2022年4月28日

  • 教員

国際関係学部 国際学科 中山紀子先生

中山先生

文化人類学が専門
トルコにおけるイスラーム、世俗主義、女性の相互関係の研究

プロフィール

中山 紀子(ナカヤマ ノリコ)先生。総合研究大学院大学文化科学研究科修了。博士(文学)(総合研究大学院大学)。京都文教大学人間学部文化人類学科助手を経て、1999年4月中部大学国際関係学部国際文化学科に着任。国際学科教授。

大分県生まれ。ご主人と娘さんの3人家族。毎年お盆休みとお正月には大分にある自身の実家に娘さんと帰省することを楽しみにしている。好きな食べ物は、新鮮な魚のお刺身。

中山先生を Close Up!

先生の研究内容

「トルコを対象地域とした文化人類学を研究しています。トルコにあるボアズィチ大学に留学してトルコ語を学び、その後トルコのある村で1年間フィールドワークをしました。その経験を『農村女性からみたトルコの「近代化」―世俗主義、イスラーム、女性の相互関係―』というタイトルで博士論文にしました。トルコの女性といえば、イスラーム教徒であることから身体全体を黒い布で覆っていると思われがちですが、世俗主義(政教分離)を最初に掲げた国であるトルコでは、イスラーム教徒であっても髪の毛すら隠していない西洋的な服装の女性たちがたくさんいます。黒い布で全身を覆う、イスラーム教徒の女性だと一見分かりやすいイメージと異なり、現実には女性たちは多様で重層的なのです。例えば髪の毛を隠していない女性たちの中には、世俗主義者だけでなく女性の権利を主張するフェミニストたちがいたり、髪の毛を隠している女性たちの中にはイスラームの理念を忠実に守ろうとするイスラーム主義者や、生活の一部として自然にスカーフをかぶる村の女性たちがいたりするのです。これまで当たり前だと思っていたイメージを覆す事実を発見できることが、この研究の魅力です」

トルコでの恩人

トルコでお世話になったご夫婦と京都で(中央が中山先生)

村

フィールドワークを行った村

研究を始めたきっかけ

「大学3年生の時に履修した『トルコ語』の授業で出会った仲間たちとの交流が大変面白かったことがきっかけです。トルコ映画が上映されると聞けば一緒に見に行ったり、トルコ料理のレストランが開店したとなったらみんなで食べに行ったりしました。そして大学4年になる前の春休みに、仲間の一人とトルコへ2カ月間旅行に行ったことが現在の研究を始める決め手になりました。当時イスラーム教徒といえば厳しく怖い人たち、男尊女卑の考えの人たちばかりだと思っていたのですが全く違い、旅の途中で出会ったトルコ人たちは親切で明るく、笑いに満ちていました。ある人がトルコは『関西系イスラーム』だと言ったそうですが、まさにその通りでした。それではなぜ私はトルコに行く前にはイスラームを怖い宗教だと思っていたのでしょうか。おそらくメディアやニュースなどで、恐ろしい事件ばかりが取り上げられていたからだと思います。では多くの人が憧れるアメリカやヨーロッパは、本当にすばらしいことばかりなのでしょうか。良い国、悪い国があると思われていること、それが欧米とそれ以外となっていること、この違和感にトルコ旅行を通して気付き、それがなぜなのかを知りたいと思うことが研究につながりました」

中山先生
著書

先生の著書と先生が携わった本の一部。下段右から2番目『イスラームの性と俗―トルコ農村女性の民族誌』(アカデミア出版会)3番目がそのトルコ語版。

先生の学生時代

「大学2年の後期から大学が大阪市市内(上本町)から大阪府近郊(箕面市)に移転したことに伴い、これまで男子寮しかなかったところに女子寮が新しく建てられました。女子寮の最初の集まりで寮委員への立候補にうっかり手を挙げ、寮長になってしまいました。大学との交渉をしたり、公衆電話が2つしかなかったため電話当番を決めて不公平がないようにしたりなどけっこう大変でしたが、できたばかりの寮での生活は新鮮で仲間との交流は楽しかったです。寮は4階建てで、真ん中に階段をはさんで各階に個室が8室と共有の台所とトイレがあるユニットが2つある造りになっており、当時64人の女子学生が住んでいました。そのころすでに学生運動は下火になっていましたが、全室個室であることや集会所は小さめで寮生全員が集まれない広さだったことなどを考えると、学生間の分断政策が図られていたのだろうと思います。そんな寮生活の中で、ある日寮の各ユニットに新しく鍵をつける話が大学側からあり、寮委員会として寮は一体なのだからすべてのユニットは同じ鍵にすべきだと主張したことがありました。まだ大学との話がついていない中、鍵の取り付け業者が来たので、まだ交渉途中だから待ってほしいと頼んだところ、ああそうかと言ってその日は帰ってくれたことがありました。最終的には大学の主張する8つ別々の鍵がつけられたのですが、あの時業者の方が私たちの主張を聞いてくれたことで、発言したら何かが変わることもあるのだという大人へのささやかな信頼につながったと思います」

コクサイ歳時記

「国際関係学部では、20号館1階にあるラウンジを継続的に活用しようと、大きなツリーを購入し昨年12月にはクリスマスパーティーを開きました。今年の1月には中国の旧正月の飾りつけも行いました。今後も、国際関係学部らしく世界の行事を『コクサイ歳時記』として続けていけたらと考えています。キリストの復活を祝うイースターや、お釈迦様の誕生を祝う花まつり、二十四節気の清明の節に行う清明祭など、さまざまな行事を行う予定です」

クリスマス会

クリスマス会

旧正月

旧正月の飾りつけ

セージ

中山先生メッセージ

「今の生活はいろいろな事が重なって、たまたまこのような生活になったのであって、他の生活もあり得たかもしれないと思えるようになりましょう。いつでも、どこにでも通用する『当たり前』『普通』『常識』は実は存在しないのです。他者との出会いから、いろいろな考え方があっても良いと気付いて、自分の世界を広げていってください」

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