2022年12月15日

  • 教員

生命健康科学部 生命医科学科 川本善之 先生

川本先生メイン

生体防御学、分子免疫学が専門
天然物・食品成分によるがん炎症生活習慣病アレルギー予防、細胞内シグナル伝達修飾に関する研究

プロフィール

川本善之(カワモト ヨシユキ)先生。名古屋大学大学院医学系研究科博士後期課程修了。博士(医学)。東京理科大学の博士研究員を経て、2005年に中部大学着任。生命健康科学部 生命医科学科 准教授。

愛知県生まれ。趣味はサウナで瞑想(めいそう)、カフェでゆったり過ごすこと。イカスミの研究をしているが、もともとイカ料理全般が大好き。おすすめのイカ料理はイカとホタテの海鮮鍋。

川本先生を Close Up!

先生の研究内容

川本先生お話中

「皆さん『メラニン』という言葉をご存じだと思います。例えば、日焼けをして皮膚が黒くなるのは、皮膚表面でメラニンがたくさん作られるからです。これは太陽光に含まれる有害な紫外線による遺伝子の損傷をメラニンが防ごうとして天然の日傘のような働きをしてくれているからです。私は、このメラニンに未知の有益な働きがあるのではないかと考え、研究を進めています。具体的には、アレルギー反応に重要な働きを担うマスト細胞という免疫細胞の活性化を抑制したり、がん細胞の異常増殖を強く抑制することを見いだして、そのメカニズムの解明や応用法の開発などについて調べています。メラニンには他にも脂肪細胞の分化を抑える働きがあるなど、次々と興味深い機能が明らかになっています。メラニンは研究室で化学合成させて研究に利用していますが、実はイカスミにも大量の天然メラニンが含まれているため、イカスミも実験に利用しています」

川本先生の研究内容

研究を始めたきっかけ

「幼少期から『生と死』やがんなどの『病気』に興味がある子どもでした。医師は病気を治療しますが、私は健康維持や病気(特にがんやアレルギー)の予防に興味があり、基礎研究者の道を志しました。ある時、マウスを使ってアレルギー予防に関わる研究を進めていたところ、皮膚のメラニン量が多い特別な黒いマウスは、アレルギー反応が弱いことに気がつきました。マウスもアレルゲンを投与すると、くしゃみをしたり鼻をかいたりするのですが、その黒いマウスはふつうのマウスに比べてくしゃみなどの回数が少なかったのです。これをきっかけに、メラニンによるアレルギー抑制効果を調べてみることにしました。通常、メラニンは皮膚の細胞で作られてからは、体内の奥へ入り込むことはなく、いずれ体の外へ排出されていきます。具体的には、メラニン産生細胞であるメラノサイトで作られたメラニンは、角化細胞と呼ばれる細胞に受け渡され、徐々に皮膚表面へ押し上げられます。そのため、これまでメラニンそのものを細胞や個体に投与して、その影響や効果を見る研究はほとんど行われてきませんでした。また、メラニンが水に溶けにくいことも理由の一つです。試行錯誤の末、水に素早く溶ける人工メラニンの化学合成に成功し、培養細胞を使って実験を行ったところ、マスト細胞の活性化やがん細胞の増殖が強力に抑えられる現象が確認できました」

2019年にリリースされた「イカスミにアレルギー抑制効果を発見」について

「花粉症などのアレルギー症状は、粘膜に多くあるマスト細胞が過剰に反応することが原因で起こります。花粉症の場合、長年花粉にさらされると、マスト細胞の表面に、花粉と反応する抗体が付着します。この状態ではアレルギー反応はまだ起こりませんが、その後、花粉が侵入してこの抗体が花粉をキャッチすると、細胞が活性化し、ヒスタミンなどのアレルギー物質を放出します。この刺激により、くしゃみや鼻水が出ます。私たちの研究グループは、メラニンが抗体をキャッチしたマスト細胞に対して覆うように作用し、花粉などのアレルゲンが結合できないように作用することを見いだしました。この研究発表をリリース後、『すぐにでも治療に使えるような薬にしてほしい』という意見が出たのですが、まだヒトのレベルでは検証できていないことや、イカスミ自体がアレルゲンのため、イカアレルギーの方には適応が難しいであろうといったことなど、解決すべき問題はまだ多く残されています」

先生の学生時代

川本先生学生時代
合唱団サークル1年生時(前列右から2人目が川本先生)

「学生時代はいろいろな業界を経験してみたいと思い、アルバイトをたくさんしました。例えば、大相撲名古屋場所のアルバイトでは、会場づくりの裏側を見ることができ、興味深かったです。時給680円のファストフード店でつらい修行のような経験もしましたが、幸い仲間に恵まれ、長く続けることができました。大学では混声合唱団サークルに所属し、没頭していました。気軽な気持ちで始めたのですが、サークル内部が一つの会社のような組織になっていて驚きました。単に歌唱力向上の練習だけではなく、企画運営会議、予算審議、指揮者や各パートリーダーの選挙、合宿練習など、全て学生たちの手で運営していました。先輩後輩の立場を超えて悩みを聞いたり聞いてもらったり、少し羽目を外して反省したり…。真剣だからこその衝突もあったりと、喜怒哀楽の多い充実した日々でした」

メッセージ

川本先生プロフィール

「学生時代は、思考力や教養をトータルに幅広く成長させられる貴重なときです。どれだけ知識を吸収して深く考え、自分と向き合い、他人の考え方を知り、行動し経験したか、その量と質により、今後訪れるであろう困難に慌てず焦らず乗り越えていけるのではないかと思います。学生時代はあっという間に過ぎていきます。いまこの瞬間、人間としての器を一回りも二回りも大きくするための知的な活動を、貪欲に追究してほしいと思います。信頼され頼られる人間へと、着実に歩んでいってください」

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