11月16日発売の図書新聞にも掲載されました。


『香港残響—危機の時代のポピュラー文化』
激動する香港、「転がる石」に何が起きたのか
誰かによって、声高に表明されることのない、人々の日常に刻印された記憶
2019年以降の急激な政治変動の中で、偶然に、あるいは不可避的に生起し、人々の感情を強く喚起したさまざまなポピュラー文化。その生成の背景を、内的な文脈に基づいて読み解くことで、危機の時代の香港社会が抱えていた課題、決して声高に語られることのない「空白部分」が鮮やかに浮かび上がる。
ヒットソングや、ショッピング・モールや、ミルクティーや、あるいはヘルメットやゴーグル、特定の日付や地名が、二〇一九年以降にこれほど大きな意味を持つことを、事前に予測できた人はおそらくいない。(本書「おわりに」より)
著者:小栗宏太(著)
ジャンル:国際社会/文化
出版年月日:2024年8月31日発売
定価:本体2,900円+税
出版社:東京外国語大学出版会
目次
はじめに―香港危機の残響
- 香港イメージの変遷
- 政治問題への関心の偏り
- 「オタクたちのデモ」論の限界
- 本書の構成
第1章 煽動する文字―言葉からみる香港危機
- 煽動文字
- 危機前夜の香港
- 燃え広がる火種
- 乗り越えられた分断
- 内向きの宣伝
- ささやかな革命
- 鍋底の約束
- 無文字の標語
第2章 不協和音―ポピュラー音楽からみる香港危機
- 香港の歌手は奪えても
- 反送中運動のソングブック
- 香港における歌と政治
- 社会派ソングの台頭
- ラブソングの死
- 北進する歌手たち
- 政治化時代のポピュラー文化
第3章 もう一つの前線―郊外からみる香港危機
- 「まさか大埔が……」
- 「新界」という場所
- 沙田ニュータウンの見た夢
- 新城市広場の変貌
- コミュニティ化する抗議運動
第4章 嵐の中のティーカップ―ミルクティーからみる香港危機
- 危機と日常のあいだ
- 平凡な暮らしの政治化
- 新型コロナ禍とミルクティー同盟
- ミルクティー同盟とは何だったか
- 象徴としてのミルクティー
第5章 乱流下の平安―娯楽復興からみる香港危機
- 「死」と消失の一年
- 文化という前線
- やわらかい抵抗
- また会う日まで
おわりに―香港に何が起きたのか
- 転がる香港に生えた苔
- 政治危機のあとに残るもの
- 民主主義の退潮後の世界のために
あとがき
著者紹介
小栗宏太(おぐり こうた)
1991年生まれ。中部大学国際関係学部国際関係学科卒業。米オハイオ大学大学院政治学専攻修了(修士)。東京外国語大学で博士号取得(2023年)。現在東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所ジュニア・フェロー。共編著に『香港と「中国化」――受容・摩擦・抵抗の構造』(明石書店、2022年、倉田徹との共編)、共著に『香港危機の深層――「逃亡犯条例」改正問題と「一国二制度」のゆくえ』(東京外国語大学出版会、2019年)、『地球の音楽』(東京外国語大学出版会、2022年)など。香港ポピュラー文化研究のかたわら、映画『縁路はるばる』の字幕翻訳(2023年日本公開、山田愛玲との共訳)など、香港に関連した作品の翻訳や紹介も行っている。
小栗宏太氏から一言
政治、経済、文化、歴史などなど、いろいろな要素を考慮しながら、複雑な香港情勢を読み解くことを目指した本です。さまざまな専門の先生方のもと、国際社会のあり方について多様な角度から学ぶことができた、国際関係学部での経験があったからこそ書けた本だと思っています。執筆中にも何度も何度も、中部の「コクサイ」時代に受けた授業や先生のことを思い出していました。後輩や他の卒業生にもぜひ読んでほしい1冊です。
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- 【2021年5月26日】新入生歓迎企画に参加してみて(特派員:M.S)
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