2024年4月25日

  • 学術・研究

運動の学習を実現する人工小脳デバイスを開発─ロボットの制御や人の運動制御能力増強・改善への活用に期待─(平田 豊教授)

発表のポイント

  • 運動学習を模倣できる人工小脳を開発。
  • 小型・低消費電力の集積回路FPGAに実装し機械制御を確認。
  • ロボット制御や人間機能拡張技術への応用に期待。

発表概要

人が練習して自転車に乗れるようになったり野球がうまくなったりすることを運動学習(注1)という。運動学習には脳の中の小脳が大きな役割を果たしていることがこれまでの研究で分かっている。この働きをまねた人工小脳を開発できれば、自ら新たな運動技能を獲得するロボットに応用できるほか、人の運動能力向上を手助けしたり、病気で運動学習をうまくできない人を助けたりできるようになると期待されている。

中部大学工学研究科情報工学専攻博士課程の進士裕介氏と理工学部AIロボティクス学科の平田豊教授らは、大阪工業大学の奥野弘嗣准教授らと共同で、小脳の神経ネットワークの構造と働きを模擬した数理モデルを構築し、半導体集積回路の一種で小型・低消費電力のFPGA(注2)に実装し、リアルタイムで動作する人工小脳の開発に成功した。さらにこの人工小脳を用いて機械(直流モーター)の制御に成功した(図)。

図:FPGAに実装した人工小脳による機械制御系(左)と適応制御結果(右)

研究成果は神経科学の専門誌Frontiers in Neuroscience(電子版)に掲載された。

論文の情報

雑誌名:Frontiers in Neuroscience
論文タイトル:Artificial cerebellum on FPGA: Realistic real-time cerebellar spiking neural network model capable of real-world adaptive motor control
著者:Yusuke Shinji、Hirotsugu Okuno、 Yutaka Hirata
DOI: 10.3389/fnins.2024.1220908

用語説明

注1 運動学習

新たな運動技能を獲得する過程のこと。運動学習では知覚と運動との相互作用が運動制御の視点から重視されている。リハビリテーション医療においては、運動機能回復と訓練との関連を運動学習によって説明する試みもある。運動学習には練習または経験により引き起こされる小脳内の神経細胞間の情報伝達の変化が重要な役割を果たしていると考えられている。その工学的実現により、ロボットの適応制御などへ応用することが期待されている。

注2 FPGA

Field-Programmable Gate Arrayの略。電子素子の設計者が作業現場(Field)で論理回路の書き換えが可能な大規模集積回路(LSI)。最初は家電やネットワーク機器、高速取引システムなどに使われていたが、最近はデータセンターなどの高速化・省電力化でも注目されている。

プレスリリース文書

本学の問い合わせ先

研究に関すること
平田 豊(中部大学 理工学部 AIロボティクス学科 教授)
E-mail:yutaka[at]fsc.chubu.ac.jp ※アドレスの[at]は@に変更してください。

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