2021年9月1日

  • 教員

創造的リベラルアーツセンター 鈴木順子先生

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フランス思想・哲学、フランス地域文化が専門
シモーヌ・ヴェイユやリベラルアーツ教育の研究

プロフィール

鈴木 順子(スズキ ジュンコ)先生。東京大学大学院 総合文化研究科 地域文化研究博士課程修了。博士(学術)。フランス・トゥール大学人文科学部修士課程、ポワティエ大学人文科学部DEA(博士)課程に留学。ポワティエ大学DEA(博士論文提出資格)(哲学史)。非常勤講師として東京女子大学、明治学院大学、東京大学に。放送大学、NHK文化センターでの社会人教育などを経て、2020年10月中部大学に着任。人間力創成総合教育センター語学教育プログラム(外国語)主任、創造的リベラルアーツセンター准教授。

東京都生まれ。休日は、家族や友人と映画を観たり、コンサートや美術館に出掛ける。好きな食べ物は、果物とヨーグルトなど甘酸っぱいものやアユや春野菜などほろ苦いものですが、実は大切な人と一緒に食べるならなんでも好き。

鈴木先生を Close Up!

先生の研究内容

「フランスの女性哲学者シモーヌ・ヴェイユの研究とフランス地域文化研究、リベラルアーツ教育研究を行っています。シモーヌ・ヴェイユは20世紀前半にフランスで活動した優れた哲学者ですが、その独自の思想の魅力や、他者への共感にあふれる温かい心と行動力に惹かれ続けています。さらに、彼女が生きた時代や地域について深く知ることで理解を深め、その生涯や思想を研究者として世に紹介することに大きなやりがいを感じます。また、21世紀に相応しいリベラルアーツ教育についても研究しています。これからは、学生が受け身で聞いて知識量を増やすことを目的とする授業だけでなく、学生自らが必要な知識を選び、ディスカッションを通して他者の異なる考えを理解・許容し、自分の意見をどう表現し解決していくかを学べる授業も必要になります。その研究をしています」

著書

先生の著書。下段左から:『シモーヌ・ヴェイユ 「犠牲」の思想』(藤原書店)、『シモーヌ・ヴェイユ』(水声社)、『CAHIERS SIMONE WEIL』。その他、先生が携わった著書。

今の研究を始めたきっかけ

鈴木順子先生1

「本を読むこと、文章を書くこと、人に何かを伝えることが好きで、高校生の頃から将来好きな研究をして文章を書き、教員になって人に教えたいと思っていました。修士課程に進む時、何をテーマに研究するかについてすぐには決まらず、ふと高校生の頃に読んだシモーヌ・ヴェイユの新書を思い出し、久しぶりに読んで感動し“この人しかいない”と直感で決めました。また、フランス映画のヌーベルバーグ作品をよく観ていてフランス語の美しさやフランス文化全般にも魅力を感じていたので、フランス地域文化研究についても研究することにしました。リベラルアーツ研究は『大人になるためのリベラルアーツ』(石井洋二郎・藤垣裕子 著)を読んだことがきっかけで比較的最近始めました。これまでの一方通行的な教育に疑問を抱いており、石井先生、藤垣先生の取り組みはとても興味深く、リベラルアーツについて研究をしたいと思いました」

創造的リベラルアーツセンター CLACEでの取り組み

「CLACE(Creative Liberal Arts Center)は、2021年4月に発足しました。センターとしての本格的な授業は2024年度からですが、すでにパイロット授業は始まっています。リベラルアーツの授業は、教員2人1組でディスカッション中心の授業を展開します。答えが出しづらい問題や意見が分かれるテーマを毎時間討論し、表現の仕方、考えを深めるやり方を体得していく授業です。教員の専門分野により「環境と生活」「芸術と社会」などがあり、文理関係なく全学的に開講しています。リベラルアーツ教育を志す教員はお互いに授業を見学しながら、さまざまな方法論を模索しています。リベラルアーツへの誤解はまだまだ多く、ディスカッション教育について“言葉で相手を打ち負かす技術”を身に付けるものだと思う人もいるようですが、互いの意見を尊重するマナーを身に付け、他者の立場に立って考える想像力を得ることを目標としています。2021年の5月末には、学外より各方面でご活躍の著名な講師をお迎えして、『リベラルアーツと外国語』というテーマでシンポジウムを開き、学内・学外から多くの参加者がありました。今後も、魅力あふれる講師をお呼びするセンター主催のシンポジウムを開いていく予定です。疑問や興味を持たれた方はぜひ一度授業に来てみてください」

リベラルアーツ

創造的リベラルアーツセンター(CLACE)のパイロット授業の様子。この日は「芸術作品に優劣はあるか」をテーマにディスカッションを行った。

先生の学生時代

「さまざまな本を読み、フランス語や英語、その他アジアの言葉や古典語など語学の勉強をしていました。今思うと、もっとそれらをしておけばよかったと思います。大学・大学院では外国語の文章を一語一句大切に論理的に読む訓練をし、研究室では友人と研究について語り合いました。そのおかげで読む力、考える力が養われました。また、国際ロータリー財団奨学生としてトゥール大学大学院に留学したことは、人生においてとても大きな経験でした。日本の社会や文化についてフランス語で外国の人々に説明することの難しさと面白さを知り、世界の中の自分や日本という国を客観的に見ることができるようになって、世界の多様性に目が開かれたと思います」

鈴木先生留学

トゥール大学大学院に留学

留学2

国際学会でお世話になった恩師が来日し、鎌倉にご案内(左が鈴木先生)

先生の趣味

「バイオリンを弾くことが趣味です。子どもの頃から楽器に触れており、中学から社会人まで弦楽サークルやオーケストラに所属してきました。成長するにつれ、これだけ大勢の人が集って練習し、心を一つにして曲を作り上げていくことの贅沢(ぜいたく)さ、素晴らしさに気付くようになりました。他方、数人で弾く室内楽もまた、気心の知れた仲間同士の楽しさがあり、実はどちらも大好きです。演奏する楽曲で特に好きなのは、ブラームス、フランク、バッハ、モーツァルトです。音楽を通じて得られた友人は人生の宝です」

オーケストラ

社会人になりたての頃入っていたオーケストラでの本番(最後列右端が鈴木先生)

メッセージ

鈴木先生メッセージ

「授業で100人くらいの学生に『自分は恵まれている方だと思いますか?』と聞いたら、ほとんどの人が『はい』と答えました。これはとても素敵なことだと思います。与えられた環境を生かし、自分の良いところや得意分野をもっと伸ばして、自分が今後社会で何ができるのかを考えていきましょう。他方、悩んだり疑問を持ったりすることも、大きな気付きや成長のきっかけになります。自分の身の回りのことだけではなく、社会のことにも疑問を抱いてください。学生時代の間は、幅広くいろいろなことにチャレンジしてください。何をしたらいいか分からない人は、信頼できる人が薦める本を読み、一つでも多く外国語を学び、古今東西の芸術に触れておくといった、知性と感性の基礎力を鍛えておくと良いと思います」

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