2025年1月8日

  • 教員

現代教育学部 現代教育学科 樋口万太郎 先生

樋口先生メイン

小学校教員を経て、教職を志望する学生や現役の教員をサポートする側に

プロフィール

樋口万太郎(ヒグチ マンタロウ)先生。大阪府出身。京都教育大学大学院連合教職実践研究科専門職学位課程修了。大阪の公立小学校、大阪教育大学附属池田小学校、京都教育大学附属桃山小学校、大阪の私立小学校の教員を経て、2024年に中部大学に着任。現在は現代教育学部 現代教育学科 准教授として教職を志望する学生の指導にあたるほか、現役教員や保護者向けの教育セミナーなどに講師として登壇。また、関西大学大学院総合情報学研究科博士課程に在籍中。大阪の自宅から中部大学までは毎日新幹線で通勤している。

趣味は音楽鑑賞、野球ゲームをプレイすること、漫画を読むこと。土・日曜日もセミナーや学習会の講演があり、全国さまざまな場所へ出かけるため、移動中の新幹線の車内では映画やドラマ、推しのアイドルの動画を見てリフレッシュしている。最近の困りごとは、毎朝目覚まし代わりに起こしてくれる愛犬のチワワ2匹が少しずつ太ってきていること。

先生の研究内容

樋口先生研究内容01
学習者自ら深い学びを実現することを支える板書
樋口先生研究内容02
算数・数学科における学習者自ら深い学びを実現するためのサイクル

「私の取り組んでいる研究は、算数・数学における『自立した学習者の育成』という少し抽象的なテーマです。私が定義している『自立した学習者』とは、学習者(児童・生徒)自らによって深い学びを実現するということです。算数・数学は暗記科目ではありません。少しの知識を習得すれば、あとは活用して新たな知識を作り出すことができます。

例えば、“30+40と0.3+0.4が計算方法が同じ”ということは分かりますか?『え?』と思ったのであれば、それは深い理解ができていないということです。30+40とは、“10が3個分”と“10が4個分”を合わせたもので、“10が7個分”ということです。0.3+0.4は“0.1が3個分”と“0.1が4個分”を合わせたもので、“0.1が7個分”ということです。10もしくは0.1という単位を変えることで同じように計算することができるため、いちいち、二桁同士の計算の仕方、小数同士の計算の仕方を覚える必要がないということです。こういったことを学習者自ら考えることができれば“自立している”ということになります」

研究を始めたきっかけ

樋口先生お話中

「小学生の頃から算数が得意な子どもでした。中学時代も数学の成績は問題ありませんでした。しかし高校生になった途端、数学ができなくなりました。当時は気がつきませんでしたが、自分が小学校教員になり、子どもたちに算数を教えている中でその理由に気がついたのです。それは公式を暗記して当てはめるといった、“事実”を習得して活用できれば良いと考えていたからです。そうではなく、“概念”を習得し活用できるようになる必要があります。

この経験から自分と同じような経験をする子どもを増やしたくないと考えるようになりました。これからの激動の時代を生き抜いていくために、子どもたちには“学んだことを自ら生かす力”を身につけてほしいと考え、このような研究を志すようになりました」

『自立した学習者の育成』の手助けとなるツールを

樋口先生書籍
先生の著書と先生が携わった本の一部

「最近の取り組みとしては、教員向けの研修パッケージや、算数授業設計支援AIコンテンツの開発をしています。例えば『小学3年生 分数』とキーワードを入力すると、適切な学習法がAIによって回答されるというものです。また、教員向けの教育書の執筆もしています。他にも教員や保護者向けの教育セミナーなどで年間100本以上講演しています。これらの活動を通して、教職を志望する学生や現役の教員の『自立した学習者の育成』のサポートができれば幸いです」

先生の学生時代

「今指導している学生を前に声を大にして言えませんが、大学時代はとにかく遊び倒していました(笑)。課外活動はソフトボールサークルに所属し、厳しい練習に耐えていました。サークルの先輩とは数年後に教員として配属された学校で再会するなど、学生生活で築き上げた人脈は今でもつながっています。

大学2年生のときの教育実習で、大阪教育大学附属池田小学校に行きました。附属池田小学校は2001年に8人の児童が亡くなるという悲しい事件が起きました。翌年の実習では、不審者への対応訓練の迫力に思わず腰を抜かしてしまいました。後に教員としてこの学校に勤めることになり、受け持った子どもたちを連れて『祈りと誓いの塔』の前で祈りと誓いをすることになりましたが、『みんなのことを守ります』と軽々しく口に出すことはできず、言葉に詰まってしまいました。このとき『教師として子どもときちんと向き合わなければいけない』という使命感が生まれ、自分の中で大きく価値観が変わったと思います」

メッセージ

樋口先生プロフィール

「周囲から教員の労働環境は過酷と聞き、不安を抱いている学生もいますが、一部の意見だけを鵜呑みにせずに自分で確かめてほしいと思います。また、『学校がつまらなかった』という不満をもった学生が『どういう学校だったら楽しいのか』を自分なりに考え、努力して教員になることもあります。晴れて卒業する学生たちには体を大切に、この先幸せな教員生活を送ってほしいと願うばかりです。

そして、『make happy』ができる人になってほしいと期待しています。人から与えられ続けるだけでなく、自分で作り出せるような人になってほしいです。人に与えられたものだと自分の考えと相違があったとき、文句や愚痴が出てくることでしょう。そうではなく、自分の考えと相違があったときには、自分で作り出してほしいのです。そのような人材が今の時代には必要だと思います。これからの時代を担う皆さんだからこそ、皆さんの持っているタネが大きく育つことを願っています」

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