2024年9月27日

  • 教員

生命健康科学部 理学療法学科 高松泰行 先生

高松泰行准教授

新しい「脳のリハビリテーション」の開発を目指して

プロフィール

高松泰行(タカマツ ヤスユキ)先生。愛知県出身。名古屋大学医学部保健学科理学療法学専攻卒業。名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻博士後期課程修了。博士(リハビリテーション療法学)。国立病院機構東名古屋病院(理学療法士)、立命館大学(ポスドク研究員)、北海道大学(助教)を経て、2023年に中部大学に着任。現在は生命健康科学部 理学療法学科 准教授。

趣味は自宅でテレビや動画(映画・アニメ・スポーツなど)を見てくつろぐこと。ここ最近の週末は、ほぼ子どものサッカーの試合の応援に行っている。好きな食べ物は寿司と梨。北海道に住んでいたときに、回転寿司の美味しさに感動。札幌にお気に入りのお店がある。

先生の研究内容

高松先生研究内容

「私たちが身体を動かしたり、言葉を話したり、何かを考えたりできるのは、すべて脳からの指令によるものです。脳は、環境や外からの刺激に応じて、その働きを変える『神経可塑性』というすごい能力を持っています。例えば、脳卒中で脳の一部がダメージを受けるとその部分の機能は失われてしまいます。しかし、周りのダメージを受けていない部分がその役割を肩代わりして新しい神経ネットワークを作ることで、少しずつ機能が回復することがあります。麻痺(まひ)した手足を動かすリハビリテーションは、この神経可塑性をうまく利用し、低下してしまった状態からの回復につなげるために有効でありとても大切です。

理学療法士として現場で多くの患者さんの症状を見てきた経験もあり、“リハビリテーションは脳にどんな影響を与えるのか”“どのように脳を変化させるのか”“もっと効果的なリハビリテーションの方法はないのか”を探るべく、私はこの分野の基礎研究に取り組んでいます」

研究を始めたきっかけ

高松先生お話中

「幼少期から運動することが好きで、小中高は野球漬けの日々でした。大学進学を考え始めたときは、飛び抜けて得意な科目がなかったので進路選択に迷っていました。そんな中、部活の顧問の先生から食事法や筋トレの指導をしていただいたことで実際にその効果を実感できたことが面白く、大学で運動機能について学びたいと考えるようになりました。

大学を調べる中で『理学療法士』という職業を知り、理学療法学を学べる名古屋大学へ進学しました。当時、名古屋大学には基礎研究を行っている教員が多く、私も将来は研究職に就きたいと考えるようになりました。理学療法(運動)と脳に関する基礎研究を行っている研究室に所属し、通いつめた日々は大変でしたが、“なぜ”を解明するためにたくさんの文献を読み、どのような実験を組み立てればよいのかを仲間とディスカッションすることに楽しさを感じていました」

磁石が脳機能を変化させるメカニズムを解明

高松先生リリース
経頭蓋静磁場刺激(tSMS)

「脳卒中のリハビリテーションは麻痺した手足を動かす運動が中心ですが、最近では電気や磁気を使って脳の活動を調整し、リハビリテーションの効果を高める『非侵襲的脳刺激』という方法が注目されています。その中でも、頭に磁石を置いて脳の働きを変える『経頭蓋的静磁場刺激(transcranial Static Magnetic Stimulation: tSMS)』という新しいリハビリテーションの方法が期待されています。

しかし、この磁石による刺激がどのように脳の細胞に影響を与えるのかについては明らかにされていませんでした。そこで、マウスの脳の一部を磁石で刺激し細胞レベルで詳しく観察しました。その結果、磁石で刺激すると脳の細胞が一時的に膨らみ、興奮しにくくなることが分かりました。これは、Cl−チャネルという脳の細胞にある通路の働きが磁石によって変わったことが原因であると分かりました。この研究により磁石が脳の細胞にどのように作用するのかが解明されたため、磁石を使った新しいリハビリテーションの開発がさらに進むことが期待されています」

先生の学生時代

初めての国際学会発表(大学院生時代 アメリカ・シカゴ)
初めての国際学会発表(大学院生時代 アメリカ・シカゴ)
ウィンタースポーツ(カナダ・ウィスラー)
卒業旅行でカナダ・ウィスラーへ、スノーボードを満喫

「学生時代は講義や卒業研究、野球部での活動(週末のみ)、スポーツ用品店や居酒屋でのアルバイトが忙しく、あっという間に過ぎていきました。そのような中で、同じ目標に向かって同期の仲間と過ごした時間はかけがえのない思い出です。夜遅くまで大学に残って課題に取り組んだり、旅行に行ったり、新入生歓迎会や追い出しコンパの出し物を考えたり…。理学療法学専攻の学年全体の人数が少なかったこともあり、イベントごとでは団結力がありました。同期の仲間は、理学療法士として働いている者や企業に務めている者、自分と同じように教員になった者など、それぞれの道で頑張っていて、今でも刺激を与えてくれる良き友です」

愛知、京都、北海道…住みやすい街は?

北海道大学構内
冬の北海道大学構内

「名古屋市の病院で理学療法士として働き、その後は京都でポスドク研究員、北海道で教員…そして2023年に愛知県に戻ってきました。京都も札幌も自然が近く、どちらもとても住みやすかったです。京都に比べて札幌の方が道路が広く、運転のしやすさはありました。しかし雪が降ると運転も大変です。10月末や4月末でもスタッドレスタイヤを装着して雪に備える必要がありました。メリットとしてはウィンタースポーツが好きなのでスキー場まで20分で行けることが嬉しかったです。子どもたちには自分の仕事の関係で何度か転校を経験させてしまい申し訳ないと思いましたが、家族みんなが一緒についてきてくれたことには感謝しています」

メッセージ

高松先生プロフィール

「大学生活は自由な時間がたっぷりあります。その時間を有意義に使うか、無駄に過ごすかは自分の行動次第です。大学生活を目いっぱい楽しむ一方で、なりたい自分を思い描き、目標を掲げたら、何をすべきか考えて行動を起こしてください。時には、やりたくないことも出てくるかと思いますが、何事も全力で取り組むことは、今後の社会人生活においても大切なことだと思います」

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