難しいと思われがちな簿記や会計に親しみを
プロフィール
曽場七恵(ソバ ナナエ)先生。富山県出身。南山大学大学院総合政策研究科総合政策専攻 博士後期課程単位取得満期退学。名古屋学院大学商学部講師を経て、2023年に中部大学着任。現在は経営情報学部 経営総合学科 准教授。
趣味は体を動かすこと、バレーボールや野球などのスポーツ観戦。フラダンスやタヒチアンダンスを10年近く続けており、愛知県内のハワイアンイベントに度々出演している。
先生の研究内容
「私の研究内容は大きく分けて2つあります。1つ目は、『勘定絵科目かるた』を利用した簿記・会計教育の研究です。簿記や決算書に出てくる勘定科目をイラスト化することでイメージしやすく表したものが、勘定“絵”科目です。この勘定絵科目と勘定科目の意味を五七五七七の歌にして、かるたを作りました。勘定絵科目やかるたは、大学の授業だけでなく、中学校や高校の模擬授業、社会人向けセミナーで活用しています。難しいと思われがちな簿記や会計を“面白い”“楽しい”と感じてもらえるような教材開発と、その教材を使った効果を分析して検証しています。かるたやゲームを使う教育研究は全国的にも例の少ない研究です。近年、お金について学ぶ教育が注目されていることもあり、社会に出たときに会計の知識を自信を持って発揮できる人を増やしたいと思っています。
2つ目は、国や地方自治体の経営(財政運営)を効果的に行うための制度を構築する研究です。日本には多くの都道府県、市町村がありますが、各地域が財政破綻することなく、住民が永続的に満足して暮らすために必要な政策をお金の観点から考えます。私自身が大学院時代にフランスの会計学について学んでいたため、現在も日本とフランスの地域の特色や制度を比較しながら研究を行っています」
「勘定絵科目かるた」をさらに発展させて
「2023年度は地域連携の一環として『春日井まつり』に出展し、市民向けに簿記教育の楽しさが伝わるようなゲームを行いました。このゲームはゼミ生と一緒に考えたもので、今後もバージョンアップしてさまざまなイベントで紹介していきたいです。最近では、授業以外の時間にも簿記や会計の学びを自学自習できるような教材開発を専門家を交えて進めています。具体的には、かるたのオンラインゲームやアプリ開発、勘定絵科目を使った簿記や会計の辞典やテキストなどの書籍出版を考えています」
研究を始めたきっかけ
「高校時代、進路に悩んでいた時に、先生から『将来何にでもなれる学部があるよ』というアドバイスを受け、南山大学の総合政策学部に進学しました。この大学はカトリックの学園ということもあり、ヨーロッパ出身の先生も多く、今まで知らなかった西洋の歴史や文化に興味が湧きました。また、同学部には文系・理系のさまざまな分野の研究者が揃っており、どの授業もとても興味深かったです。その中でも特に関心を持ったのが自治体の会計学でした。学部時代は会計ゼミに所属し、大学院からは海外の会計学についても学び始め、フランスへの留学を経験しました。留学中はフランスの地方都市をはじめ、イギリス、ベルギー、オランダといった近隣の国を巡り、世界中から観光客を集めることができる理由を歴史や文化の側面、財政や会計的な視点で探りました。日本もフランス同様に魅力ある地方都市が多くあるため、それらの地域が長く存続できるような制度を考えたいと思い、研究者を志しました。
教員として初めて就職した大学で簿記や会計の授業を受け持ち、簿記の授業が難しくて会計科目全般に苦手意識を持っている学生にたくさん出会いました。また、社会人になっても簿記や会計は苦手だという“簿記アレルギー”の大人も多くいることを知りました。経営を学ぶ学生の一部は、簿記でつまずき、その先の会計学の意義や楽しさを知らないまま卒業してしまいます。会計の知識は社会に出てから役に立つものですから『それではもったいない、簿記や会計学は面白いんだよ』と伝えたい気持ちがあふれて、同じ志をもつ仲間と協力して会計教育の研究を始めました」
資格学習室で簿記検定・各種資格試験相談サポート
「中部大学の経営情報学部は、経営・情報・会計・経済・法律など、さまざまな専門分野を幅広く学ぶことができるという特徴があり、この学びの体系は私自身が大学時代に所属していた学部の環境と共通点がみられます。そういったこともあり、懐かしさを感じつつ、自分と同じように進路に悩む学生と話し合いながら日々教育活動や研究活動に励んでいます。
その一つとして、経営情報学部のある21号館4階の『資格学習室』で、火・水・木曜日の昼休みに簿記検定・各種資格試験相談サポートをしています。資格取得を目指す経営情報学部生であれば利用可能です。学習室の中には、簿記検定をはじめITパスポートや公務員試験、SPIなど、経営情報学部生の多くが在学中に取得する資格試験の教材が用意されています。図書館まで行かなくても、講義の合間に自主的に勉強できる場所として、ぜひ利用してください」
先生の学生時代
「学生時代は留学やインターンシップ、アルバイトなどを通じて国籍や世代を超えたさまざまな人と出会い、意見交換をすることに時間を費やしていました。私の人生に衝撃的な印象を与えてくれた出来事は、大学2年生で初めて経験した海外語学研修です。夏休みを利用した短期間の滞在でしたが、アメリカ・カリフォルニア州にある大学で英語を学びました。そこで出会った同年代の多くの学生たちは、自分自身の夢だけでなく自国の政治や将来性を真剣に考えており、大変驚いたことが印象に残っています。国際交流は自分を成長させる経験になると気がつき、その後は学部のイタリア研修プログラムを経てフランスへ長期留学をしました」
メッセージ
「『世界は広いようで狭い(Le monde est petit)』と『学問に王道なし(il n’y a pas de chemin royal
pour la science)』という2つのことわざは、これまでの人生で何度も実感したお気に入りの言葉です。国内外、どの環境へ飛び込んでみても、何かしら共通点を持つ人に出会うことがあります。また、『普通ならありえない』と考えられている分野にこそ、面白さが隠れていると思っています。
私は自分が生まれ育った地域や日本が大好きですが、大好きだと言える理由を、その地域の外に出たからこそ見つけられたと思っています。大学生という期間は、自分自身の好きを見つけられる貴重な時間です。少しでも興味のあることには、一歩踏み出して挑戦してみてください。応援しています」