2024年4月9日

  • 学術・研究

中部大学 サボテン・多肉植物研究センターを新設─脱炭素技術や持続可能な食料・飼料生産システムを開発、「持続可能な社会」実現へ─(堀部貴紀准教授)

2024年4月1日、「サボテン・多肉植物研究センター(Cactus and Succulent Research Center)」を新設しました。

中部大学ではこれまでサボテンの基礎・応用研究を実施し、2021年に自治体(愛知県春日井市)や複数の民間企業と共同でサボテンの利活用推進を目的としたプラットフォーム「サボテン等多肉植物の潜在能力発掘と活用推進プラットフォーム※1」を設立、2023年には生物系特定産業技術研究支援センターが公募した「令和5年度オープンイノベーション研究・実用化推進事業※2」に採択されるなど、サボテンの活用推進に向けた基盤を構築してきました。

新センターでは、(1)サボテン・多肉植物を活用した脱炭素技術や持続可能な食料・飼料生産システムの開発研究、 (2)国内外の研究機関、民間企業等との共同研究、(3)研究成果の発信等の事業を行い、サボテンや多肉植物の潜在能力を最大限に活用することで「持続可能な社会」の実現を目指します。

センター長のコメント

センター長:堀部貴紀准教授(環境生物科学科)

皆様は、サボテンが地球の未来を救う可能性を秘めていることをご存じでしょうか?

気候変動や人口増加への対応が喫緊の課題である現在において、驚異的な生命力をもつサボテンは新しい作物として世界で注目を集めており、食品・家畜飼料・加工品原料として30カ国以上で栽培されています。また2017年には、国連食糧農業機関が「サボテンは食料安全保障問題の解決に貢献しうる」との見解を表明しています。

サボテンには用途の広さ、環境ストレス耐性、栽培の容易さ、健康機能性などたくさんの強みがありますが、まだまだ未知の可能性を秘めています。本センターでは、サボテンの潜在能力を科学的に解明し、研究成果を発信し、企業等と共に開発した製品を社会に実装していくことで、日本の農業・食品産業の活性化や環境問題の解決に貢献して参ります。

堀部貴紀先生 図1

※1サボテン等多肉植物の潜在能力発掘と活用推進プラットフォーム:中部大学が中心となり、サボテンや多肉植物の基礎・応用研究と活用推進に向けて、様々な分野間での情報交換を進め、産学共同研究を促進する基盤を構築するために、NPO法人東海地域生物系先端技術研究会の協力を得て2021年に設立した組織。14の企業や団体などで構成する。

堀部貴紀先生 図2
上図:プラットフォームの取組を紹介するポスター(農林水産省作成:無断転載・加工禁止)

※2 オープンイノベーション研究・実用化推進事業:国の重要政策の推進や現場課題の解決に資するイノベーションを創出し、社会実装を加速するための、提案公募型の研究開発事業。

参考.サボテンの利活用を推進する意義(国内外における課題とサボテンの貢献)

サボテンの活用は気候変動、農業従事者の減少と高齢化、農作放棄地の拡大等、農林水産業・食品産業における課題の解決に貢献する。以下に具体的事例を列記する。

(1) 地球温暖化・世界人口の増加:世界の気温が21 世紀末には最大2.6〜4.8℃上昇し、作物の結実阻害と品質低下、病虫害の大量発生を招く(政府間パネルIPCC 予測)。2050年には世界人口は約100億人に達し、食料増産(現在の1.6倍)の必要性が生じる。

→サボテンは40℃を越える高温下・乾燥~多雨環境で生育可能であり、地球温暖化に対応できる。また砂漠のような乾燥地帯だけでなく、雨量の多い東南アジアなどでも旺盛に成長できる種類があり、産業利用が進められている。世界30カ国で食材として利用されており、2017年には国連食糧農業機関(FAO)が「サボテンが世界の食料危機を救う作物になりうる」との見解を表明(食料として国際的な位置づけ)。

(2)我が国における農地面積の減少、農業者の高齢化:農地面積は最大であった 1961 年に比べて約 172 万 ha 減少し、一方で耕作放棄地面積は増加している。

→サボテンは種子ではなく成熟茎節から栄養繁殖するため、毎年播種する必要がない(生産管理の軽減)。また農機が不要で初期投資が少なく、かつ省力的な栽培が可能であり、高齢化が進む地域での栽培も可能である(荒廃農地・耕作放棄地の再活用)。

(3)我が国の食料自給率の長期的低下傾向:農林水産省統計2021年度ではカロリーベースで38%、生産額ベースで69%、 飼料自給率25%。

→サボテンは過酷な条件で栽培できる有用な野菜・飼料の候補となる(農産物自給率向上)。

(4)化学農薬および化学肥料の使用量低減。

→作物栽培には病虫害防除のための農薬が不可欠だが、我が国では病害虫によるサボテンの被害はほとんど報告されておらず、化学農薬の散布をあまり必要としない。また低栄養土や岩場でも栽培が可能であり、化学肥料を施す必要がない(化学農薬と化学肥料の使用量削減)。

(5)農林水産業の CO2ゼロエミッション化の実現

→荒廃農地・耕作放棄地の再活用による CO2吸収の増加が可能。ウチワサボテンは5 m以上に生育しバイオマスが大きい。またCO2吸収量はスギやヒノキと比較しても高く、森林火災のリスクが非常に低い。さらに乾燥地だけでなくカンボジア等の多雨地域でも旺盛に生育できる。

【サボテンの食料としての位置づけとSDGs目標達成への貢献(14の課題に寄与)】

堀部貴紀先生 図3

プレスリリース文書

本学の問い合わせ先

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堀部貴紀(応用生物学部 環境生物科学科 准教授)
TEL:0568-51-9123
E-mail:t-horibe@isc.chubu.ac.jp

(報道について)
中部大学 学園広報部 広報課
TEL:0568-51-7638(直通)
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