2024年11月29日

  • 卒業生

2020(令和2)年度臨床工学科卒業 小林 嶺王さん

小林嶺王さん

 高度先進医療の開発と実践の場として、日本の医療を牽引する東京大学医学部附属病院。1,200床を超える病床数と最先端の医療設備を誇るこの巨大病院で、小林さんは臨床工学技士として勤務している。臨床工学技士とは、医療機器の専門家で、人工心肺などの各種生命維持装置の操作などを担当し、医療機器がいつでも安心して使用できるように保守・点検も行う。「当院の臨床工学部は、保守点検を行うME(メディカルエンジニアリング)センター部門、血液浄化部門、心臓カテーテル部門、手術部部門、集中治療部門に分かれており、全ての部署を定期的にローテーションして業務に当たります。その中でも私は主に心臓カテーテル業務に重点を置き、特に頻脈や徐脈の治療を行う不整脈分野に注力しています」

チームの一員として

小林嶺王さん

 医師や看護師・各種の医療技術者とチーム医療を行うため、多職種間の円滑なコミュニケーションを心掛けている。「特に普段と違った状況で、勘違いやコミュニケーションエラーがインシデント(アクシデント(医療事故)になる一歩手前の状況)、アクシデントにつながる恐れがあり、防ぐためにはコミュニケーションが重要です」
 また、臨床工学技士の仕事は体力勝負で、「夜間・休日の勤務に加え、緊急呼び出しで1時間以内に駆けつけなければいけないオンコールのシフトもあるなど勤務が不規則な上、長時間の手術もあり、体を鍛えるのが趣味になりました(笑)」。一方で、「ICU(集中治療室)にいた患者さんは私のことを覚えていないのですが、元気になって一般病棟から退院していく姿を見掛けると大きなやりがいを感じます」と笑顔で語る。

臨床工学科で学んだ4年間

 臨床工学技士を目指すようになったのは中学時代。当時はエンジニアに興味があったことから、看護師であった母親に『臨床工学技士』という職業を教えてもらい、強く惹かれた。資格取得が可能な大学の中から、工学分野に強い中部大学を選び、志望した。
 「卒業研究の指導をしてくださった平手裕市先生(臨床工学科教授)が心電図モニターのセミナーを開講し多くの種類がある不整脈を分かりやすく教えてくださいました。とても興味深く、就職後の現在、自分の専門分野として深く学びたいと思うようになりました」
 そして、進路選択に大きな影響を与えたのが、大学3年次の東京の病院見学ツアーだった。「平手先生が病院見学と、臨床工学技士の方に直接お話を聞く場をセッティングしてくださいました。その経験から東京の病院を身近に感じ、進路を決める後押しになりました」

実践からの学び

 後輩となる学生の皆さんに対しては「私は大学4年次の病院実習はレポートを書くことで精いっぱいで予習を十分にできず、満足できる実習ができなかったことに悔いが残っています。実習に行く際は、十分な予習と各病院の特色や臨床工学技士がどう働いているかに注目し、積極的に学んでほしいと思います。また学生時代にしかできない経験を大切にしてください」と自身の経験からメッセージを送る。

  • ウプト231号(2024年11月30日発行)より転載

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