藤岡コレクションとは

藤岡コレクションとは日本産蝶類土着種全種にわたり各地の標本が満遍なく集積された比類ないコレクションである。標本箱数約1800、総計約29万頭の展翅標本からなり、個人の手による日本産の蝶のコレクションとしては日本一の規模を誇るものである。

その藤岡コレクションの中核をなす標本は、主として戦後復興期の1950年代から1980年代初めの高度成長期にわたって30年間、全国各地に産する各種を自らの手で採集し標本作製したものである。もちろん、標本集積に関しては藤岡氏本人の全国行脚による採集だけによるものではなく、アマチュア蝶愛好家として各地に居を構え、「地域の蝶のファウナ(様相)」の解明に力を尽くし、同好の士の中心となって活躍された方々との情報交換により、新たに知られた産地を調査・採集できたことも標本集積の一助となっている。更には標本集積に協力してくれた多くの協力者の存在もあった。

高度成長期も終盤に差し掛かる1975年、北は北海道から南は九州までの4島の日本の蝶のファウナの当時の現況を、全国規模で記録するに足る基礎データとしての標本が藤岡氏の手元に充分集積されたので、それらをまとめて(株)講談社と当時の原色図版印刷技術の最高峰の(株)三村印刷所がタッグを組んで「日本産蝶類大図鑑」の出版がなされた。これは当時知られていた日本産蝶土着種237種を原色プレート137枚に原寸大で表示し、総掲載標本数7104個体という大部な書で、本書により日本の蝶のファウナの具体的な標本例示による記録がまずは完成したことになったと言えよう。

このように産地を明確にした具体的な標本例示図鑑というスタイルはこの大図鑑以前の、いわゆる図譜・図説・図鑑とは一線を画すものであった。それが可能となったのも何より藤岡コレクションの収蔵標本の膨大さによるところが大きい。 藤岡コレクションの古い標本では作成後から50年以上経過しているものも多数見受けられる。更には高度成長期から1980年代半ばのバブル最盛期に入ると、開発による環境破壊が進んだためその産地はすでに消滅し、近隣を含め現在絶滅個体群となってしまった貴重な標本も多数存在する。

好適な環境を選びそこでの生態系を復元するという試みは今後官民一体となって努めなければならない自然環境保護の大きな目標ではあるが、その目標達成に際してはその地の絶滅した本来のチョウの個体群をもって復元を考慮したいものである。そのような試みにこのコレクションの絶滅個体群の標本が有意義に利用されることを願ってやまない。

藤岡 知夫

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