリジナル版の比較検討を通じて、そのローカリゼーションの実態を明らかにした上で、背後にある諸要因を探ること、そして、そのようなアラビア語版のアニメに対するムスリム視聴者の需要状況を明らかにすることが目的でした。
アラビア語の歴代アニメ人気ランキングサイトの上位TVアニメ番組(アラビア語吹き替え版)10本の第1クール(各13話)と、それらに対応するオリジナル日本語版を比較して改変箇所を徹底的に分析した結果、改変は視覚要素・言語要素・聴覚要素・物語要素にわたり、改変理由としては、宗教的規範・文化的規範・道徳的規範・教育的目的・言語文化的障壁によるものが確認されました。
例えば、視覚要素においては、イスラムの宗教的規範による改変として、女性の肌の露出(下図参照)、飲酒、偶像(拝礼)、異教の儀式(葬式など)・シンボル(十字架など)、お辞儀(コーランでは神への尊崇を示す最上の行為)の場面などが削除されている例が非常にたくさん見られました。

これでもかというほどアニメを視聴し(これは楽しかった!)、たくさん文献も読み(これは大変だった!)、研究を進めた結果、修士論文は無事審査を通過し(指導教授の柳谷先生に感謝!)、2015年3月にめでたく修士の学位を取得しました。




博士前期課程修了後は、小学校の外国語指導助手や英会話学校の講師などを行ないながら、アラビア語、フランス語、英語、日本語のマルチリンガルの能力を活かせる仕事を目指して就職活動しました。一般常識の筆記試験対策で、泣きながら漢字もたくさん覚えました。その結果、現在、名古屋市にある日本メナード化粧品株式会社の海外事業部で、アジアやヨーロッパの現地法人や販売店に対する営業や指導などを行なっています。大学院時代に培った粘り強い調査・分析力や論理的・説得的言語運用能力は、世界のどこに行っても強い武器となっています。