2023年12月1日

  • 教員

人間力創成教育院 特別課題教育プログラム長 工藤健先生

工藤先生メイン

私たちが今ここにいることの不思議さを、地球を歩いて触れて考えてほしい

プロフィール

工藤 健(クドウ タケシ)先生。長野県出身。金沢大学大学院自然科学研究科博士課程修了。博士(理学)。

東京大学地震研究所、京都大学・理学研究科、名古屋大学地震火山観測研究センターなどで博士研究員、理化学研究所地震国際フロンティア研究プログラム・地殻電磁現象解析チームリーダーなどを経て、2005年に中部大学着任。現在は人間力創成教育院教授(特別課題教育プログラム長)。文部科学省の地震調査研究推進本部専門委員として、日本列島の地下に潜む活断層の特定に協力している。

趣味は、面識のない人とオンライン上で音楽を共同制作し、AIで生成した動画をつけて、SoundCloudやYouTubeで発表すること。

先生の研究内容

「引力を測定して日本列島の地底の様子を図面に起こし、そこから読み取れる大地の動きや仕組みを研究しています。地下構造を表したこのレントゲン写真のような画像は、光が届かない地底の世界に上から灯りがともされたかのように表現されており、そこに切れ目(潜在断層)があると黒い筋が映し出されます。日本列島が誕生して以来1500万年間の地殻変動の歴史を解明することで、現在の地殻では何が起こっており将来どうなっていくのかを予測することができます。

私の講義では地球科学の知識を詰め込むだけではなく、例えば『心って何だろう?』をテーマに、40億年前に生命が生まれ、その後さまざまな進化と絶滅を繰り返してきた奇跡の星『地球』に今生きていることの素晴らしさを考えます。将来が不安で悩んでいる学生には『今幸せでも先のことまで考えて悩む』という心を持つ進化を遂げたのは人間だけだという話をします。地球の重大事と連動して先祖が進化してきたからこそ、今私たちは存在している。長い地球の歴史上で今ここにいることは、とてもラッキーなことだと思います」

工藤先生 研究
地下構造写真は政府地震調査研究推進本部(文部科学省)に提供している

研究を始めたきっかけ

工藤先生お話中

「出身が長野県の田舎で星がきれいに見えるため、高校は天文部に所属し、部長を務めていました。顧問を担当していた理科の先生に化石を見せてもらい、その形態の面白さから地球科学にのめり込み、金沢大学の理学部地球学科に進学しました。その当時、『プレートテクトニクス』という、地球の表面のプレートが独立して運動することでさまざまな地質現象が起こると考える新たな理論が生まれ、日本列島がひとつの巨大な生き物であるかのようなこの考え方に興味を持ち、次第に現在の研究に移行していきました」

「野外教室」で福井県立恐竜博物館へ

「毎年6月に学生の参加者を募り、バスで中部大学から福井県立恐竜博物館へ行く『野外教室』を開催しています。今年は恐竜博物館がリニューアル工事中だったこともあり、10月に開催しました。当日は恐竜博物館の研究・展示課長である寺田和雄先生に講義をしていただきました。寺田先生は金沢大学の同級生で、その頃からの友人です。縁あって今でも友人関係が続いているのはうれしいことです。『野外教室』では毎年、化石発掘体験も行っていましたが、今年は都合により開催できませんでした。その分、時間をかけて学生が寺田先生に質問をすることができ、充実した講義になりました。館内の見学では、建築に興味がある学生は博物館の構造に注目したり、学芸員を目指す学生は博物館で働いている人の仕事に注目するなど、それぞれが気になる分野を熱心に見ていました」

工藤先生「野外教室」
2023年10月 野外教室(福井県立恐竜博物館にて)

先生の学生時代

工藤先生 学生時代
大学祭の立て看板職人として(左から2人目)

「大学時代は美術部に所属し、大学祭では部室のアトリエを改装して喫茶店を開き、店の立て看板を作る職人として活躍していました。大学からどのように予算を引き出すか、街の展覧会などのイベントをどう盛り上げるかは、この美術部の活動の中で学びました。他にも、ローリングストーンズのコピーバンドを組んで演奏したり、ソロでギターを弾きながら歌ったりしていました。東京のライブハウスのオーディションに合格して、月に一度レギュラー出演していた時期もあります。

また、好きなものを買うために、ひたすら納豆を主食とし、お金を節約していました。休日は古レコード店でラザール・ベルマンというピアニストのレコードを集め、古本屋ではフョードル・ドストエフスキー全集を少しずつ買い足していました。オーディオマニアで有名だった大学の哲学の先生が度々お宅に呼んでくださり、ご自慢のスピーカーで音楽を聞かせてもらったり、学問の手ほどきを受けたりしていました」

これからの新しい授業の形

「授業の感想文やレポートを学生同士で共有するとき、名前は出さないでほしいとよく言われます。そのため、学科と学年だけは公表して講義室内のスクリーンに出すようにしています。私の講義にはさまざまな学科の学生が集まるため、学科によって多様な考え方があることに気がついてほしいからです。将来の夢もバラバラの学生が一つの講義室に集まって講義を受ける、これは総合大学の中部大学だからこそできることだと思います。

また、100人を越える講義では、手を挙げて発表ができない学生が多いです。そのような経緯もあり、今年度からSDGs学際専攻の全学共通SDGs科目の特別課題教育科目『持続学のすすめ』で、学生の数を30人に限定したゼミを始めました。このゼミでは5人ずつのグループに分かれて、テーマに関して自分の考えを付箋に書き、ホワイトボードに貼り、議論をします。講義を聞くだけではなく学生主体で、発言回数も多くなる授業です。ただし、大勢の中に埋もれていたい学生が一定数いることも事実で、コロナ禍が明けても、いまだに遠隔授業を探している学生も多くいます。対面で授業をしている側からすると少し残念な気がしますが、大学教育はこれからどうしていくべきかを考えなくてはならないと思います」

メッセージ

工藤先生プロフィール

「ワンキャンパスの総合大学である中部大学に集う皆さんは、とても良い選択をしたと思います。研究室での専門も、将来の夢も全く異なる同世代の仲間たちと日常的に触れ合うことができます。普段は気がつかないことですが、今交わしている、ちょっとした『他愛もない話』が一生の宝物になっていきますよ」

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